らいぶらりぃ
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レオンティーナ・ヴァドゥーヴァ・ソプラノ・リサイタル

●日 時1997年11月29日(土)19時開演
●会 場いずみホール
●出 演ソプラノ:レオンティーナ・ヴァドゥーヴァ
ピアノ:ヴィンチェンツォ・スカレーラ
●曲 目ロッティ/美しの唇よ、せめてもう一度
スカルラッティ/すみれ
ベッリーニ/喜ばせて下さい
ベッリーニ/私の美しい偶像に誓って
ベッリーニ/優雅な月
ロッシーニ/ヴェネツィアの競艇
ヴェルディ/ストルネッロ「お前は私を愛さないと言う」
ピック=マンジャガッリ/花月
プッチーニ/「ラ・ボエーム」より ミミの別れ
フォーレ/私たちの愛
フォーレ/月の光
ドビュッシー/星の輝く夜
エネスコ/クレマン・マロの7つの歌
(アンヌへの贈り物/あなたは私を悩ませる/
若い女性たちへ友人が書き送ったぶしつけな手紙より/バラの贈り物/白い色の贈り物/
酒の歌「主題を変えて、私たちは恋を沢山歌った」/私が堪え忍ぶなら)
マスネ/「マノン」より ”さようなら、私たちの小さなテーブルよ”
(アンコール)
グノー/「ロミオとジュリエット」より ワルツ
プーランク/愛の道
プッチーニ/「ジャンニ・スキッキ」より 私のお父さん
デンドゥリーノ/「私に歌わせて下さい」より 君を愛す


 今回が初来日のヴァドゥーヴァさんです。「ラ・ボエーム」のミミの役が、彼女の 代表的な役柄になっているようですが、それは、確かに、今回の「ミミの別れ」を聴 いても、まさにその通り、と頷くことができます。愛しているロドルフォと別れる決 心をして、「アデュー」と歌うそのアリアは、愛情と悲しみに満ちていて、しぃ〜ん と聴き入ってしまうほどのものでした。もう、すっかり役の中に入りきって、その役 を完全に演じてはるのが、さすが、ですね。これだけ感情を込めて歌われると、こち らも何か、切なくなってきますね…(^^;)

 でも、このことは、他の曲でもそうです。全ての曲、そこにこめらている情感とい うものをたっぷりと、美しく、時に切なく、時に喜ばしく明るく、歌い上げる、その 歌唱は、まさに「現在接し得る中で最も美しい声」と言うにふさわしいものですね。 特にフランスものを中心にした後半の曲は、どれも印象的でした。特にエネスコの7 曲は、始めて聴く曲でしたが、それぞれの曲の持っている宗教的な内容を、情感豊か に歌い上げていました。「マノン」も、やはり愛への別れの曲、これまた、当たり役 ということが十分、頷けるだけの演奏でした。こう、チャーミングなお顔で、とって も表情豊かに歌ってはるから、こちらにも十分にその感情というものが伝わってくる んですね。それでいて、歌い終わると、満面の笑顔。これがまたとっても可愛らしい んですな。(*^^*) 表現すべきことを全て、表現しつくした、という満足感もあるの でしょうけど、そのお人柄も窺えて、とても気持ちがいいものです。

 アンコールは、拍手に応えて、4曲、歌ってくださいました。定番の(?)「私の お父さん」もやってくれて、嬉しかったぁ。そして、ここまで歌ってきて、拍手を受 けながら、花束を渡され、と、その時、ピアノのスカレーラさんがいきなり、「ハッ ピー・バースデー!」の曲を弾き始めたんです。そう、今日はヴァドゥーヴァさんの お誕生日なんです! ヴァドゥーヴァさんもこのことは聞いてなかったらしく、驚い たようですが、このスカレーラさんの、とっても粋な演出に、会場中が更に大きな拍 手を彼女に送ったことは言うまでもありません。そして最後に、「君を愛す」で幕は 閉じたのでした。

 ヴァドゥーヴァさんのチャーミングさ、可愛いらしさ、お人柄のよさなどを間近に 感じながら、とっても満足のいった演奏会だったと思います。来年もまた来はるよう ですから、また来年も聴きに来なきゃいけませんね。(^^;)