らいぶらりぃ
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ロシア国立交響楽団


●日 時1997年4月20日(日)14時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団
ヴァイオリン:樫本大進
●曲 目チャイコフスキー/スラブ行進曲Op.31
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲二長調Op.35
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調Op.64


 スヴェトラーノフの指揮もさることながら、今回の目玉は何と言っても、先の ロン=ティボー・コンクールで優勝した樫本大進君。そのシンフォニーホール初 登場の曲は、チャイコのヴァイオリン協奏曲。今年18歳になるいう若さで、こ れだけの演奏ができるとは、いやぁ、参りました。スヴェトラーノフ指揮のロシ ア国立響を相手に、ちょっと緊張したような部分もありましたが、それでも、堂 々とした演奏で、聴衆の耳を虜にしました。何がすごいって、まず、音の線がと ても繊細ですね。男性的な(?)荒々しさ(??)みたいなものがなく、洗練さ れた音、細い響きを持った音を創り出してますね。それでいて、なかなか芯のあ る音楽作りをしている、というところも見逃せません。1楽章、カデンツァの部 分もとっても聴かせてくれました。こういうふうにしたいんだぞ、というような ものがこちらまでしっかり伝わってきました。そして、2楽章の優雅さももちろ ん、しっかり聴かせてくれましたし、何と言っても3楽章のすごさ! 若さも あってか、迫力のある演奏でした。オケと合わなくなるんちゃうん、と言いたく なるくらい、前へ前へと演奏していきはるから、もう、聴く側もどんどんと引き 込まれていってしまいますね。終わると同時に、会場いっぱい、総立ちとまでは いかないにしても、割れんばかりの拍手の嵐。あちこちで「ブラボー!」が聞こ えました。また、新しいヴァイオリニストが登場した、という感じで、今後も注 目していきたいと思います。これからも研鑽を積んでいかれたら、ドえらい演奏 家になるかもしれませんね。(^^)

 さて、1曲目のスラブ行進曲で、これがロシアン・サウンドかぁ!という素晴 しい演奏を聴かせてくれた上で、後半は5番交響曲。昨年のレニングラード・フ ィルの時もこの曲の演奏と聴いて、感動したのを思い出しますが、明らかに音は 違いますね。あの時も感想の中で、「絢爛たる輝きを放つ黄金」という言葉を使 わせてもらったのですが、今回はそれに「上品さとダイナミックさとを持った」 という言葉を付け加えさせていただきます。一糸乱れないで、タテの線がとって もクリアにまとまっていて、それで、ppからffまで、ダイナミクスの幅が広 く、また、微妙なニュアンス、表情をとっても豊かにつけていく、という演奏 に、酔いました。弦はとっても上品な音、けれど、プルト数が多いから、それで いて重厚な音、を出しています。1stが8プルト、2ndが7.5プルト、V aが6.5、Vcが5、Cbが5だったと思いますが、ステージ下手寄りにCb が10本、ずらりと並んだ様はなかなか、圧巻です。そのため、低音がほんまに ごぉ〜って鳴るんですね。合唱の感覚で言うと、これがほんまのロシアものよ ねぇ、という感じです。(^^;) そして、Vnなどの高音もすごくクリアな音で、 何の無理もなく、ごく自然な感じで出しているのです。1楽章の第2テーマや特 に2楽章の第2テーマの盛り上がるところなんか、ごっつい感動しました。そし て、管楽器が一人一人、素晴しい技術を持ってはりますね。どの楽器も、何の淀 みもない、非常にクリアな音を聴かせてくれました。涙もんは、第2楽章の第1 テーマのHr。ここまでたっぷりと表情をつけて歌ってくれるのって、そう聴け ないように思います。それに、この楽章、ほんまに微妙な感じでテンポを揺らし て演奏してはるから、その度におぉ!っと感動してました。(^^;) また、第4楽 章も、ともすれば、がさがさとした感じの演奏になるかと思うのですが、今日の は、ほんまにタテのラインがぴっちりとそろっていて、「一糸乱れず」という言 葉はまさにこういうことを言うのやなぁ、ということを実感しました。そして、 金管の何とも言えないクリアな音! 最後のクライマックスなんか、もう、金管 が上品かつ大胆な響きで鳴り響いている中に、他の楽器が一糸乱れずに大きな山 場を作り上げるから、思わず、その作り出す音空間の中で、涙しちゃいました。 スヴェトラーノフさんの作り出す音楽は素晴しい! 余韻の中でずっと大きな拍 手を送り続けたのは、言うまでもありません。(^^;)

 昨年から何かと聴く機会の多かった「チャイ5」ですが、今日のは、レニング ラード・フィルの時の演奏と並んで、いや、それ以上に素晴しい演奏だったと思 います。