らいぶらりぃ
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中村紘子ピアノリサイタル

●日 時1997年5月11日(日)14時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ピアノ:中村紘子
●曲 目J.S.バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻”24の前奏曲とフーガ”より
No.4嬰ハ短調BMV.849
No.3嬰ハ長調BMV.848
No.8変ホ短調BMV.853
No.21変ロ長調BMV.866
ハイドン/ピアノ・ソナタ第34番ホ短調Hob XVI-34
メンデルスゾーン/ロンド・カプリチョーソホ長調Op.14
ラフマニノフ/前奏曲変ホ長調Op.23-6
前奏曲ト短調Op.23-5
前奏曲嬰ト短調Op.32-12
フォーレ/ヴァルス・カプリス第1番イ長調Op.30
グラナドス/組曲「ゴイェスカス」第1部より ”嘆き、またはマハと夜鳴うぐいす”
リスト/スペイン狂詩曲
(アンコール)
グリーグ/妖精の踊り
ショパン/即興曲第1番
ショパン/幻想即興曲


 ちょっと前に、文庫版の「アルゼンチンまでもぐりたい」を読んで、改めて中 村紘子さんの文筆の達者さに感心していたところですが、そういう知的な面を感 じさせる演奏を、今日も聴かせてくれました。しかも、バッハからラフマニノフ まで、幅広いレパートリー、当然のことながら、曲によって弾き方も変えてい らっしゃって、さすが、と思いました。席が、1階のJ列の5番という、演奏を 「見る」のに最高の場所で、しっかり、運指などもチェックさせていただきまし た。(^^;)

 バッハは、4曲とも、ちゃんと弾こうと思うと相当難しい曲だと思うのです が、フーガの部分なども、各声部の動きを大事にされていたと思います。出すべ き音、出さんでもいい音、その区別をはっきりつけていて、そのために、出すべ き音が、4・5番の指で弾くような場合には、1・2番などに変えて打鍵する、 というような場面を、2、3、見せていただきました。(バッハだけじゃないの ですが。)No.8のプレリュードの終わるところで、2番の指(だったと思 う)で、最後の音を大事そうに弾いてはるところなど、何か、可愛らしさみたい なものを感じてしまいました(って、失礼で、すみません)。

 その次がハイドンで、そして、メンデルスゾーン。ここでがらりとピアノの音 が変わったような気がします。で、個人的には、やっぱりロマン派の曲を弾いて はる方がいいなぁ、と思いながら聴いてました。だって、すごく歌わせ上手なん だもん。

 後半は、ラフマニノフのプレリュードの美しさもあるのですが、やはり、リス トの「スペイン狂詩曲」のド迫力でしょう。体全体を使って、力いっぱい、弾い てはりました。そのスケールの大きな演奏に、酔いしれました。

 「見て」いて思うのは、無駄な動きがない、ということですね。若い人の演奏 などを見ていると、よく、腕、ひじをぐるん、と動かしてはるような人を見かけ るのですが、これって、無駄な動きですよね。中村さんは、そういうものが全く なくて、演奏する神経を、指先に集中してはる、というのが、見ての感想です。 無駄がないから、fの部分は力強く、太い音で、pの部分は繊細に、細かい音 で、はっきりと区別して弾き分けていられましたね。当り前のことなのかもしれ ませんが、大事なことだと思うのです。さすがだと思いました。(^^)

 なお、終演後、カレーパーティーを開きはったかどうかは不明です…(^^;;)