らいぶらりぃ
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イタリア国立放送交響楽団

●日 時2003年7月1日(火)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮イタリア国立放送交響楽団
ギター:村治佳織
●曲 目ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」
(アンコール)
ディアンス/タンゴ・アン・スカイ
グラナドス/歌劇「ゴイェスカス」より インテルメッツォ
ヒメネス/ルイス・アロンソの結婚式

 村治さんがイタリア国立放送響と「アランフェス」を演奏されると聴いて、これは久しぶりに彼女の演奏を聴きに行かねば、と行ってきました。

 さて、村治さんが出演されると言うても、演奏会の主役は一応はイタリア国立放送響なわけです。久しぶりの外来オケでもありますし、最初からじっくりと聴かせていただきました。まずは「運命の力」序曲。さすがに、オペラの国のイタリアのオケなだけはありますね、実に切れ味のいい演奏を聴かせてくれます。音に何の淀みもなく、からっとした明朗な響きがするのです。そして、歌い上手なこと。からりとしながらも、実にメリハリのついた演奏は、非常に歌心というものに満ちていて、単に盛り上げよう、盛り下げようというだけではない、自分達の歌を歌おうというふうで、聴いていて、ぞくっとしてしまいます。歌心に満ちた華やかな雰囲気からは、まるでほんまにこれからオペラが始まるかのような、何かわくわくとさせるような期待感というものが湧き起こってきます。シャープな金管の音が加わって、すぱっと終わる、その切れ味の良さは、これからのメインディッシュへの期待感を高めてくれます。

 そして、お待ちかねの「アランフェス」。村治さんのギターを久しぶりに生で聴いたのですが、やはりいつ聴いても彼女のギターの音色は美しいですね。1、3楽章は割と軽快な感じですが、その軽快さもとっても上品で、まるでバロック音楽であるかのような雰囲気さえ漂っています。村治さんのギターもそういう雰囲気の中、オケをしっかりとリードしていくといったふうで、淡々としながらも、品良く、表情豊かに歌っていくのです。オケは小編成になっているのですが、その音色のクリアさが更に際立っているように聴こえます。その両者が見事に一体となっているから、それはもう、雅やかな雰囲気に満ち満ちているのですね。思わずうっとりとしてしまいます。そして、聴かせどころの2楽章、もう最高!です。コール・アングレのソロもとっても表情があって素敵だったのですが、それと掛け合う村治さんのギターの音色の何と美しいこと! 上品さはそのままに、決して感情の渦に呑まれてしまうというのではなく、とても理知的に、かつ情緒を込めて歌っているのです。非常に素直に音楽に向かい合っていると言うてもいいのかもしれません。素直だからこそ、感性だけでなく知性も加えて歌うことができる、それが彼女の音色の魅力なのかもしれません。1つ1つの音を丁寧に扱うのは、昔からそうですが、それが彼女の歌いを品のいいものにしているのでしょうね。カデンツァの部分なんかも実に素敵で、思わずほろりと涙してしまうのでした。それは、DVD「コントラステス」において、アランフェス宮殿の中で演奏してはるのを聴いた時の感動にも似て、シンフォニーホールがまるで、どこかの聖堂か何かのようにも見えてしまうほどなのでした。3楽章が終わる時には、あぁ、終わってしまうぅ…とちょっと寂しさのようなものも感じてしまったりして、ほんと、ずっとこの素敵な時間が続いてほしいと願いたい気持ちにもなったのでした…

 後半は「シェエラザード」。歌い方の上手なオーケストラですから、この美しいテーマが次々に出てくる曲もお手のものなのでしょう。ヴァイオリンやチェロに出てくるソロなんかも素敵で、すぅっとした感じで歌っているのが印象的です。しかし、最も印象的なのは、終楽章の舞踏の部分。このタランテラ風の部分を、ごっつい情熱的に演奏しているのです。それは、これがイタリア本場のタランテラや、と言わんばかりのもので、全楽団員が一丸となって、まるで何かに向かって突き進んでいくかのような迫力をもって迫ってくるのです。その異様なまでの盛り上がりは凄まじいものがあります。だからこそ、他の部分の叙情的な美しさが際立つのですね。最後のヴァイオリンのソロはやや疲れたような感じもしたのですが、やはり美しい響きで静かに終わると、あの盛り上がりの後だけに、余計に印象的です。ひょっとしたら、このリズミックな部分の演奏を聴いてほしいと思って、この曲を選んできたのかもしれませんね。いや、ほんまに凄まじい演奏でした。

 アンコールはあまり聴き慣れないような曲ばかりでしたが、どれも素敵な演奏で、最後まで私たちを存分に楽しませてくれたのでした。

 ところで、今日の会場では、村治佳織さんの写真集「dulcinea」が、一般発売に先がけて発売されていました。もちろん、私もしっかりと買ってしまいました。ポスターもGETして、ちょっとハッピー、なのでした。家に帰って、じっくりと眺めることにしましょう…