らいぶらりぃ
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神戸少年少女合唱団コスモス第21回定期演奏会

●日 時1998年4月11日(土)17時開演
●会 場神戸文化ホール・中ホール
●出 演山本龍弥指揮神戸少年少女合唱団コスモス
ピアノ:田中利枝
賛助出演:馬場清孝指揮女声合唱団はっぴいすまいる
     (ピアノ:喜田光三)
      山本龍弥指揮神戸市立鷹匠中学校合唱部
     (ピアノ:西奈央子)
●曲 目<I>アラカルト
久石譲(中川李枝子詞)/さんぽ
久石譲(宮崎駿詞)/もののけ姫
木下牧子(谷川俊太郎詞)/春に
モーツァルト(志摩桂詞)/アルファベット
リゲティ/Harom hordo
源田俊一郎(星加ルミ子訳詞)/Sing
<II>女声合唱団はっぴいすまいる
高田三郎(高野喜久雄詞)/女声合唱組曲「水のいのち」より
             雨/水たまり/川/海
<III>おんがくお伽草子「おこん・こんざぶろう」
〜団員の企画・自主練習による音楽劇(脚本:篠崎博/曲:和田則彦)
<IV>神戸市立鷹匠中学校合唱部
〜ユーミンの曲を集めて〜
    ひこうき雲/晩夏/ノーサイド/緑の町に舞い降りて
<V>日本の歌
大熊崇子(御木白日詞)/さくら
源田俊一郎編/「日本のうたメドレー」より
       花/荒城の月/浜辺の歌/早春賦/赤とんぼ/椰子の実
<VI>合同演奏
大澤徹訓(堀徹詞)/Let's search for Tomorrow
佐藤眞(大木敦夫詞)/大地讃頌

 昨年度の関西合唱コンクールで銅賞を受賞した、神戸の子供達の合唱団です。子供 達の素直な発声のハーモニーを楽しむことができました。第一部は「アラカルト」と いうことで、ほんまに何でもあり、でしたが、どの曲も皆、明るい表情で歌っている から、こちらの気持ちも自然と和んでくるものです。「もののけ姫」もこんなふうに アレンジされているんですね… また、第五部は日本の歌ばかりを集めて、途中にソ ロが入ったりしながらの演奏でした。ソロは、やはり、どの子も緊張しているよう で、思うように声が出ないような子もいましたけど、でも、こういう体験をするとい うことの方が大事なのでしょうね。これだけ多くの観客の前で、独りで歌う、なんて ことは滅多にないことですもんね。

 一番のお楽しみは、第三部のオペレッタ(と言うのだろうか…)。団員の皆の企画 によるものだそうで、いろいろと工夫している様子が見てとれました。話の内容は、 要は、きつねの嫁入り、ですな。(^^;) きつねの嫁入り、その祝いの席に呼ばれた、 おじいさんとおばあさん、それにお地蔵さん、の3人がひと騒動にまきこまれて…と いう話です。きつねの役の子達、或は、合唱の役、語りの役、リコーダー演奏の役、 配役等も全て、子供達自身の手で行ったそうですが、いいですね、こういう企画は。 小学生から高校生まで、わぁっと子供達が集まって、練習をしてきた、その光景が目 に浮かぶようでもあり、微笑ましいものです。皆で力を合わせて、ひとつのものを作 り上げる、その喜びは、おそらく、彼等自身も十分に感じているでしょうが、その喜 びが、舞台の上からも伝わってくるようでした。技術的にどうこういう問題じゃなく て、どれだけ楽しんでいるか、どれだけ満足してやっているか、ということの方が大 切なのでしょうね。明るい表情で、のびのびと自分達の音楽を作り上げているのを見 ると、なんだか、こちらもほっとするもんです。

 さて、その他に賛助出演の団体が2つありました。ひとつは、やはり地元のおかあ さんコーラスである、女声合唱団はっぴいすまいる。地元の辺りでは、結構、力のあ る合唱団として通っているところですね。「水のいのち」を演奏してくれましたが、 ちょっと元気がないような、そんな感じがしました。「海よ」なんかも、もっと、 ぐぅっと来るものがあってもよかったように思います。でも、きれいにまとめてはっ たと思いますし、最近、オペラ等でも活躍し始めている馬場さんの指揮を見ることが できたのも、なかなか、でした。

 もうひとつの方は、神戸市立鷹匠中学校の合唱部。コスモスさんと同じ、山本さん が指揮をしているところ(と言うか、こちらの指揮をしていた山本さんを、コスモス さんが引っ張ってきた、のですね…)です。昨年の全日本合唱コンクールで見事、金 賞を受賞したところです。この合唱部って、かつて昭和40年代あたりには何度も全 国大会へ出場し、入賞や優勝を果たしていた、という名門なんですよね。当時のこと は、今ではすっかり語り草となっているのですが、それを、この山本さんが指揮者に 就任してから、再び力をつけてきて、ついには昨年の成績というところまで伸びてき た、という実力のある合唱部です。そして、その演奏を聴いて、…思わず泣いてしま いました。ほんとに素晴らしく上手いのです。何が素晴らしいって、声が完全にひと つにまとまっていて、ひとつのよどみもない、清純な清水の流れのようにさらさら と、音楽が流れていくんです。各パート毎はもちろん、全体でも完全にピッチがぴ たっと合っていて、その上、pからfまで、ダイナミクスの幅も広く、言葉の扱いも 上手く、その表現力は相当のレベルのものだと思います。ユーミンの曲だから、とい うのもあるのかもしれませんが(^^;)、しっとり、さらさらとした演奏に、しばし心が 洗われる思いがしました。ちなみに、この学校、実は私の家のすぐ目の前にあったり します。(^^;) 毎朝、出勤する時に、私と交叉する形で、ここの中学生が登校してい くのとすれ違っているのですが、そんな中に、この舞台にも立っている彼女らもいる のかと思うと、何か、親しみみたいなものもわいてきますな。(^^;)

 最後の合同で演奏してくれた「Let's search for tomorrow」、震災後、何回か耳に している曲ですが、何度聴いても、いい曲ですね。「明日へ向かって」を、子供達 と、おかあさん達と一緒になって、歌い上げる、この光景には、何か、じぃんとくる ものがありました。震災から3年と3か月が経過しようとしている中、未だ真の復興 はできていない、という現状を改めて考えさせられ、また、最近何かと、子供達の犯 罪が問題になったりしますが、そんな彼等と同年代の子供達が、こんなにも素晴らし い音楽を作り上げているという現実に、感動し、そんな思いが頭の中をよぎるのでし た… いや、ほんとに、素敵な演奏会でした。