らいぶらりぃ
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スーパーオペラ

アグネス・バルツァ&ホセ・カレーラス 東京・ガラ・コンサート

●日 時1997年6月1日(日)19時開演
●会 場東京国際フォーラム ホールA
●出 演メゾ・ソプラノ:アグネス・バルツァ
テノール:ホセ・カレーラス
ソプラノ:高橋薫子
メゾ・ソプラノ:森山京子/仲野玲子
バリトン:牧野正人
デビッド・ヒメネーズ指揮東京交響楽団
藤原歌劇団/多摩ファミリーシンガース
●曲 目サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」第2幕より
マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より
ビゼー/歌劇「カルメン」第4幕より


 「東京・仙台/コンサート・ツアー」第2弾は、2月にシンフォで聴いたバル ツァと、3月に大阪ドームで聴いたカレーラスに、またお目にかかるという、豪 勢なもの。会場も、国際フォーラムという、私にとっては未知の場所。期待に胸 が踊ります。(^^)

 日曜の晩の公演だというのに、会場の周りは、すっげぇ人、人… 2人の人気 というものなのでしょうけど、ちょっとびっくり。

 会場の中に入ると、うぅ、どこへ行ったらいいのか、分からない… 何番の扉 はどっち、という表示は、入ってすぐのところにあるのですが、ほな、自分の席 はどの扉なん?というのが、そこでは分からへんのですわ。階段を上がって、 ホールのフロアに行って、ひとつの扉のとこに行くと、そこに、ちっちゃな座席 表が貼ってあるという… 係の兄さんに、血相変えて詰め寄って、文句を言うて はる人がたくさん、いました。まぁ、そうしたくなる気持ちも分かりますが、そ ない喧嘩腰にならんでも、もうちいと上品にしたってもええよぉな… でも、 ホールの方もちょいと改善した方がええんとちゃいますやろか。

 それはともかく、ホールA、すごぉーく大っきぃーい! というのが第一印 象。1フロアにこんなに席があるホールなんて、見たことがない… 思わず、絶 句してしまいました。(^^;)

 舞台の上には、何の飾りもなく、ただ、段組が置いてあるだけ。どないになる んやろーと思ってる間に、開演です。

 最初は「サムソンとデリラ」の第2幕。舞台が暗くなったと思うと、次には、 照明をつかって、舞台上にデリラの家とその前庭が。段組とうまくかみ合って、 舞台を作り上げています。なるほど、こんな手もあるんやなぁ、と感心しまし た。と、バルツァ扮するデリラが登場。おぉ、愛しのバルツァ… と、それだけ もじーんときてしまいます。(^^;) やがて、カレーラスのサムソンが登場、2人 のやりとりが始まります。バルツァは2月に聴いた時と同様、完全に役になり きっているようで、その説得力のある歌を、また聴かせています。カレーラスの 方も、例のハリのある声で、聴く者をしびれさせてくれてます。こんな2人の取 り合せで、サムソンとデリラの、メインの部分を聴けるなんて… それだけでも 幸せというものです。(^^) もちろん、歌唱だけでなく、演技の方も、たっぷりと 見せてくれてます。デリラが一生懸命、誘惑しようとしているところ、とっても 色っぽかったぁ。そして、それに負けての「デリラ、愛している!」、もう、し びれちゃいましたねぇ。

 25分の休憩の後は、「カヴァレリア・ルスティカーナ」。これは抜粋で、ま ずは有名な間奏曲。と、あちこちで咳やがさがさとした物音が。こらこら、世界 中でまたとない、この美しい曲が始まってるんやから、余計な音を立てるなぁ、 と演奏に集中できなかった…(;_;) でも、東響の弦、きれいに鳴っていたと思い ます。ふと、昼間に聴いた、レニングラード響にさせたら、もっとしびれるんと ちゃうかなぁ、などと余計なことを思ったりもしましたけど。バルツァは今度 は、サントゥッツァという、ダリラとも、この後のカルメンとも全く違う役どこ ろ。それでも、カレーラスのトゥリッドゥに、切々と想いを訴えるという… ど うして、こう、違う役をほとんど瞬時に変えてすることができるの?と言いたく なるような、熱演でした。

 最後のステージは、おまちかねの「カルメン」。舞台転換の後、藤原歌劇団の 皆さんが登場、段の上に整然と並びます。何か、合唱団の演奏会のような…(^^;) そして、前奏曲、そして、各幕への前奏曲が演奏されて、気分が盛り上がってく ると、さあ、第4幕の始まりです。合唱団が高らかに歌い出すと、バルツァのカ ルメンたちが登場。真っ赤なドレスに身を包んだバルツァは、これこそほんまの バルツァやぁ!という感じで、先のサントゥッツァからは完全に変わって、カル メンになりきっているようでした。しかし、合唱の方ですが、ちょっと… 何 か、いまいち、ぱしっとまとまって聴こえてこないんです… それなりに迫力は あるのでしょうが、個人的には、ちょっと不満かな。でも、やがて登場してきた カレーラスのドン・ホセとカルメンとのやりとりはさすがに、迫力がありました ね。2人とも完全に役になりきっていて、迫真の歌唱と演技でした。何度も言い 寄るドン・ホセに、それをきっぱりと拒絶するカルメン、緊迫したやりとりが続 いた後、ドン・ホセの感情が爆発して、遂にカルメンを刺してしまう… そう、 ここ、ここへの持っていき方が、後ろの方の席で見ていたからかもしれません が、ちょっと伝わってくるのが足らなかったような感じがしてしまいました。何 か、あっさりと刺してしまった、というか。こんなもんなんかなぁ… でも、最 後の「ああ、カルメン」って、体を崩して泣き叫ばれたら、もう、こちらも感極 まってしまいますね。思わず涙が出てきてしまった… 2人のこの役は、ほん と、ハマリ役ですね。終わった後もずっと拍手しっぱなしでした。

 しっかし、こんなに熱狂的な演奏会というものは初めてのことでした。終わっ て、ファンの方々が、わぁーっと前の方へ押しかけて行く光景は、今まで大阪の 辺りでは見たことがない… スタンディング・オベイションはまあ、当然としま しても、あそこまでするとは… ファンの呼び声に応えて、アンコールは「椿 姫」から「乾杯の歌」。もう、会場、総立ち状態でしたねぇ。私もすっかり、嬉 しくなってしまって、実家へ帰る電車の時間も忘れて(もちろん、まだ最終が、 という時間ではないのですが)、我を忘れて、ずぅーっと拍手を送り続けていま した。

 またとない素晴らしい一時を過ごすことができて、とっても幸せな体験でし た。