らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年4月12日(日)13時開演 |
●会 場 | フェスティバルホール |
●演目及出演 | 観世流能「屋島」 |
シテ:山本眞義(前シテ:漁翁/後シテ:源義経) | |
ツレ:梅若盛彦(漁夫) | |
ワキ:指吸雅之助(旅僧) | |
ワキツレ:和田英基、永留浩史(従僧) | |
アイ:善竹忠市郎(那須語) | |
囃子:赤井啓三(笛)/久田舜一郎(小鼓)/辻芳昭(大鼓) | |
後見:上野朝義、井戸和男、生一知哉 | |
地謡:梅若修一、井上生春、池内光之助、梅若基徳 武富康之、山口剛一郎、井戸良祐、斉藤信雄 | |
大蔵流狂言「茫々頭」 | |
シテ:善竹幸四郎(太郎冠者) | |
アド:善竹隆司(大名) | |
後見:上西良介 | |
観世流能「杜若」 | |
シテ:梅若盛義(杜若ノ精) | |
ワキ:中村彌三郎(旅僧) | |
囃子:野口傅之輔(笛)/荒木照雄(小鼓)/山本孝(大鼓)/上田悟(太鼓) | |
後見:山本眞義、井上生香、赤松禎英 | |
地謡:岡田朗詠、山中義滋、井戸和男、阪本恵勇 梅若善久、橋本雅一、久保誠一郎、水田雄吾 | |
観世流仕舞「善知鳥」 | |
仕舞:上野朝義 | |
地謡:井上生香、梅若修一、岡田晃一、阪本恵勇、山中雅志 | |
観世流能「烏帽子折」 | |
シテ:大槻文蔵(前シテ:烏帽子屋ノ亭主/後シテ:熊坂長範) | |
子方:大槻一文(牛若丸) | |
ツレ:山本博通(烏帽子屋ノ妻) | |
赤松禎英(若者頭) | |
生一知哉、梅若基徳、梅若善久、久保誠一郎 井戸良祐、水田雄吾、山口剛一郎、斉藤信輔 | |
ワキ:江崎金治郎(三條吉次) | |
ワキツレ:江崎敬三(三條吉六) | |
囃子:貞光義明(笛)/久田舜一郎(小鼓)/守家由訓(大鼓)/上田悟(太鼓) | |
アイ:善竹忠一郎、善竹隆平、善竹幸四郎(盗人) | |
道下正裕(早打) | |
善竹隆司(宿貸) | |
後見:梅若盛義、山中義滋、武富康之 | |
地謡:梅若善高、上野朝義、池内光之助、岡田晃一 梅若盛彦、橋本雅一、山中雅志、谷口澄夫 |
久しぶりの能楽です。毎年恒例の「大阪国際フェスティバル」の中で、やはり毎
年、このような形で能の公演があるのですね… 演目も面白そうなので、同じ日にシ
ンフォニーホールでやっている、朝比奈隆のブラームス・チクルスをよそに、こちら
へ行ってきました。(^^;) フェスティバルホールという、洋風のホールで能を上演するということで、舞台の 上に能舞台が作られているのですが、すごいのは、ふつうの能楽堂では、鏡板とい う、後ろの壁に松の絵が描いてあるのですが、これを、何と、ホールの上に本物の松 の木をもってきて実現していること。橋掛りの方の一の松なんかも、本物で、さら に、能楽堂では脇正面になる部分が、舞台上で死んでしまっていますから、この白州 の部分に、枯山水風に石を配置しているんですね。このこだわりが、何か特殊な雰囲 気をかもし出してきています。 さて、1曲目は「屋島」。義経の亡霊が出てきて、屋島の合戦のことを回想すると いう話ですね。前半は、亡霊は漁夫の姿に身を変えて登場してきます。何となくのど かな感じで、昔懐かしといったふうに淡々と、昔話をしていく、そ、「静」のイメー ジですね。それが、後半になると、いよいよ、甲冑姿の義経が現れ、有名な「弓流 し」の有り様を再現していきます。こちらは「動」のイメージで、この前半と後半の 対比が、いいですね。合間に入る狂言が、那須与一のことを話すのが、その対比をさ らに引き立たせています。