らいぶらりぃ
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スロヴァキア国立歌劇場オペラ「トスカ」

●日 時1997年11月6日(木)18時30分開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演音楽総監督/指揮:オンドレイ・レナルト
トスカ:佐藤しのぶ
カヴァラドッシ:ペーター・ドヴォルスキー
スカルピア:シェリル・ミルンズ
枢機卿:マルティン・マラコフスキー
スポレッタ:イヴァン・オジュヴァート
シャルローネ:ヤン・デュルチョ
アンジェロッティ:ヴラディミール・クボフチック
看守:ユーライ・ペーター
スロヴァキア国立歌劇場管弦楽団
スロヴァキア国立歌劇場合唱団
●演 目プッチーニ/トスカ


 スロヴァキア国立歌劇場オペラの第2夜です。今日は佐藤しのぶさんが登場すると あってか、会場はファンらしき人たちでいっぱいです。おばさま方が多かったかな。 昨日よりはたくさん、入っているように思いました。

<第1幕>
 幕が上がると、またしても舞台のセットの素晴らしさが目につきます。教会という 雰囲気たっぷりのセットですね。アンジェロッティが登場して、また去っていくと、 堂守が、そしてカヴァラドッシの登場です。いよっ、待ってましたっ!とばかりに起 こる拍手がちらほらと。いやぁ、ドヴォルスキーさん、最初から飛ばしてはります なぁ。そのかぁーん!と響く美声は、聴く者の脳天を突き抜くかのような勢いを持っ て、耳に響きます。声量もたっぷりで、何も言うことはなし!ですね。やがて、お待 ちかねのしのぶさんのトスカが登場してきます。ドヴォルスキーさん登場の時よりも たくさんの拍手が。やっぱり、皆さん、しのぶさんがお目当てなのね。(^^;) ここ の、トスカとカヴァラドッシの2重唱の何と素晴らしいこと! 名手2人の手にかか ると、こうも素敵な音楽ができるのね、ということを思い知らされました。愛を確認 して、去るトスカ。カヴァラドッシとアンジェロッティのやり取りが続いた後、堂守 と子供たちが登場、勝利の喜びにうかれて踊りだします。昨日もそうでしたが、子供 たちの動きが自然でいいな。普段からそうしているような感じで、喜びを表現してい るのです。ほんと、嬉しそう。と、そこへ、ミルンズさんのスカルピアが現れます。 天下の悪役、スカルピアさまですが(?)、ミルンズさん扮するスカルピアは、ほん ま、様になっていて、かっこいいですね。しぶ〜い俳優が、しぶ〜い悪役のギャング のボスを演じるような、しぶさがあります。例えて言うなら、里見浩太朗さんか、は たまた古谷一行さん(?)、みたいな。(何のこっちゃ。^^;)トスカを嫉妬の罠にか け、そして、合唱隊が入ってきて、テ・デウムが鳴り響きます。それをバックにして の、スカルピアのアリア、いいですねぇ。凛とした響きがあります。バックのコーラ スもまた、響きが厚くて、なかなかいい演奏をしています。それらが絡み合ってのク ライマックス、おぉ!という感動のうちに幕は閉じたのでした。

