らいぶらりぃ
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スロヴァキア国立歌劇場オペラ「ラ・ボエーム」

●日 時1997年11月5日(水)18時30分開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演音楽総監督/指揮:オンドレイ・レナルト
ミミ:イヴェタ・マティアショーヴァ
ロドルフォ:カルディ・カルドウ
マルチェロ:マルティン・バビヤック
ムゼッタ:アドリアーナ・コフトコヴァ
ショナール:スヴェトプルク・マラホフスキー
コルリーネ:ペーター・ミクラシュ
ブノア:ミクラシュ・ドボシュ
アルチントロ:ユーライ・ペーター
スロヴァキア国立歌劇場管弦楽団
スロヴァキア国立歌劇場合唱団
●演 目プッチーニ/ラ・ボエーム


 何故か、プッチーニの多い今年、初の来日となるスロヴァキア国立歌劇場オペラ も、プッチーニ・シリーズです。初日は、神戸のアーバン・オペラでもやっていた、 「ラ・ボエーム」であります。

<第1幕>
 すぐに始まる音楽の出だし、休符を置いて入ってくる(んですよね?)わけです が、何か、重ったるいようなものを感じてしまったのですが、幕は上がり、ロドル フォとマルチェロが仕事をしています。やがて、ショナールとコルリーネが入ってき て、何やかやとやりとりが続きます。ブノアが入ってきて、いろいろと言いよって、 やりこめてしまうところは、もう少しウケをねらってもよかったような…(って、そ ういうオペラじゃないだろ…^^;) やがて、皆が立ち去り、待ってました、ミミが登 場してきます。灯が消えてしまって、まっ暗に、って言ってるけど、何故か舞台上で はひとつだけ、灯が残ってるじゃない、などといらん突っ込みはおいといて。(^^;)  ロドルフォが切々と想いを歌い出します。うん、なかなか、ハリのある声で、特に中 音域でも十分に響かせているのが、いいですね。最高音の辺りにくると、ちょっと辛 いようなものも感じたのですが、逆に、そういう部分があるからこそ、想いというも のがうまく表現できていたのでは、と思います。感情が満ちてきたら、誰でも、どこ か不自然さというものは出てきますもん。(^^;) 続いてミミの歌。こちらも芯のある 声で、想いを歌っています。バリバリの、という感じこそしませんけど、しっとりと した感じで、聴いていて、惚れぼれとしちゃいますね。そして、これらの歌をしっか りと支えてくれているオーケストラ! 弦の響きが何とも艶やかな音色で、場を盛り 上げてくれます。例えば、ミミが登場してくるところでの、誰かが入ってくるぞ、と いう期待感溢れるような様を、弦がさぁっとクレッシェンドしてきて、期待は一気に 膨れ上がる、ようなことをしてくれたりして、このオケだけでも何か聴いてみたい、 などと思ったりするのでした…(^^;)

<第2幕>
 場は広場に移って、人がいっぱい。そんな中、子供たちの表情がいいですね。とっ ても自然体で。「パルピニョールのおもちゃ!」はともかくとしても、前で、ミミと ロドルフォが愛を語らっている時にでも、後ろの方でじゃれあってる子供たちがいる のが、何か、日常風景を見ているようで、いいですね。そして、魅惑のムゼッタが登 場。例のワルツを歌い出しますが、こちらの歌唱は… ま、無難にこなしていたとい う印象ですね。決して悪くはないのですが、何かが欠けているような… もっと魅惑 さを十分に表現しきれたら、いいのかもしれませんね。けど、さんざんやりあった 後、無事に(?)マルチェルロと結ばれるムゼッタ、抱き合う2人をコートで隠そう と、横歩きで2人の前に出てくるコルリーネの動きが、妙におかしかった。(^^) 最 後のアルチンドロが高い勘定書にびっくり、というオチがいまいち、分かりづらかっ たのが、ちょっと残念かな。全体通じて、ちょっとお祭りらしい雰囲気というか華や かさというものに欠けていたような気もしないこともないのですが、ま、楽しめた幕 でした。

<第3幕>
 幕が上がると、また寒々とした舞台セットが。そうそう、今日のこの舞台のセット もなかなか素敵なというか、きれいなセットですね。2幕では広場でのお祭りといっ た雰囲気がうまく出ていたと思いますし、この3幕でも、いかにも寒そうといった空 気が伝わってくるようです。そしてミミがマルチェルロに悩みと訴えていきます。う ん、この切なさがまた、いいなぁ。続いて今度はロドルフォがマルチェルロに悩みを 告白していきます。この辺りの感情の帰伏の表現が、また素晴らしいですね。オーケ ストラも相変わらず、とってもナイスなフォローをしていますし。とっても細やかな 表現をしていますよね。それがレナルトさんの指揮なんでしょうね。いいな。(^^)  と言いながら、ミミとロドルフォの2人でのやりとりが続きます。別れのアリアのま た美しいこと! 泣く泣く別れる2人の気持ちを、それぞれの歌手も、オーケストラ も見事に表現していたと思います。ウケたのは、そのバックでコメディのような別れ 話をしているマルチェルロとムゼッタ。ほんまの痴話喧嘩、という感じが色濃く出て いて、よかったな。(^^)

<第4幕>
 そして舞台は最初に戻り、ロドルフォとマルチェルロの2人が、2重唱で愛を歌い 上げます。こんな気持ちも分かるような分からないような…(って、個人的な話です ね。^^;) やがて、ショナールとコルリーネが戻ってきて、始まる宴会モード。「さ あ、お嬢さん、お手を。」といった時に、マルチェルロがファルセットで応答した り、喧嘩(?)になるとこで、枕投げ(!)を結構、マジにやってたり、なかなか笑 えました。(どうしても、笑いが欲しいと思う自分…^^;) と、舞台は急転換。ここ のオケもまたドラマティックですね。陽気な場面から一気に悲劇の場へと、空気を変 えてしまいます。そして、死を間近にしたミミが現われ、後は、死へ向かう道程。ミ ミとロドルフォが2人きりで愛を確認しあう場面、このバックのオケもまた、とって も奇麗でした。Vnのソロが特に印象的です。そして、息とだえるミミ。右腕がだら んと伸びているのが、わざとらしいという意見もありますが(^^;)、でも、状況を分か りやすくするという意味では、いいんじゃないかな。しんみりと、静かに消え入るよ うに、幕は閉じたのでした。

<総括>
 全体を通じてですが、声楽陣の充実ぶりと、オーケストラの表現力の高さ、そして それらを見事に歌わせている指揮者のレナルトさんの技術の確かさに、十分、満足の いった舞台だったと思います。その割に、客席の方で空席が多かったのが、気になる ところですが… さぁ、明日は「トスカ」だぁ!(^^)