らいぶらりぃ
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チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(大阪公演)

●日 時1997年11月16日(日)14時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演小林研一郎指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
●曲 目スメタナ/連作交響詩「わが祖国」より
”ヴィシェフラード”・”モルダウ”
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調


 シンフォニーホールのオーケストラ・シリーズの第3弾は、コバケンさん指揮の チェコ・フィルであります。(第1弾はベルリン放送響、第2弾はメータ&イスラエ ル・フィルでした…)コバケンさんってお名前を聞いただけで、そのブレスの音が聴 こえてきそうな…(^^;)

 最初は、スメタナの曲。やっぱり、こういう国民楽派と呼ばれるような作曲家の曲 は、そこの国のオーケストラの演奏で聴くのが、一番!ですね。「わが祖国」、非常 に情感のこもった、素晴らしい演奏だったと思います。特に、大きな川の流れのよう にさらさらと流れていく弦の響きが印象的です。低弦がまた、ずん!とくるような重 みを響かせていて、全体にずっしりとした落ち着きを与えています。それでいて、そ の上に流れるVn等の響きの美しさ! 「モルダウ」では、ほんまの川の流れのよう な表情を作っていました。FlやTp等の管も、なかなかしぶい響きをしていて、い いなぁ、と思いました。わぁっと盛り上がるところでは、それらの管(特に金管)が じゅわぁっと響かせてくれて、聴く者の心をぐっとつかんできますね。うん、さす が、地元のオーケストラの演奏はやっぱり違うなぁ、と思いながら、前半は終わるの でした。言うてみれば、ヘルシンキ・フィルの「フィンランディア」が素晴らしい! というのと同じような、ナショナリズムの素晴らしさ、みたいなものを感じた、とい うところでしょうか。(^^)

 そして、後半はマーラーの5番であります。先週にメータ&イスラエル・フィルで マーラーの9番を聴いたばかりで、また5番というのは、なかなか辛いかな…(^^;)  しかし、冒頭のTpのファンファーレから、何か背筋にぞくっとくるものがありまし た。葬送行進曲、この悲しみに満ちた1楽章の、何とも重々しい空気! 何故か、あ の震災のことなんかを思い出したりして、こっそりと涙しながら聴いてました。ファ ンファーレや、途中にも出てくるTpのどこか廃退的な感じのする旋律なんかが、や るせなさを思わせるような響きをしているし、弦はほんと、どっかりとした響きで重 々しさを失わないんですね。低弦の支えがごぉんと鳴っているから、なおさらです。 そして、この悲痛な感じを引き継ぐ2楽章、ここの激しさはまた、凄まじいものがあ りました。金管はかぁん!と鳴り響き、パーカッションはぱぁん!と鳴り、あたかも この世の終わりのような音空間が現れ(ちょっと大袈裟…^^;)、ますます悲痛さは深 まっていきます。この辺りまでは、何か、震災のことを思い出さずにはいられないよ うな感じでしたが、それはつまり、それだけの説得力のある演奏だったから、という ことができるでしょう。3楽章のHrのテーマも見事にきめてくれて、そこからとっ ても複雑な推移を経て、そして、4楽章! このアダージョの何という美しさ! 前 半の「ヴィシェフラード」で大活躍をしたHrpが、しっとりと伴奏を刻み、その上 に純度の高い清水が流れるかのように流れていく弦の響きの綺麗なこと! 思わず、 はぁと溜め息が出てしまうのでした…(-o-;) そして、聴く者に迫ってくるかのよう な迫力のある5楽章、パワー全開!って感じで、思いっきり鳴らしていましたねぇ。 コバケンさんの指揮ももちろん、相変わらず、迫力のあるものですが、4楽章の流れ からそのまま、切ることなく5楽章へと傾れ込んできたことも、いいですね。個人的 には、あまり間をおかない、コバケンさんのやり方は好きです。連日の演奏旅行の疲 れからか、多少、ピッチ等があれ…? と思うような部分もあったように思うのです が、それでも、そういうことを気にさせないほどの気迫ある演奏で、最後は見事なま でにクライマックスを築き上げて、ぱしこん!とキメてくれたのでした。

 しかし、許せないのは、演奏が終わるや否や、「ブラヴォー!」と叫んだ人。ま、 感動したぞぉ!ということは分かるのですが、しかし、ぱぁん!と終わった後の少し の余韻というものがまた、楽しいのですから、そこを妨害されると、頂上までほんの 少しというところで、谷間の底に突き落とされるようなもので、悲しい…

 満場割れるような拍手の中、団員さん一人一人と手を取って握手をしたい、という 気持ちを表してはるコバケンさん、オーケストラに対する感謝の気持ちみたいなもの が伝わってきて、いいですね。そして、ふと客席の方に振り向いて、「皆さん、お立 ちになって、オーケストラの皆さんに拍手をお願いします。」みたいなことを言わ はって、会場中、総立ち状態。言われなくても、多分、ほとんどの人が最後にはスタ ンディング・オベイションをしたのではないかしらとも思うのですが(^^;) それだ け、感動的な演奏だったと思います。明後日の神戸公演も楽しみですね。(^^)