らいぶらりぃ
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ニコライ・トカレフ ピアノ・リサイタル

●日 時1998年3月24日(火)19時開演
●会 場いずみホール
●出 演ピアノ:ニコライ・トカレフ
●曲 目ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番へ短調Op.57「熱情」
ショパン/舟歌嬰へ長調Op.60
リスト/ハンガリー狂詩曲第9番変歩長調「ペシュトの謝肉祭」
ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
バラキレフ/イスラメイ(東洋風幻想曲)
(アンコール)
ショパン/12の練習曲集より 第6番/第12番
ストラヴィンスキー/「ペトルーシュカ」より ロシアの踊り

 ロシアの期待の新鋭、トカレフさんの登場です。今年で、まだ15歳!なんですね … 若い…(^^;)

 さて、最初は「熱情」ソナタ。いきなり、こんなん、するかぁ、と思いながらも、 その若々しく力強い演奏に、ぐいぐいと引き込まれていくのでした。テンポをちょっ と速めにしてはるようで、細かいパッセージになると、さらさらと流れていくような 演奏です。2楽章の変奏曲も、左に32分が出てくる部分なんか、ほんまにきれいに 流れていたと思います。3楽章に入ると、げ、むっちゃ速い! こんな速さで弾ける んかいな、と思っていると、あっという間に曲の中ほどまで達してしまっているとい う…(^^;) もう少し、こっちの音が出てきてもいいのになぁ、と思うようなところは いくつかあったのですが、それでも、その勢いには凄まじいものがありました。と、 一気にコーダへ。あれ、ここのリピートは無視しはったんですね、と思っている間 に、あっという間に曲は終ったのでした。いやぁ、いきなり凄い演奏でした。

 そして、ショパン。うん、こっちの曲の方がトカレフさんには向いているわぁ、と 思います。「熱情」でも、特に3楽章の細かい動きなんかも、割とレガートで弾いて はるんですね。個人的には3楽章なんかは、ごつごつとした感じの音の方が、ベー トーヴェンらしいと思っているので、ちょっと私のイメージとは違うかな…という気 がしていたのです。それが、逆に、ロマン派の曲になると、いかにもショパンなり、 リストなり、ロマ派らしい響きになるのです。リストのラプソディも、音楽をさらり と奇麗に流しながら、力強さも加わり、なかなか盛り上がった演奏でした。

 さて、後半はロシアものです。「展覧会の絵」、ピアノ版を聴くのも、久しぶりで すね。前半では多少の固さみたいなものも見られたのですが、こちらは、音楽を完全 に自分のモノとしてはるようで、素敵な演奏でした。お若いからか、音が明るくて、 無垢な、素直な響きをしています。そして、何より力があります。第3曲や第7曲な どの華やかさや、第1曲や第8曲、第9曲の不気味さなど、とにかく、パワー全開で 弾きまくり、といった感じで(^^;)、その音楽の中にぐいぐいと聴く者を引き込むもの があったように思います。第10曲も見事にぱぁん!とクライマックスを築いて、華 やかなうちに終ったのでした。

 そして、バラキレフ。この「超」難曲を、見事に弾いてくれました。何が凄いっ て、まず、音楽を完全に自分のものとしていること。だから、極めて自然に音楽が流 れるんですね。それに、技巧的に凝っているところなんかも、難なくクリアして、さ らりと弾いてのけてしまうのが、さすが!です。その凄さに、おぉぉっ!と思ってい るうちに、大きな拍手が起こったのは、言うまでもありません。

 これだけ弾いたら、もうアンコールも大してないだろう、と思っていたら、ショパ ンのエチュードの6番はまぁ、いいとしても、その後に12番「革命」なんか持って くるし、とどめは、「ペトルーシュカ」。何で、こんなに弾けるのよぉ、と言いたく もなります。(^^;) やはり、まだお若いから、ということになるのでしょうねぇ。 とっても頼もしいピアニストが現れたものと思います。うん、とにかくパワフルな演 奏会でした。