らいぶらりぃ
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第2回日本スイス友好コンサート

阪哲朗指揮/ヴェルディ・レクイエム

●日 時1997年7月25日(金)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演阪哲朗指揮京都市交響楽団
ソプラノ:ユーディット・グラフ
メゾ・ソプラノ:マリオン・アンマン
テノール:佐野成宏
バス:灘井誠
合唱:レアゲザングフェライン/テアターコア(以上スイス・ビール市)
京都混声合唱団/大阪第一合唱団/真声会合唱団
●曲 目ヴェルディ/レクイエム


 またまた阪さんの指揮で、今回はヴェル・レクです。日本とスイスとの友好コン サートとかいうことらしいのですが、これは、すなわち、阪さんがスイスのビール市 のオケも振っているところに由来しているようです。ロビーにはスイスの産業の案内 コーナーがあったりして、国際交流色を出していました。

 最初、低弦から入ってきての「Requiem」、男声が渋くて、いい感じで歌い出しま す。女声も加わってきて、厳かな雰囲気がさらに強くなってきます。合唱の響きも、 うまい具合にひとつにまとまっています。阪さんを見ると(今日の席は、RRBとい う、舞台上手側の真上、という、余りよくない場所だったのですが、指揮者の顔や手 つき等を見ることはできたのです)、これがまた、実に滑らかな動き、それに、歌詞 を歌いながら振ってはるじゃないですか。歌いやすそうな指揮やなぁ、と見とれてし まいました。

 で、テノールから始まる「Kyrie」、テノールの佐野さんがいい声をしてはるじゃ ないですか。オペラ・アリアのようなこの「Kyrie」の主題を朗々と歌い上げていく と、バリトン、ソプラノ、アルトも加わってきて、この4人のかけ合いがまた、いい ですね。それぞれの個性を出しながら、溶け合ってるという感じ。合唱とオケと、ソ リスト達と、見事にひとつにまとまっている、と感じました。

 そして、待ってました、「Dies irae」。オケの大音量の、引き締まった前奏に続 いての合唱、力強く、それでいて、響きが割れてしまったり、力みすぎたり、とかい うことがないですね。ソプラノの高音も、しっかりした支えのある響きで、好感が持 てました。会場いっぱいにその大音量を響かせていました。バス・ドラムを思いっき り叩いているお兄さんが、印象的でした。(^^;) そして、ひとしきり盛り上がると、 やがて、ソリスト達の活躍が始まります。一番、よかったぁ、と思ったのは、メゾの アンマンさん。「Recordare」でのソプラノのグラフさんと一緒になるところなんか では、しっかりと、ソプラノの支えになるように、下に響かせていて、それでいて、 自分の出番になると、しっかりと高音域までも、実にハリのある声で響かせるとい う、相当の技量を持ってはるように思いました。プロフィールを見ると、「世界の舞 台ではまだ無名ながら…」と書いてありましたが、なかなかどうして、世界の舞台に も十分、通じるようなものを感じました。あ、あと、「Ingemisco」等でのテノール の佐野さんもよかったですね。甘い響きと言うか、ふわぁっと会場いっぱいに響くそ の声は、ほんと、聴きほれてしまいますねぇ。

 「Sanctus」、合唱もそろそろ疲れてくるんやない?と思うのですが(^^;)、なかな か、しっかりとした響きを失うことなく、力強く歌ってますね。輝かしい響きの後は 「Agnus Dei」、この部分が、この曲の中では一番、気に入ってたりするのですが、 ソリストも合唱も、しっとりと歌い上げていて、何か、涙がほろっと出てきてしまい ました…(;_;)

 最語に再び出てくる「Dies irae」まで、全体がしっかりと緊張感を持続して持っ てきていたのには、ちょっと感動しました。テンションを保つのって、結構、難しい ことでしょう。それを、阪さんの指揮が見事にまとめて、歌を引き出していたと思い ます。最後は、グラフさん消え入るような声とppの合唱と、そして木管がふわっと 最終和音を鳴らして、静寂の中へと終わりました。余韻の中で、しばらくは拍手をせ ずにいました。何か、オペラを見終わった時のような感動が、そこにありました。

 2月に阪さんに出会い、以後、3〜4回、阪さんの指揮を聴いていますが、大編成 のロマン派以後の曲や、小編成の古典派の曲、オペラや今回のような宗教曲(といっ ても、ヴェル・レクはほとんど、オペラのような気もするが(^^;))まで、幅広いレ パートリーを、しかりと曲の深い部分まで把握し、それを流れるように表現しなが ら、細部に至るまで緻密に作り上げ、演奏者をたっぷりと歌わせる、素晴しい指揮者 だと、今回、改めて感じました。ファンクラブ、入ろうかな。(^^;)