らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

オルランド・コンソート

●日 時1998年6月7日(日)15時開演
●会 場京都府立府民ホール「アルティ」
●出 演カウンターテナー:ロバート・ハリー=ジョーンズ
テノール:チャールズ・ダニエルズ
テノール:アンガス・スミス
バリトン:ドナルド・グレイグ
●曲 目デュファイ/めでたし、天の女王
オケゲム/アヴェ・マリア
ビュノワ/フランスの国びとよ
バンショワ/いつまでもやはり
ギゼゲム/私の愛しい女はあらゆるすぐれた才にたけ
モートン/あなたのために
コンペール/アヴェ・マリア
デュファイ/コンスタンチノポリスの聖母教会の嘆き
コンペール/勝利得たる十字架
オケゲム/あなたの恋の手習いは
     おお美しいばらよ
ジョスカン・デ・プレ/民のうちの富める者はみな御身が御顔を
(アンコール)
S'elle M'amera / Petite Camusette (Antoine Busnoys)
Mille Regretz (Josquin Desprez)

 久しぶりの古楽です。この手の曲を聴くのは、昨年のヒリアード以来でしょうか…

 曲は、いずれも、ほとんど知らないような曲ばかり。う〜む、寝てまうかもしれな い…と思いながらも、しっかりと起きて聴いてました。(^^;) プログラムの趣旨は、 中世が終わり、ルネサンスの幕が開ける時期にあたる曲を集めた、とのこと。一番古 いデュファイに始まり、新時代の大家であるデ・プレに至る、という時空を追いなが ら、曲を聴くことになります。

 そんな中で、印象的なのは、まずは、オケゲムでしょうか。「アヴェ・マリア」の 美しさもさることながら、後半で聴かせてくれた、「あなたの恋の手習いは」、バリ トン以外の3声の曲ですが、これが、各声部が複雑にからみ合うような、難しそうな 曲なんですね。それをカウンターのジョーンズさんの透き通った声が、ひょいひょ いっと引っ張っていくような感じで、何か凄みを感じさせるようなものがありまし た。また、「おお美しいばらよ」は、テノール2声。ダニエルズさんの幅のある響き と、スミスさんのしっかと安定した響きとが、絶妙にからみ合います。テノールの聴 かせどころ、とばかりにかなり気合が入っているかのようにも見えました。(^^;)

 また、ギゼゲムの「私の愛しい…」も、いい曲だなと思いました。何でも、この曲 の旋律を逆からたどると、グレゴリオ聖歌の「めでたし女王」の旋律と合致するのだ そうで。聴いている時は、そんなことは分かりませんでしたけど、そのことが、耳に 親しみやすさを感じさせたのかもしれませんね。また、モートンの「あなたのため に」も素敵な曲…と思ったら、低声部がの旋律が有名な「ロム・アルメ」のものなの だそうで。う〜む、こういう流れって、やがては、パレストリーナの作るパロディ・ ミサの方向へと向かっていくのでしょうか…

 一番の圧巻は、最後のデ・プレです。タイトルだけでは1曲のように見えますが、 7つの小さなモテットから成る曲なんですね。それぞれの曲が違う性格を持ち、非常 に起伏に富んだ音楽は、さすが、デ・プレというものです。それを、この4人の声 が、しっかりとからみ合いながら、見事に表現していきます。ジョーンズさんの声が すぅっと響き渡り、その下で、ダニエルズさんとスミスさんの声が、時に表に出て き、時に引っ込み、さらにバリトンのグレイグさんさんの声がふくよかに響いてきま す。この曲って、「モテッティ・ミッサーレス」(ミサ曲の各曲の代わりに歌われる モテット)として作られたのでは、という説もあるようですが、なるほど、確かにそ のように聴くこともできますね。ミサ曲の「Gloria」や「Credo」のような盛り上がり 方は、まさにミサ曲の代わり、という風にも聴こえます。6曲は聖母マリアへ、最後 の1曲がキリストへ捧げられた曲なのですが、そこには、確かにミサ曲につながる熱 い信仰心があるように思います。それを、オルランド・コンソートの皆さんは、見事 に歌い上げていたと思います。

 久しぶりに澄んだ声のアンサンブルを聴いて、やはり古楽もいいなぁ、と改めて思 うのでした…(^^;)