らいぶらりぃ
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ソフィア・ゾリステン〜名曲の花束

●日 時1997年11月11日(火)18時30分開演
●会 場神戸朝日ホール
●出 演プラメン・デュロフ指揮ソフィア・ゾリステン
●曲 目ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「春」
パッヘルベル/カノン
シューベルト/アヴェ・マリア
ドヴォルザーク/ユーモレスク
ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第1番ト長調より第2楽章
J.S.バッハ/主よ、人の望みの喜びよ
チャイコフスキー/弦楽セレナーデより第2楽章「ワルツ」
J.S.バッハ/幻想曲BWV.542
J.S.バッハ/G線上のアリア
ボッケリーニ/メヌエット
チャイコフスキー/フィレンツェの思い出より第1楽章
マスネ/タイスの瞑想曲
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「冬」
ハイドン/セレナーデ
滝廉太郎/花
モーツァルト/セレナード第13番ト長調
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章


 ふっと思い立って、当日券を求めて聴いてきました。ま、大曲の演奏会が 続く中での、箸休めみたいなもので、「名曲の花束」というタイトルからも、いわゆ る名曲コンサートなのかなと思っていたのですが、なかなかどうして、曲目こそ、そ ういう様相を呈していますが、中身はとっても濃い演奏会でした。

 何が濃い、って、演奏技術のレベルがごっつい高いんですな。どの曲をとっても、 一糸乱れぬまとまりで、かちっとした演奏をするんです。それに、ヴォリュームも たっぷりで、14人で演奏しているとは思えないくらい、大っきな音が出てくるんで す。それでいて、pのところなんかは、これ以上のpはないってくらいに小さな音に してはりますし(特にハイドンの「セレナーデ」)、その表情も実に豊かなもので、 聴く者を飽きさせない演奏だったと思います。

 シューベルトの「アヴェ・マリア」やマスネの「タイスの瞑想曲」なんかは、メロ ディーラインが実によく歌っていました。滝廉太郎の「花」もそうですね。歌曲とし て歌うのならば、実際、こういうふうに表情をつけて歌うよなぁ、と思うそのままに Vnがたっぷりと歌っているのです。そしてその下の伴奏パートも、これによく合わ せて、曲全体の横の流れと縦のハーモニーとをぴったりとそろえて歌い上げていまし た。指揮のデュロフさんも、こういった曲の時は指揮棒を使わずに、手のみで指揮を してはりました。やはり、それだけ、曲の表情というものを大事にされているように 思いました。

 しかし、一番、感動したのは、バッハの曲です。「主よ、人の望みの喜びよ」や 「G線上のアリア」が表情たっぷりと歌っていたのは、もちろんとしても、「幻想 曲」の素晴らしさには、唖然としてしまいました。元はオルガンの曲ですよね。これ を、技術的にはノン・ヴィブラート奏法やフラジオレット奏法というものを使ってい て、何と、オルガンそのもののような音が出てくるのです! パイプオルガンの、あ の太いパイプで響かせる低音や、前に突き出ているパイプから出てくるラッパのよう な響きの音、それらが、確かに耳に聴こえたのです。あたかも、この小さなホールに オルガンが現出したかのような、荘重な雰囲気が漂い、まさに、不思議な音空間の拡 がりを体験したのでした。いやぁ、しばし、言葉を失う、というのは、こういうのを 言うのでしょうね。

 アンコールは、曲名を忘れてしまいましたが、3曲ばかりやってくださいました。 うちの1つは、「赤とんぼ」です。ちょっとシンフォニックな編曲になっていました が、Vcがメロディーの前半を、Vnが後半を、これまたしっとりと見事に歌い上げ てくれました。しみじみした雰囲気に浸った一時でした。最近、大きなステージばか り聴いているだけに、こういう室内オーケストラもたまにはいいなぁ、と思うのであ りました。(^^;)