らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

キリ・テ・カナワ ソプラノ・リサイタル

●日 時1998年6月6日(土)18時30分開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ソプラノ:キリ・テ・カナワ
ピアノ:ウォーレン・ジョーンズ
●曲 目メンデルスゾーン/歌の翼にOp.34-2
ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」より 黒雲が陽を隠しても
シューベルト/糸を紡ぐグレートヒェンD.118
ヘンデル/歌劇「ジュリアス・シーザー」より つらい運命に涙はあふれ
R.シュトラウス/ばらのおびOp.36-1
         夜Op.10-3
         ぼくのすべての想いOp.21-1
         明日にはOp.27-4
         献身Op.10-1
グラナドス/歌劇「ゴイェスカス」より マハと夜うぐいす
グァスタビーノ/バラと柳
プッチーニ/太陽と愛
      死とは?
      魂の歌(或る詩集の1ページより)
グァスタビーノ/歌曲集「アルゼンチンの花」より
         コルタデーラ、プルメリート
         白いクラベル・デル・アイル
         紫のビナグリージョ
         なんときれいなマドレセルバ
         ああ、えびらのよう、チルコの花は

 昨年は、カナワさん、ナタリー・コールさんとジョイントをしてはりましたよね。 生で聴きたかったなぁ、と思いながら、その時のTV放送を録画したのを覚えてま す。

 さて、今日は、前半はウィーン系(?)の曲、後半は南方系(?)という感じの曲 というプログラムです。

 最初のメンデルスゾーン、あれ、ひょっとして体調でも悪いのかしらん、というよ うな心配にかられます。今までTV等で聴いてきた印象と違って、何か聴こえてこな い…ような感じなんです。ウェーバーも、曲の組み立て方等はとってもうなずける程 の、聴かせるものなのですが、やはり、どこか、こもったような感じがする…  シューベルトまではそんな感じでした。けれど、ヘンデルの辺りからは、すっかり復 調されたようで、カナワさんの上品で、しっとりした、声の響きが会場をすっぽりと 支配するような感じにとらわれます。さらに、R.シュトラウスに至って、それは、 はっきりとしてきます。R.シュトラウスの曲って、ほんと、美しい曲が多いですよ ね。今回の小品達も、どれも奇麗なものばかりで、まさにカナワさんの声にぴった り、という気がします。特に、「明日には」の何と甘美で美しいこと! 余韻まで たっぷりと聴かせてくれて、これには、心が洗われるような気がしました。そ、カナ ワさんの声って、何と言うか、上品で気高く(?)、しっとりと聴かせる、という感 じで、それが、R.シュトラウスの曲には、ぴたりと合致してきます。ふわっとした 感じで、会場中を、カナワさんの声が覆い、それだけで、幸せな気持ちになってきま す。いいですねぇ…

 後半は、南方系の曲。グラナドスの曲は… うぅ、客席の方から、何かが落ちる音 がごろっ!と響き渡ったり、ごほごほと咳が聴こえたりして、演奏に集中できない ぞぉ… そうそう、今日の演奏会って、見た感じ、おばさま方が多いように思いまし たが、全体的に、何か会場がざわついているような感じで、ちょっと悲しい…

 プッチーニの「太陽と愛」って、どこかで聴いたような曲だなぁ、と思ったのです が、これって、「ラ・ボエーム」の3幕の有名な4重唱の土台になった曲なのです ね。知らなかった… そして、何と言っても、グァスタビーノの曲!です。アルゼン チンの楽会の大御所ですが、その曲は、とても美しいですね。「バラと柳」も奇麗で すし、「アルゼンチンの花」もまた、美しい曲ばかりを集めていますね。特に、「ア ルゼンチンの花」は、可憐に、明るく咲く花や、密かに、しとやかに咲く花、どこか 寂しげに咲く花、優雅に、やさしく咲く花、そして、高貴な、まさに高嶺に咲くよう な花、といった、曲ごとの表情がそれぞれ特徴的なのが、印象的です。しかも、それ を、カナワさんの澄んだ声が、表現力たっぷりと歌い上げていくのです。一番最後の 「チルコの花」なんか、もう、天上の音楽といってもいいくらい、透き通った響きな んです。前半と同様、心が洗われていくような感じです。

 アンコールでは、やはり、期待通り、「私のお父さん」を歌ってくれました。希望 の曲を歌っていただけると、嬉しいものですね。(^^) 十分の堪能できた演奏会でし た。