らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

サイトウキネン・フェスティバル

街角スクリーン・コンサート

●日 時1997年9月7日(日)18時開演
●会 場市内各所(以下のとおり)
松本パルコ南側(本町)/松本パルコ北側(伊勢町)
六九アーケードイベント広場(六九町)/中央公民館前(ナワテ通り)
下町会館(お城下町)
●出 演小澤征爾指揮サイトウキネン・オーケストラ
福音史家(T):ジョン・マーク・エインズリー
イエス(Br):トーマス・クアストフ
アリア、第1の女、ピラトの妻(S):クリスティアーネ・ウルツェ
アリア、第2の女(A):ナタリー・シュトゥッツマン
アリア(T):スタンフォード・オルセン
アリア、ピラト(Bs):ミヒャエル・フォレ
ユダ(Br):河野克典
ペテロ、第1の司祭(Br):大森一英
大司祭、第2の司祭(Br):成田真
ヴィオラ・ダ・ガンバ:ジークフリート・パンフ
チェロ:ハルモムート・ブラウエル
オルガン:クリスティーネ・ショルンハイム
オルガン:ステファン・アルトナー
東京オペラ・シンガーズ/SKF松本児童合唱団
●曲 目バッハ/マタイ受難曲BWV244


 タイトルを見て、何や、と思われた方、ごめんなさい。要は、「マタイ受難曲」を 会場からのライブ中継で鑑賞する、という野外での、スクリーン・コンサートなので す。チケットをGETできなかった(正確には、人に譲った)者にとりましては、こ ういうのも、またありがたいものであります。(^^;)

 私が見ていたのは、松本パルコの南側に設けられた特設会場。若い兄ちゃんらが、 スケボーで遊んでいる隣で「マタイ」という、何ともいえない状態ではありました… (^^;)

 で、これも初めから知っていたのではなくて、何気なく、その辺りを歩いている と、突然、大音量で聴こえてくるバロック音楽。何やろ?と近づいてみると、これを やっていたのでした。思わず、ラッキ〜!と叫んでしまった。(心の中で。)会場に 入るとこでは、ワインを無料で配っていたのですが、「マタイ」を聴くのに、ワイン なんか飲んでる場合やないやろ〜、と考え、お薦めを断わって、席につきました。

 ま、そんなわけで、第1部の途中から聴き始めたのですが、素晴しい演奏でした ねぇ。

 特に声楽陣の充実といったら! イエスのクアストフさんのバリトンなんか、とっ ても説得力のある歌唱で、聴く者の心をぐいぐいと引き込むものでしたね。モニタに はアップでクアストフさんの表情が映し出されるのですが、この表情がまた、人間愛 に満ちたようなお顔で、何か、見とれてしまいました。重度の身体障害を負われてい るのですね。それを克服されて、これだけ響く声を出せる、というのが、また、泣か せますね。地元の新聞では、それだからこそ、人間味のあるイエスの役を務めること ができ、我々の心と打つのだ、などと書かれていたようですけど、正にそのとおり、 と思いました。イエスの言葉が、単に言葉として歌われるのでなく、より身近なとこ ろに密着した、人間臭さみたいなものをもって、私たちに訴えかけていた、ように感 じられました。

 でも、それ以上に感動的だったのは、アルトのシュトゥッツマンさん。しみじみと した、とっても深い響きの声で、アリアをたっぷりと歌ってはるんです。第二部の 「憐れんでください、神よ、私の涙のゆえに」とか、「この頬の涙」とか、ほんと、 慈悲深いマリアさまぁ、って感じで、情感をたっぷりとこめて歌ってはる、そのアッ プで映し出されるお姿もまた、神々しいような雰囲気を出していました。この時だけ は、結構、雑音のする野外の会場でも、し〜んと静まり返って、集まってきている人 たち一同、その歌に聴き入っているようでした。モニタ越しに聴いていても、これだ け感動するのですから、会場の中で聴いていたら、もう、感動のあまり、動けなくな ること必定でしょうね。(^^;)

 そうそう、野外で聴いている特典として、何といっても、演奏者のお顔を、アップ で見ることができる、ということが嬉しいですね。特に、小澤さんのお顔、時に、祈 るようにして、全く指揮をせずにいた場面もあったように思います。その集中力に は、とても引きつけられるものがありますね。合唱が入って盛り上がるところ(第一 部の最後とか、鞭打ちのところとか。)なんかでも、見ようによっては、怒りに満ち た神の姿、ともとれるような姿(?)で指揮をしてはりましたし、もう、画面から目 が離せませんでした。

 また、合唱の素晴しさもあげておきたいですね。東京オペラシンガーズの皆さん、 5月の「魔笛」の時もこの皆さんでしたけど、一人一人がしっかりした力を持っては るから、力強い、それでいて繊細な表現もしっかりできる、そういう合唱に仕上がっ ていたのではないでしょうか。何回も繰り返し出てくる、受難のコラールにしても、 それぞれ、表情を変えながら、しっかりと歌い分けていたと思います。それに、これ だけの大作を暗譜で歌う!というのが、また、すごいなぁ、と思います。かなり、力 をいれて練習しはったんやないでしょうか。

 もちろん、昨日と同様、オケの演奏も素晴しく、また、ヴィオラ・ダ・ガンバのソ ロが、とっても印象的でした。

 そして、第二部の最後が、大らかな感じで終わると、すぐに拍手の嵐。もうちょっ と余韻にひたりたかったぞぉ。>会場ホールで聴いてはるお客さん。(^^;) でも、 きっと、それだけ感動的な演奏だったのだと思います。モニタ越しに聴いていても、 しばし、時を忘れるほど、感動していましたから。これが、また、9/10には、東 京オペラシティ・コンサートホールのオープニングで、同じメンバーで演奏されるの ですよねぇ。大阪にも来てよぉ。(^^;) …と思いながら、会場を後に、ホテルへと 戻ったのでした。