らいぶらりぃ
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ウェルガス・アンサンブル演奏会

●日 時1997年5月30日(金)19時開演
●会 場イシハラホール
●出 演パウル・ファン・ネーヴェル指揮ウェルガス・アンサンブル
●曲 目<アルス・アンティクワの遺産>
作曲者不祥/ベリアルは狡猾なるものと
作曲者不祥/サンクトゥス(聖なるかな、神の秘蹟は)
作曲者不祥/海の星
作曲者不祥/新しき太陽が−人々の源が−エサイの枝よ
<フランスのアルス・スブティリオル>
ロベール・トレボール/うとうとしていると
ヨハンネス・チコニア/太陽の光
マッテウス・デ・サンクト・ヨハンネ/知識は決して無駄ではない
<マッテオ・ダ・ペルージャの芸術>
マッテオ・ダ・ペルージャ/めでたし、世の聖なる救い
マッテオ・ダ・ペルージャ/死が
マッテオ・ダ・ペルージャ/グローリア(聖霊、孤児らの実り多き慰め主)
<遠くの鏡>
ソラージュ/くすぶった男が
作曲者不祥/クム・マルテリーラ・マンタカ
作曲者不祥/クレド


 ウェルガス・アンサンブルは、中世の声楽作品を取り上げて活動をしてはる、 ベルギーの声楽アンサンブルです。私もルネサンス期の曲はよく聴くのですが、 中世の曲は、まさにグレゴリオ聖歌くらいしか知らなかったので、勉強の意味も 含めて、聴きに行ってきました。

 今回の演奏会で取り上げてはるのは、13世紀末から14世紀にかけてとい う、中世の最後の方の時代の曲なのだそうです。「中世は、かつては暗黒の時代 などと言われていたが、それは大きな誤解である」と、プログラムに書いてあっ たのですが、まさにその通り!とうなずけるような曲ばかりでした。確かに、ル ネサンスのポリフォニー様式こそ、まだありませんが、けど、既に多声部の形式 をとっており、カノンのような構成の曲もあったりして、楽しむことができまし た。

 第一部は「アルス・アンティクワ」ということで、13世紀以前の曲。割とシ ンプルやなぁと感じたのですが、一人一人の声がはっきりと分かって、別の意味 で、いいですね。(^^;) 「サンクトゥス」は、例のミサの典礼文の詞以外の詞を 歌っている部分がほとんどでした。言葉の内容は…不明ですぅ。(歌詞カードを 見ろ、って。)「新しき太陽が…」は男声だけの合唱。テノールがとってもきれ いで、頭声を、かぁーん!と響かせていました。それに、バスのごっついこと! 低音が。ごぉーってうなって聴こえてくるんです。それだだけでもう、感動して しまいました。(←昨日の「魔笛」のザラストロの不満がまだ残っている。(^^;))

 第二部は14世紀の多声部の世俗曲。「太陽の光」が一番、よかったですぅ。 軽快な感じのテーマの下に対旋律がついて、更に通奏低音的なパートが入って、 という構成で、ダブル・コーラス(と言ってよいのだろうか…)で交互に歌い合 い、最後に全体で盛り上がって終わる、という曲です。なかなか、聴かせてくれ る曲ですねぇ。ソプラノがまた、しっかりした声で歌ってはるから、気持ちいい です。この曲のテーマは、割と親しみやすいのではないでしょうか。何回も繰り 帰すから、覚えてしまいそうになった…(^^;)

 第三部は、マッティオ・ダ・ペルージャという作曲家の曲。宗教曲好きとして は、やっぱり、「グロリア」が一番よかったかな。先唱に続いて典礼文の歌詞を 歌っていきますが、でも、割とさらりとした感じでした。気がついたら、もう、 アーメン・コーラス。これがまた、曲の3分の1はあるんちゃうかという長さ。 でも、ここが聴かせどころなんでしょうね。細かいパッセージなんかもあったり して、結構、難しそうな感じはしました。

 第四部は14世紀後半に書かれた曲。「くすぶった男が」は男声3部、「ク ム・マルテリーラ・マンタカ」は女声3部の曲。この女声3部もまた、いいです ね。2声部対1声部で掛け合いをする構成になっているのですが、そのバランス がいいですね。3人とも相当の技量を持ってはるのでしょうけど、見事な演奏 だったと思います。そして、最後の「クレド」、最高!でした。ヴィクトリアの ミサを聴くかのような盛り上がりを見せて、きらびやかに演奏を終えられたので した。

 時々、おや?と思うような部分(ピッチなど)もあったように思うのですが、 でも、中世音楽というものを私たちの前にしっかりと聴かせてくれた演奏でし た。それに、結構、ジェズアルドへつながっていくのかしらというような、ぶつ かる和音、不協和音なんかもあったりして、それも外さずにしてくれるから、 とっても満足のいく演奏会だったと思います。