らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年5月28日(木)19時開演 |
●会 場 | シンフォニーホール |
●出 演 | サー・サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団 |
ヴァイオリン:イダ・ヘンデル | |
●曲 目 | メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64 |
マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」 |
先頃、サミットが行われたバーミンガム、このバーミンガム市のオーケストラが
やってきました。しかも、17年間、ずっと音楽監督を務めてきた、あのラトルさん
との最後の来日公演です。そうともなれば、お客さんの入りも多いのも分かります。
(^^) さて、最初はメン・コンであります。ソロは「伝説のヴァイオリニスト」、イダ・ ヘンデルさん。その繊細で優しい感じの響きは、なかなか素敵だったと思います。オ ケの響きもどこか上品な感じで、これらが合わさって、上品・可憐な感じの演奏でし た。2楽章なんか、ほんと、奇麗でよかったですね。ただ、何というか、きれいにま とめているだけ、という風にも取れるような演奏でもあるんですね。個人的には、も うちょっと歌心をこめてたっぷりと歌い上げてくれる方が好きなのですが、イダさん の演奏は、案外とさらりとしたもので、部分によっては、オケの中に沈みがちに聴こ えるのが、ちょっと残念な気もします。 でも、後半の「夜の歌」、こちらは、もう、「超」感動!もんです。(^^;) 何が素 晴らしいって、前半の上品さをかなぐり捨てるかのような勢い、「熱い」ものを持っ て、ぐいぐいと聴く者を引き込んでいくのです。それは、冒頭のホルンの太く、力強 い響きを聴いた瞬間から、はっきりと分かります。そして、曲は、不安さを増すよう に、力強い部分が展開していきますが、ひとしきり盛り上がった後、Hrpのアルペ ジオが鳴り響くと始まる、弦の美しい旋律! 実にたっぷりと豊かに歌い上げていき ます。しかも、これが極めて自然なんです。コテコテに作ってまっせ、というのでな く、あくまでも音楽の流れに逆らわず、自然に、流れていくのです。そして、それを 明確に、はっきりと、しかも美しく聴かせる、これがラトルさんの音楽なのか、とそ の力を改めて実感します。2楽章でも、例えば、真ん中辺りで、Vcから始まる、奇 麗な旋律、これもたっぷりと聴かせてくれます。そして、その後の各パートに引き継 がれていく、そのどのパートも、また、たっぷりと聴かせてくれて、え、こんなとこ にもこの旋律って、あったの? と改めて思うのでした。(^^;) そ、普段、余り聴こ えてこないような部分に隠れてしまっている、奇麗な旋律を、はっきりと正面に歌い 出してこさせる、これもまた、ラトルさん流ですね。あと、特筆すべきは、3楽章で のリズムの素晴らしさ! この楽章でよく出てくる総休止の間合いの取り方なんか、 まさに絶妙!です。しかも、これもまた、人工的に作ってまっせ、というのでなく、 とても自然に休止して、また再度、入ってくる、という感じなんですね。1楽章の後 半から、既に、これはただならぬ演奏だぞ…と感じていたのですが、この3楽章まで くると、もう、その余りの素晴らしさに、目頭が熱くなるのを禁じえませんでした。 そして、4楽章のまた、美しいこと! ここから登場のギターとマンドリンの音も たっぷりと聴けて、その上に乗る弦の旋律のやさしさ、といったら! それは、まさ に1〜3楽章で如実であった、心の不安を拭い去り、平安、安らぎの中へと、心を導 きいれるかのような、優しい響きをしています。その安らぎから、さらに輝かしい光 の中へ、という5楽章、再び、金管群が鳴り響き渡ります。その迫力には圧倒されっ ぱなしで、やがて、鐘の音が鳴り渡ると、曲は最高潮を迎えます。会場中を舞台上の 熱気が覆うようで、たまらなく気持ちが高まってくると、一気に終結になります。た ちまち、割れるばかりの拍手が起きたのは、言うまでもありません。まるで、いぶし 銀のような輝きを放つ、このオケの響きには、ほんと、心を打たれました。これほ ど、感動的な演奏は、他ではなかなかできないことでしょう。いやぁ、素晴らしかっ たです。 先週からクリーヴランド管、ピッツバーグ響、バーミンガム市響と聴き歩いてき て、今日の演奏が一番、感動的であったような気がします。ほんまに心がすかっと した演奏でした。(^^;)
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