スロヴァキア国立歌劇場オペラの第2夜です。今日は佐藤しのぶさんが登場すると
あってか、会場はファンらしき人たちでいっぱいです。おばさま方が多かったかな。
昨日よりはたくさん、入っているように思いました。
<第1幕>
幕が上がると、またしても舞台のセットの素晴らしさが目につきます。教会という
雰囲気たっぷりのセットですね。アンジェロッティが登場して、また去っていくと、
堂守が、そしてカヴァラドッシの登場です。いよっ、待ってましたっ!とばかりに起
こる拍手がちらほらと。いやぁ、ドヴォルスキーさん、最初から飛ばしてはります
なぁ。そのかぁーん!と響く美声は、聴く者の脳天を突き抜くかのような勢いを持っ
て、耳に響きます。声量もたっぷりで、何も言うことはなし!ですね。やがて、お待
ちかねのしのぶさんのトスカが登場してきます。ドヴォルスキーさん登場の時よりも
たくさんの拍手が。やっぱり、皆さん、しのぶさんがお目当てなのね。(^^;) ここ
の、トスカとカヴァラドッシの2重唱の何と素晴らしいこと! 名手2人の手にかか
ると、こうも素敵な音楽ができるのね、ということを思い知らされました。愛を確認
して、去るトスカ。カヴァラドッシとアンジェロッティのやり取りが続いた後、堂守
と子供たちが登場、勝利の喜びにうかれて踊りだします。昨日もそうでしたが、子供
たちの動きが自然でいいな。普段からそうしているような感じで、喜びを表現してい
るのです。ほんと、嬉しそう。と、そこへ、ミルンズさんのスカルピアが現れます。
天下の悪役、スカルピアさまですが(?)、ミルンズさん扮するスカルピアは、ほん
ま、様になっていて、かっこいいですね。しぶ〜い俳優が、しぶ〜い悪役のギャング
のボスを演じるような、しぶさがあります。例えて言うなら、里見浩太朗さんか、は
たまた古谷一行さん(?)、みたいな。(何のこっちゃ。^^;)トスカを嫉妬の罠にか
け、そして、合唱隊が入ってきて、テ・デウムが鳴り響きます。それをバックにして
の、スカルピアのアリア、いいですねぇ。凛とした響きがあります。バックのコーラ
スもまた、響きが厚くて、なかなかいい演奏をしています。それらが絡み合ってのク
ライマックス、おぉ!という感動のうちに幕は閉じたのでした。
<第2幕>
幕が上がると、宮殿の中。ここの舞台セットもまた、素晴らしいですね。中央の奥
にどぉんと彫刻が置いてあります。また、大きな柱にも、丸くくり抜いた中に誰ぞの
胸像があって、細かいところまでよくできていますねぇ。彫刻作品を見るのも好きな
者にとっては、何か、嬉しいもんです。(^^) バックから聴こえてくる合唱が、また
素敵ですね。女声も男声もいい響きをしています。この合唱とオケとで、何か演奏す
るようなことがあったら、ぜひ、聴いてみたいもんです。(^^;) さて、スカルピアの
前にカヴァラドッシが連れて来られて、責められ、そして、拷問へと連行されて行き
ます。彼を引き立てて行く憲兵(?)が、むっちゃ、怪しかった。いかにもやーさん
という感じだし、片方なんか、アイマスクしているし。何で、アイマスクなんだ?
