らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

グスタフ・マーラー新発見Vol.1

●日 時1997年9月3日(水)19時開演
●会 場いずみホール
●出 演高関健指揮クラングフォーラム・ウィーン
アルト:秋葉京子
テノール:畑儀文
●曲 目シェーンベルク/室内交響曲第1番ホ長調Op.9
マーラー(シェーンベルク&リーン編曲)/大地の歌(室内オーケストラ版)


 マーラーを題材に、いろいろな角度からマーラーを見つめ直そうという企画シリー ズです。全5回ですが、残念ながら、私は全部には行けないんです…(;_;) で、行け るものは行っておこう、シリーズとなるのです。

 簡単な説明を最初に。シェーンベルクは、言うまでもなく、今世紀初頭を代表する 作曲家の一人ですが、19世紀末を行き抜いたマーラーの影響もしっかりと受けてい る作曲家でもあります。その彼が、自ら組織した「音楽私的演奏協会」の演奏会で取 り上げるべくして、13人の演奏家のために編曲したのが、マーラーの「大地の歌」 であった、というわけです。他にも、4番交響曲や「さすらう若人の歌」なども室内 楽用に編曲され、実際に演奏されたようですが、「大地の歌」は、遂に演奏されるこ となく、「音楽私的演奏協会」は解散するに至ったのでした。そして、シェーンベル クが途中まで手掛けた「大地の歌」の編曲を、最終的に完成せしめたのが、ライ ナー・リーンというわけであります。

 そんなわけで、最初は、シェーンベルクの「室内交響曲第1番」であります。私自 身、この曲は初めて聴いたのですが、後期ロマン派っぽい要素を多分に含みながら、 13音へと向かう、無調性っぽいものをも含む、なかなか味のある曲だと思いまし た。それを、今回が初来日!というクラングフォーラム・ウィーンの皆さんの熱演で 聴けたのは、ラッキーでした。木管(Hrも含む)がそれぞれ1人〜2人ずつ、弦は 1stからCbまで1人ずつ、という、ほんまの小編成のアンサンブルなんです。そ れが、実に精緻に練り上げられた演奏をしていて、おぉ!と感動ものでした。高関さ んの巧みな指揮さばきもありますが、全員が一丸となって、ひとつの音楽を作り上げ ようとする、その熱意のようなものは、しっかりと伝わってきました。コンミスであ る1stのお姉さんの弾きっぷりをみていると、このノリは、そう、オルフェウスの 時にも感じたものに似ているなぁなどと思いながら、演奏を聴いてました。それにし ても、「室内交響曲」って言う割には、大っきな音でばぁ〜ん!と盛り上がる曲なん ですね。(^^;)

 そして、後半が、お待たせの「大地の歌」。やっぱり、13人というのは、少ない ですなぁ。こんな人数で、あの大曲を演奏できるんやろか…というのが、正直なとこ ろでした。(もっとも、だからこそ、聴きに来よう、と思ったわけですが。)で、第 1楽章、はっきり言って、「??」という感じは否めませんでした。この楽章に関し ては、どうしても、ばりばりに金管を聞かせた、阿鼻叫喚のような描写が、私にとっ ては、望ましいのでして、そういう耳で聴くと、小ぢんまりとした、あっさりとした 演奏になってしまって、ちょっと残念でした。テンポも、私のベスト・テンポから比 べると、ちょっと速くて、あっさりした印象をさらに強くした、とも言えましょう。

 けれど、第2楽章からは、あんまり違和感なく、聴けました。やはり、交響曲、と 言いながら、この曲、実際は歌曲集だから、でしょうか。歌の部分がしっかりとして いると、後は、むしろ、歌詞の内容から見ても、しっとりとした曲ですから、演奏者 は少なくてもいいのかな、と。特に第2楽章なんか、人数が少ないから(もちろん、 演奏自体はしっかりしたものです。)、その分、アルト(って、秋葉さんって、実際 はメゾちゃうかったっけ?)の歌が、とっても引き立っていたと思います。第3楽章 も小ぢんまりとした楽章だから、なかなか素敵でしたねぇ。畑さんの歌もよく、歌っ てはったと思います。けど、先の第1楽章と第5楽章のテノールは、ちょっと…とい う感じがしてしまいました。畑さんって、どうしても、シューベルト歌い、っていう イメージが私にはあって、そういう耳で聴いてしまうと、この2つの楽章のような、 デカダントさを表現するには、ちょっとおとなしいような感じがしてしまいまして…  マーラーの歌曲って、どこか、ドイツ・リートとは一線を画すようなところってあ りますよね。だから、むしろ、3楽章のようなすっきりとした歌の方が、向いてはる のかな、と。

 逆に、秋葉さんのメゾはとってもよかったですねぇ。この前の東京でのオペラ「忠 臣蔵」でも夕霧の役をしてはったようですが、第2楽章での、秋風の中、孤独をしっ とりと歌い上げるところや、第4楽章での、ドラマ性のある歌いっぷり、とっても印 象的でした。そして、何よりも、第6楽章! わびさびの境地というか、淡々としな がら、それでいて、しっかりと歌詞ごとに表情豊かに、歌い上げていて、とても心を 打つ演奏だったと思います。オケの方も、ppの表現なんか、とっても奇麗で、独唱 をしっかりとサポートしていたと思います。「永遠に、永遠に…」と消え入るように 曲が終った後、しばらくは余韻の中で、じっと、しんみりとした気持ちに浸ってまし た…

 てなわけで、確かに、「新しいマーラー発見」となる演奏会でした。(^^;) 案外、 大っきな曲を多く書いてはるけど、実は、室内楽的な音楽が、彼の音楽の基本だった りして。(って、いい加減なことを書いたら、いけませんね…m(__)m)