らいぶらりぃ
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京都市交響楽団特別演奏会

”音楽に聴く生命誌”(音楽とサイエンストークの夕べ)

●日 時1997年10月5日(日)18時30分開演
●会 場京都コンサートホール
●出 演井上道義指揮京都市交響楽団
語り(トーク):岡田節人(JT生命誌研究館館長)/中村桂子(JT生命誌研究館副館長)
オーディオ操作:池田和生
舞台美術:馬田純子
●曲 目吉松隆/弦楽オーケストラとピアノのための「朱鷺によせる哀歌」Op.12
(朗読・語り)「鳥たちが語る生命誌」(中村桂子)
ラウタヴァーラ:「極北への頌歌」鳥たちとオーケストラのための協奏曲
(対談)「生命を音楽に託して」(井上道義VS岡田節人)
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調Op.88


 「自然のなかの生命の、長い歴史の興亡の訴えを音楽によって聴きましょう」とい う趣旨の演奏会であります。ま、難しいことはおいといて、吉松隆とラウタヴァーラ が聴ける!というだけでも、十分、魅力的な演奏会ですね。昼間に別の演奏会を聴い ていた、神戸ハーバーランドから、一気に、京都の北山まで飛んで行ったのでした。 (^^;)

 吉松の曲は、消えゆく生命であるトキへの追悼の曲。いかにも彼らしい、美しい曲 ですね。Vnが出す音は、トキの鳴き声だったのでしょうか。その声を聴いてると、 何か、切ない気持ちになってきます。この曲の演奏の形態というのも、作曲家自身か ら指示されているようで、センターにピアノ、そこから上下へそれぞれ1stと 2ndが羽根のように並び、ピアノの向こう側に尾のようにCbが並び、その間に VaとVcが固まる、という形になっていました。そ、ピアノを頭に見立てて、鳥の 形に並んでいるのです。そんなとこからも、作曲家の、トキに対する愛情というのを 感じることができるのでした。けど、後のトークの時に、井上さんが、ピアノが頭 で、お客さんは、ちょうど鳥を頭の方から見ているわけだから、ひょっとしたら「ハ ゲタカ」に見えたかもしれない(ピアノは井上さんが指揮をしながら弾いてはって た)、などと言って、オチがついてしまったのですが…(^^;)

 そして、何と言っても、ラウタヴァーラ!であります。今回の演奏は実は日本では 2回目の演奏になるとか。関西初演でもありますな。私もCDで聴いたことはあった のですが、その何とも言えない奥の深い音楽に魅せられてしまっていて、どうして も、生で聴きたい、と思っていたのでした。この曲は協奏曲ということになっていま すが、ソリストは、ラウタヴァーラ自身が採集・録音された、野性の鳥たちの鳴き声 なのです。そのテープを操作しながら、演奏を進めていくということになるのです。 だから、そのオーディオ操作をする人というのも、重大な責任を負うことになるので すが、今回の演奏での池田さんの操作は、完璧だったのではないでしょうか。第1楽 章は静かな大地とその上空で飛び交う鳥たちのさえずり、といった感じ。第2楽章は 鳥たちの声にもの想う人の心の風景といった感じ。鳥たちの声も、音楽と完全に一体 となっていて、何の不自然さも感じさせないですね。むしろ、そうやって一体になっ ていることが自然であり、人間と自然とは共存すべきものあるとでもいうような、作 曲家の主張が見えてきそうな気もします。第3楽章はまさに、そういう楽章で、自然 に対する賛歌ですな。渡り鳥たちが飛び立つのと一緒に、音楽もじわじわっとクレッ シェンドしていって、次第に視界が開けていく、世界が広がっていく、地平線の彼方 から陽の光がさぁーっと差してくる、といった光景が目の前に浮かんでくるような気 がしました。まるで、昔懐かしの「ガンダムII・哀戦士編」のラストのシーン、ホワ イト・ベースがジャブローから宇宙へと発進していく時、渡り鳥たちも一緒に飛び 立って行って、南米大陸の大自然が眼下に広がっている、という光景のような。(っ て、もっと他の例えはないのか、おい。>自分 ^^;) でも、ほんと、この辺りを聴 いている時は、背筋がぞくっときましたもん。どんどんと高みへと上っていく様は、 同じフィンランドの作曲家、トイヴォ・クーラの無伴奏合唱曲「日の出に」にも通じ るようなものがあるのかも、と、改めて素晴しい曲だと思いました。そして、そうい う感動を与えてくれたのですから、演奏の出来の方もよかったのだと思います。地元 のテレビ等で放送されることがあるのでしたら、是非、見ておくべき(聴いておくべ き)演奏だと思います。

 …ということで、私にとりましては、メインはあくまでもラウタヴァーラですの で、一応メインである、ドヴォルザークは、あまり気合い入れて聴いてませんでした …(^^;) でも、なかなか切れ味のいい、演奏だったと思います。

 でも、普段滅多に聴けないような曲を、生で聴くことができたというのは、ほん と、嬉しいことですね。もう、それだけで満腹、といった感じで、満足のいく演奏会 でした。