怪しすぎるぅ。つい、変なものを連想してしまう…(^^;) やがて、トスカが登場、悪
役お代官さまとのやりとりが始まります。ミルンズさんの悪役ぶりは、さらにその本
領を発揮し、まさに、「へっへっへっ、お代官さま。」「そちも悪よのう、越後
屋。」の世界ですな。(また、訳の分からんことを…^^;)必死の命ごいにより、釈放
されるカラヴァドッシ、そこへ、敗戦の報が。「勝利だぁ!」と叫ぶカヴァラドッ
シ、そこまで叫ばなくても、ってくらい大っきな声でした。ドヴォルスキーさんの声
が響きすぎるのかな。再び連れて行かれるカヴァラドッシ、ここまでがひととおり終
わると、舞台は静寂に包まれ、トスカのアリアが静かに始まります。「歌に生き、愛
に生き…」弦の何とも言えない甘い響きのに乗って、しのぶさんの声が響きわたりま
す。それは、聴く者の心にまで浸み入ってくるように、切々としたものです。会場中
がひたと、しのぶさんの作り出す音楽に聴き入っていました。私も思わず、涙しちゃ
いました。(;_;) 素敵でした。そして、彼女を求めてくるスカルピア、意を決して彼
に身を任せるトスカ、しかし、ふとテーブルの上のナイフが目に入り、スカルピアと
ナイフとに交互に目をやり、迷うトスカ。この辺りの演技もなかなかですね。心の中
の迷いというものが、はっきりと分かります。そして、ついにナイフはスカルピアの
心臓を突き刺し、「死ね!」、トスカの罵声が響きます。なかなか、ドスをきかせて
いて、迫力ありましたな。一瞬、「極道の妻」を連想してしまった…(^^;)
<第3幕>
霧の立ち篭める、日の出前。神童の歌がその中に響きわたります。ボーイ・ソプラ
ノの声がまた、とても素直な響きで、好感が持てます。2〜3人の罪人たちが処刑台
へと連行されていきます。この辺り、台詞なしで、オケの演奏だけで舞台は進んでい
くのですが、やたらと客席から咳やらくしゃみやらが。もうちょっと黙って見ていら
んないものだろうか… やがてカヴァラドッシが連行されてきます。そして嘆きの中
で歌うアリア、もう、最高!ですね。朗々とした響きの中に、嘆きの情感が実にこ
もっていて、ここでもまた、泣いてしまった…(;_;) そこへトスカが現れ、スカルピ
アを殺害し、国境の通行許可書をGETしたことを伝え、場は希望に満ちてきます。
そして、見せ掛けだけの処刑が行われるのですが… 謀られてカヴァラドッシがほん
まに処刑されてしまい、泣き叫ぶトスカ。この辺りの物語の急転回を、オケの音楽が
実に見事に表現しています。思わず、興奮して、手に汗を握りしめて舞台に注目して
しまいます。カヴァラドッシ処刑の時の砲声はSEで出していたようですが、ちょっ
と大砲の音のように聞こえて、何か違うような気もした… 階下から、スカルピア殺
害を知ったスポレッタ達がトスカを捕らえにやってきます。群がる憲兵達をのけて、
城壁の上へと向かうトスカ、ここでタイミングがちょっとずれたのか、トスカが目的
の場所に着くまで、ぼっと突っ立っている憲兵さんたち。まるで、仮面ライダーが変
身するのを攻撃もせずに待っているショッカーの皆さんのような。(こらこら…^^;)
「おお、スカルピア!」叫び声を残して、何と、後ろ向きに身を投げるしのぶトス
カ。見事なクライマックスをむかえて、全幕は閉じられたのでした。ただ、最後の最
後、身投げのところで、もちろん、下にマットが敷いてあるのは当然ですが、しのぶ
さんがここに落ちてきて、ぼむ!とはずんでいるのが、ホリゾントの明かりに反射し
て映ってしまってたんです。一瞬にして興ざめしてしまった… 他の部分が素晴らし
かっただけに、何か悔しいですなぁ。
<総括>
とまあ、全体を通じてですが、実に感動的な舞台でした。特に第2幕なんか、も
う、これ以上のものはないだろうというくらい、素晴らしいものだったと思います。
舞台美術も素敵だし、オーケストラもよく鳴ってるし、声楽陣も充実し、音楽面だけ
でなく、演技面でも十分に楽しむことのできた舞台でした。2日間にわたって、スロ
ヴァキア国立歌劇場オペラを見たわけですが、こんな贅沢な時間を過ごさせていただ
いて、ほんと幸せです。しばらくはこの感動が忘れられないでしょうなぁ。(^^;)
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