<第2幕>
 幕が上がると、宮殿の中。ここの舞台セットもまた、素晴らしいですね。中央の奥 にどぉんと彫刻が置いてあります。また、大きな柱にも、丸くくり抜いた中に誰ぞの 胸像があって、細かいところまでよくできていますねぇ。彫刻作品を見るのも好きな 者にとっては、何か、嬉しいもんです。(^^) バックから聴こえてくる合唱が、また 素敵ですね。女声も男声もいい響きをしています。この合唱とオケとで、何か演奏す るようなことがあったら、ぜひ、聴いてみたいもんです。(^^;) さて、スカルピアの 前にカヴァラドッシが連れて来られて、責められ、そして、拷問へと連行されて行き ます。彼を引き立てて行く憲兵(?)が、むっちゃ、怪しかった。いかにもやーさん という感じだし、片方なんか、アイマスクしているし。何で、アイマスクなんだ?  怪しすぎるぅ。つい、変なものを連想してしまう…(^^;) やがて、トスカが登場、悪 役お代官さまとのやりとりが始まります。ミルンズさんの悪役ぶりは、さらにその本 領を発揮し、まさに、「へっへっへっ、お代官さま。」「そちも悪よのう、越後 屋。」の世界ですな。(また、訳の分からんことを…^^;)必死の命ごいにより、釈放 されるカラヴァドッシ、そこへ、敗戦の報が。「勝利だぁ!」と叫ぶカヴァラドッ シ、そこまで叫ばなくても、ってくらい大っきな声でした。ドヴォルスキーさんの声 が響きすぎるのかな。再び連れて行かれるカヴァラドッシ、ここまでがひととおり終 わると、舞台は静寂に包まれ、トスカのアリアが静かに始まります。「歌に生き、愛 に生き…」弦の何とも言えない甘い響きのに乗って、しのぶさんの声が響きわたりま す。それは、聴く者の心にまで浸み入ってくるように、切々としたものです。会場中 がひたと、しのぶさんの作り出す音楽に聴き入っていました。私も思わず、涙しちゃ いました。(;_;) 素敵でした。そして、彼女を求めてくるスカルピア、意を決して彼 に身を任せるトスカ、しかし、ふとテーブルの上のナイフが目に入り、スカルピアと ナイフとに交互に目をやり、迷うトスカ。この辺りの演技もなかなかですね。心の中 の迷いというものが、はっきりと分かります。そして、ついにナイフはスカルピアの 心臓を突き刺し、「死ね!」、トスカの罵声が響きます。なかなか、ドスをきかせて いて、迫力ありましたな。一瞬、「極道の妻」を連想してしまった…(^^;)

<第3幕>
 霧の立ち篭める、日の出前。神童の歌がその中に響きわたります。ボーイ・ソプラ ノの声がまた、とても素直な響きで、好感が持てます。2〜3人の罪人たちが処刑台 へと連行されていきます。この辺り、台詞なしで、オケの演奏だけで舞台は進んでい くのですが、やたらと客席から咳やらくしゃみやらが。もうちょっと黙って見ていら んないものだろうか… やがてカヴァラドッシが連行されてきます。そして嘆きの中 で歌うアリア、もう、最高!ですね。朗々とした響きの中に、嘆きの情感が実にこ もっていて、ここでもまた、泣いてしまった…(;_;) そこへトスカが現れ、スカルピ アを殺害し、国境の通行許可書をGETしたことを伝え、場は希望に満ちてきます。 そして、見せ掛けだけの処刑が行われるのですが… 謀られてカヴァラドッシがほん まに処刑されてしまい、泣き叫ぶトスカ。この辺りの物語の急転回を、オケの音楽が 実に見事に表現しています。思わず、興奮して、手に汗を握りしめて舞台に注目して しまいます。カヴァラドッシ処刑の時の砲声はSEで出していたようですが、ちょっ と大砲の音のように聞こえて、何か違うような気もした… 階下から、スカルピア殺 害を知ったスポレッタ達がトスカを捕らえにやってきます。群がる憲兵達をのけて、 城壁の上へと向かうトスカ、ここでタイミングがちょっとずれたのか、トスカが目的 の場所に着くまで、ぼっと突っ立っている憲兵さんたち。まるで、仮面ライダーが変 身するのを攻撃もせずに待っているショッカーの皆さんのような。(こらこら…^^;)  「おお、スカルピア!」叫び声を残して、何と、後ろ向きに身を投げるしのぶトス カ。見事なクライマックスをむかえて、全幕は閉じられたのでした。ただ、最後の最 後、身投げのところで、もちろん、下にマットが敷いてあるのは当然ですが、しのぶ さんがここに落ちてきて、ぼむ!とはずんでいるのが、ホリゾントの明かりに反射し て映ってしまってたんです。一瞬にして興ざめしてしまった… 他の部分が素晴らし かっただけに、何か悔しいですなぁ。

<総括>
 とまあ、全体を通じてですが、実に感動的な舞台でした。特に第2幕なんか、も う、これ以上のものはないだろうというくらい、素晴らしいものだったと思います。 舞台美術も素敵だし、オーケストラもよく鳴ってるし、声楽陣も充実し、音楽面だけ でなく、演技面でも十分に楽しむことのできた舞台でした。2日間にわたって、スロ ヴァキア国立歌劇場オペラを見たわけですが、こんな贅沢な時間を過ごさせていただ いて、ほんと幸せです。しばらくはこの感動が忘れられないでしょうなぁ。(^^;)