らいぶらりぃ
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ピッツバーグ交響楽団(姫路公演)

●日 時1998年5月22日(金)19時開演
●会 場姫路市文化センター大ホール
●出 演マリス・ヤンソンス指揮ピッツバーグ交響楽団
ヴァイオリン:ギドン・クレーメル
チェロ:ミッシャ・マイスキー
●曲 目ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調Op102
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
(アンコール)
ボッケリーニ/メヌエット

 ヤンソンスさん指揮のピッツバーグ響で、しかも、マイスキーさんとクレーメルさ んの共演を聴くことができる、それも、大阪でなく、姫路で! 姫路まで行けるかど うか不安ではあったものの、思わずチケットを買ってしまったのは、2月の発売の当 日。(^^;) 当時の職場でも、この演奏会のことは話題になっていて、私が早速にチ ケットをGETしたことは、さすが、といわれるより、呆れられてしまいました。 (;_;)

 ところで、この演奏会、姫路市の文化振興財団が創立10周年を記念しての行事と して、打ち出したものなのです。ピッツバーグ響を迎えるだけでもたいそうなことな のに、加えて、クレーメルさんとマイスキーさんをも一緒に呼んでしまうということ は、なかなかできることではないでしょう。予算措置のこともありますから、昨年の うちから話を進めていたのでしょうけど、他では東京でしか実現できないようなプロ グラムを、姫路市が取り上げる、ということは、それなりの英断があったものと思わ れます。そんな姫路市が、とてもうらやましくも思えてきます… 神戸では、これく らいのこと、なかなか、できないのでしょうね…

 と、いきなり、切ないことを愚痴ってしまいましたが(^^;)、演奏の方は、期待通り の素晴らしいものでした。特にマイスキーさんとクレーメルさんによるドッペル・コ ンチェルトは、もう、感激!の嵐に襲われながら聴いていました。だって、あのマイ スキーさんとクレーメルさんが目の前で並んで演奏している!(1階の前の方の席 だったので、まさに目の前なんです)というだけで、嬉し涙が出てきそうなのに、そ こから作り出される音楽の何と、温かく、美しいこと! 興奮することを禁じ得ない 状態というのは、こういう時のことを言うのでしょう。目頭をじぃ〜んとさせなが ら、ずっと耳を傾けていました。

 他の皆さんと違って、一人、ラフな格好で登場してきたマイスキーさん、格好はラ フでも、そこから作り出す音楽は超一流です。これほど、たっぷりと歌心をもって、 演奏されたら、ブラームスも喜ぶのではないでしょうか。実に朗々とした感じで歌っ ている姿が印象的です。で、その横で、クレーメルさんが、また、超一流の演奏を展 開しています。音楽的には、どちらが主でどちらが従ということはないのですが、見 た感じでは、クレーメルさんがマイスキーさんに寄りそうように、ぴたりと合せては る、そんなふうにも見えます。非常に繊細な感じの音を出していて、それがマイス キーさんの太い音とからみあうところなどは、まさに絶妙のアンサンブルと言うにふ さわしいものでした。特に2楽章などは、それぞれが実に美しく歌い上げていて、 うっとりと聴きほれていました。

 さて、それほど、ブラームスの演奏が素晴らしかったのですが、後半の「運命」 も、また、前半に負けると劣らない程の演奏でした。先のクリーヴランド管ではない ですが、ピッツバーグ響もまた、完璧なまでのアンサンブル力を持っているかと思い ます。そして、歌うべきところは実にたっぷりと歌います。例えば、2楽章のテー マ、最初にVaとVcに出てくるところなぞも、え、こんなにたっぷりと歌うの?と 思うくらいに、歌っていました。音自体にもとっても厚みがあるのですが、それが ごぉっと唸りながらメロディーを歌っていくのですから、もう、たまりません。ぐい ぐいと聴く者の心を引きずり込んでいくようです。あと、3楽章などで活躍する低 弦、この響きがまた素晴らしくぶ厚くって、まるで地鳴りがしているかのような、 ずっしりとした響きには、おぉ!と思います。3楽章が終わり、まるで長いトンネル から抜け出すかのようにぱぁっと展開する4楽章、この辺りからもう、完全に理性を 忘れて(?)、音楽の中に身を委ねていました。

 ヤンソンスさんの作り出す音楽の世界、これはもう、聴く者にはたまらないです ね。いつだったか、ヤンソンスさんの指揮でオスロ・フィルの演奏を聴いたことがあ りましたが、その時も今日と同じく、すっかりヤンソンスさんのペースにノセられて しまったのでした。(^^;) これがヤンソンスさんの音楽なのでしょう。もう、すっか りその魅力の虜になってしまいました。明後日には、大阪でマーラーの5番です。こ ちらもますます、楽しみです。(え、また行くんかい、という突っ込みはせんといて 下さい…^^;)