らいぶらりぃ
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アルゼンチン国立交響楽団

●日 時1998年5月17日(日)15時開演
●会 場シンフォホール
●出 演ペドロ・イグナチオ・カルデロン指揮アルゼンチン国立交響楽団
ギター:エドゥアルド・イサーク
バンドネオン:ダニエル・ビネーリ
●曲 目ヒナステラ/「南米のファウスト」のための序曲
ピアソラ/バンドネオン協奏曲
ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」より
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
ラヴェル/ボレロ
(アンコール)
レペラ/私の好きなブエノスアイレス
ドヴォリザーク/スラヴ舞曲第8番
J.シュトラウス/ラデツキー行進曲

 今回が初来日のアルゼンチン国立響です。アルゼンチンと言えば、ピアソラとサッ カーくらいしか、イメージがわかないのですが(^^;)、それだけでない、音楽の水準の 高さをはっきりと示してくれていたと思います。

 プログラムはアルゼンチンの作曲家の曲を中心に組まれています。ヒナステラにピ アソラ、どちらも素敵な曲ですね。ヒナステラの曲も初めて聴く曲でしたが、いかに も南米、というのがはっきりと分かるような曲です。歯切れのいいリズム感をもって いて、何か、体がうずいてくるような。(^^;) で、このオーケストラ、そのリズム感 がとってもいいんです。まさにノッていて、どの楽器もシャープな音を出していま す。最後の「3+3+2+2…」のリズム(だったと思う…)なんか、最高に盛り上 がりましたねぇ。

 次のピアソラは、日本では少し前からブームになっているようですが、生で聴くの は初めてです。バンドネオンって、ピアノいすの上に片足を上げて、その上に楽器を のせて弾くものなんですね。ちょっとびっくり。(^^;) で、その音色がまた、奇麗で すね。微妙な表情なんかもちゃんとつけることができるから、聴いていてとても気持 ちいいです。それに、ピネーリさんの演奏は、この楽器の魅力を十二分に出し切って いて、聴いている者の心をぐっとつかんで離さないものです。特に2楽章の美しさ!  ヴァイオリンやチェロのソロと並んで響き渡るその音色は、至福の喜びを私達に与 えてくれるものでした。

 前半最後はファリャ。三角帽子、これもまたリズミックな曲ですが、見事な演奏で した。聴いていて思うのは、このオーケストラって、こういう、どちらかというと派 手な感じの、リズム感ばりばりの曲を得意とするのかな… これがラテンの音楽なの かな… ということ。

 しかし、それを覆したのが、後半のロドリーゴ。これも生で聴くのは初めてです が、ギターの音と一体となって、実にしんみりとした表情に変わるのです。特に2楽 章の美しさ! オーボエ(でしたっけ…)の導入も実に奇麗ですが、ソロのイサーク さんの演奏はその美しさをさらに高めるように、切々と我々の心に訴えてきます。オ ケ全体も、これをバックで、実にしっとりとした感じで支え上げていて、前半で聴い た、あの賑わしさはどこへ行ったの?と言いたくなります。(^^;) まるで、天にも昇 るような気持ち(って、どんなんだ?^^;)にさせられました。もちろん、1楽章の さっそうとした感じや、3楽章のたおやかさなどもよく表現されていて、素晴らしい 演奏でした。

 そして、最後は、この曲の演奏を聴けばそのオケの実力がはっきりと分かるとい う、ボレロ。そういや、開演前に、舞台ソデから、この練習をしている楽器の音がも れ聴こえてきてましたね。演奏前から、小太鼓のお兄さんなんか、気合十分で、はり きっているのが、分かります。そして、演奏。各楽器とも、きっちりとソロの役を果 たしていきます。フルートが倍音を出すところが、ちょっと気にはなったものの、木 管から、弦楽器へ、そして金管が鳴り響き、力強さを増して、一気にクライマックス へ。まざまざとこのオーケストラの実力というものを見せられたような気がします。 各奏者の腕はほんと、確かなもので、それらがかっちりと合わさって、あのリズム感 あふれる演奏へとつながっていくわけですね。またひとつ、素敵なオーケストラを私 達は知ることができたと思います。

 アンコールは、ご当地の「私の好きなブエノスアイレス」。和やかな感じで、演奏 してはる皆さんの姿がいいですね。そして、割れるような大拍手に応えての2曲目、 3曲目は、西洋モノ。スラヴ舞曲で、またパンチのきいた演奏を聴かせておいて、そ の上で、ラデツキーで、私達を完全にノせてしまう、という、心憎い演出だったと思 います。私にとっては、久しぶりにシンフォで聴くオーケストラの演奏会、十分に満 喫することができました。