らいぶらりぃ
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ザ・ヒリアード・アンサンブル

●日 時1997年10月30日(木)19時開演
●会 場フェニックスホール
●出 演ザ・ヒリアード・アンサンブル
 カウンターテナー:デイビッド・ジェームス
 テノール:ロジャーズ・カーヴィ=クランプ
 テノール:ジョン・ポッター
 バリトン:ゴードン・ジョーンズ
●曲 目アントワーヌ・ビュノワ/レジーナ・チェリ(天の女王さま)
ジョウアン・メトカーフ/天の星のための調べ
フランシスコ・デ・ペニャローサ/聖なる御母よ
エリザベス・リドル/鯨のどよめき
シェリンガム/ああ、やさしいイエスさま
ギョーム・デュファイ/スペインの子孫よ/スペインの星よ
アルヴォ・ペルト/さて、パリサイ人のひとりが…
ピエール・ド・ラ・リュー/アヴェ・レジーナ(幸あれ、女王さま)
フィリップ・バジロン/サルヴェ・レジーナ(栄えあれ、女王さま)
ミゲル・ダ・フォンセカ/祝せられた胎
グレゴリオ聖歌/心よりあなたを拝みます
ジェイムズ・マクミラン/…ここに隠れた…
(アンコール)
作曲者不祥/ヴェイトゥス
コルテッツィア/チ・ネ・ラッツィ・アマロン
ブリューメル/オ・クロックス・アベ
トルミス/マーヤル・アイガー・マガダ


 先日のプロ・カンツィオーネ・アンティクワに続いての、声楽アンサンブルであり ます。ヒリアードを聴くのは何年ぶりだろ… ひょっとしたら、8年前に聴いて以 来、ということになるかもしれませんなぁ。

 今日のプログラムはというと、「聖なるみわざ 5つの世紀と8つの国の音楽」と いうタイトルがついています。ま、ルネサンス期の音楽と20世紀の音楽とを、いろ いろと集めたものですな。全部、初めて聴くようなものばかりで、何だか、わけ分か らなくなりそう…(^^;)

 まずは、ビュノワのレジーナ・チェリ。おぉ、久しぶりに聴く、ヒリアードのこの 響き! 4人とも、青・緑・黄・赤と、カラフルなカッターを着ていて、見た目は何 か気楽な感じもするのですが、しかし、演奏の方は、感動ものです。初めの1声から して、実に澄んだ、いい響きをしています。特に、カウンターのジェームズさんの声 なんか、目を閉じていたら、女声が混じってるの? と言いたくなるくらい、澄んだ もので、印象的でした。あと、バリトンのジョーンズさんの声もまた、低音までしっ かりと響いていて、すっごく安心感を与えてくれるものでしたね。これらの素敵な声 が織りなす、ルネサンス・ポリフォニーは、絶妙のアンサンブルで、それでいて、何 か温もりというものを感じさせるものでした。PCAと違って、小人数だからなのか もしれません。(と言って、PCAがそうでないと言うつもりはないのですが。)ま た、割と小さなホールで、しかも一番前の席の真ん中(つまり、出演者のすぐ向き あった辺り)で聴いていたからなのかもしれません。でも、何か、人間味のある温か さを感じました。同様のものは、シェリンガムの曲にも感じました。イエスさまの言 葉が、人間味のある、説得力をもって、私達に訴えかけてきている、そんな気がしま した。

 そして、一方では、20世紀、現代音楽です。メトカーフの曲は、「Ave Maris Stella」という音節をばらばらにして、ばらばらに歌い上げ、最後で、ひとつにまと める、という組み立ての曲です。そして、その、ばらばらにする様が、とても面白 かったな。不協和音がいっぱい鳴って、こんなん、個人的には好きです。(^^;) ま た、リドルの「鯨…」も、面白い曲ですね、何か、軽い感じの作品で。バリトンが大 活躍する曲ですが、ジョーンズさん、とっても伸びやかに歌ってはっていて、やっぱ り、いいな。(^^) 割と明るい感じもする曲風なのですが、内容は、結構、シリアス なことを歌っているのですね、実は。(^^;) でも、一番、気に入った曲です。

 後半はいきなり、ペルト。たちまち会場に漂う緊張感。ペルトの音楽だぁ、とすぐ に分かるような曲ですが、彼等はペルトを得意のレパートリーとしているのでした ね。不思議な感じのままに曲が終わってしまった、という感じが強いです。(^^;) だ からこそ、その後に演奏された、ラリューとバジロンのルネサンス期の曲が、とって も安堵感を与えてくれるように聴こえました。(^^;;)

 同じようにフィニスィの曲もやはり、不協和音ばっかり。(^^;) 何やら聖歌らしい メロディも聴こえなくもないけど(そういうふうにプログラムに書いてあった)、 やっぱり音同士がぶつかりあう緊張感の方が、私には心地よいかな。(おいおい…) そしてまたまた気分を和らげるためにか、グレゴリア聖歌。その純な響きにうっとり としていると、曲は終わり、間発入れずにいきなり、叫び声! マクミランの曲に続 けて突入していったのでした。大っきな音で、4人とも叫んでるように始まるこの曲 も、中身は宗教的な歌なのですね。でも、歌詞が分からなかったら、単なる前衛音楽 というだけの話になってしまうかもしれない…と思うのでした。

 ルネサンスと20世紀とを行ったり来たりしながら、いずれの曲も素晴らしい、響 き豊かなアンサンブルで、とても楽しむことができたと思います。アンコールには熱 心な拍手に応えて、何と、4曲! 最後までサービス精神溢れる4人なのでした。も ちろん、終演後に、サインをいただくべく、私も行列に並んだのは、言うまでもあり ません。(^^;)

【P.S.】Aプログラムによる、東京での公演(10/26:三鷹市芸術文化センター)の詳細なレポートを、平舘さんが報告されてます。ぜひ、そちらもご覧ください。