最後の方にくると、地謡の上に、義経が勇ましい舞いを見 せてくれます。う〜む、かっこいい! あの世でも修羅の道を歩まなければならない ということを歌っているわけですが、この辺りのテンポも好きですね。やがて義経は 去って行き、はたと夢から醒めた旅僧が、その後を追っていくようにして、幕となり ます。 休憩に入る前に狂言が1曲。「茫々頭」ですが、これはもう、善竹幸四郎さんの演 技が面白く、とっても楽しめました。前半は、お、真面目な話じゃなかと思わせてお いて、後半になって、がくっとオチがくるという展開が、楽しいですね。 さて、2曲目の能は「杜若」。シテとワキしか出てこない、小品です。中入りもな く、全編が何か雅びやかな雰囲気に包まれた曲ですね。「伊勢物語」のことを淡々と 語りながら、舞いを見せてくれるシテの動きに、見入っていると、いつの間にか終 わっていたような…(^^;) そして、一番の見物は最後の「烏帽子折」でしょう。今度は幼い頃の義経が出てき ます。子方は大槻一文さん。何と、10歳!だそうで、シテを演じる大槻文蔵さんの お子さんなんだそうです。ワキの吉次・吉六が東国へ出ようとしているところへ、遠 くの方から「なうなう…」と声をかけて、橋掛りに現れるのが、義経(というか、牛 若丸)。凛々しくって、可愛い!ですね。声もよく通っていて、好感が持てます。そ して、3人で東国へと下っていくわけですが、鏡の宿に到着したというところで、早 打のアイが入ります。牛若と討ち取れとの命が下ったということを聴き、牛若は元服 を済ませて烏帽子を着けようと思い立つのです。そして、前シテの烏帽子屋へと赴 き、烏帽子を請うのでした。この辺りの(実際の)親子のやり取りもまた、見てい て、何か、微笑ましいですね。一文さんも、しっかりと台詞も覚えて喋っているし、 所作もよく覚えていて動いているから、立派なものです。そこへ親として烏帽子を着 けるというのも、舞台の上のこととはいえ、晴れ晴れしいものなのではないでしょう か。ツレが牛若の正体を見抜き、シテと共に牛若のもとへ追い付いて、烏帽子代とし てもらった太刀を返す、いいシーンですねぇ。そうこうして、赤坂の宿に着いたとこ ろで、中入りとなります。アイが3人出てきて、夜襲に備えている牛若の床を窺って いる、その様が滑稽ですね。3人トリオの漫才を見ているかのような。ここでも善竹 幸四郎さんがイイ味を出してはります。漫才で言えば、ボケの役ですかね。順番に中 に入っていこうとしては、牛若にはっしとやられてしまう、やがて頭に報告とばかり に一目散に退散していくのでした。さ、いよいよ後シテ、熊坂長範の登場です。若者 頭から先ほどのアイ3人の報告を聞き、かぁっとした長範、若者の面々を呼び出しま す。と、ぞろぞろと若者衆が出てくるわ、出てくるわ。(^^;) 気負い立った面々が順 に牛若に襲いかかります。この辺りの太刀合わせって、見ていても難しそうなのです が、一文さんもきっちりとこなしています。さすが!ですね。ばったばったと、全員 がやられてしまって、いよいよ長範が太刀を持って出てきます。親子による一騎討ち です。地謡にのって、息の詰まるような戦闘シーンが繰り広げられますが、やがて、 長範は追いやられていき、最後は、橋掛りのところで、ばたっと倒れてしまうのでし た。牛若の大勝利!で、幕は降りるのでした。いやぁ、見ごたえのある曲でした。 …と見てきて、いつしか時間は18時前。疲れるのも無理ないですかね。(^^;)
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