らいぶらりぃ
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ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団

●日 時1998年6月18日(木)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ファビオ・ルイジ指揮ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団
●曲 目ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調「運命」
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調

 先週の日曜(14日)は、珍しく何も予定のない日でした。たいていの休日は、演 奏会で埋まっているものなのですが… というのも、ロイヤル・リヴァプール管弦楽 団の演奏会が中止になったから、なんですね。もちろん、シンフォニーホールの窓口 で払戻しをしてもらいましたが、その時、何か、悔しいからと買ってしまったのが、 このウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団なんです。(^^;) プログラムを見る と、ベト5にマラ5。つい最近にも他で聴いたような曲ばかりですねぇ。

 最初は「運命」。出だしから、とってもシャープな音が響き渡ります。シャープで いて、それでいて、派手すぎず、緻密に曲を作っているという印象がします。小気味 よいテンポで、1楽章はすぱっと終わり、2楽章。Vcから入るテーマの歌い上げ方 が、素晴らしいですね。とぉってもたっぷりと歌っていて、しかも、その音色もどっ しりとした安定感のあるもので、聴いていて気持ちよくなります。3楽章も低弦が どっしりと響いてきて、いいですね。そして、4楽章に突入、一番最初に、シャー プ、と感じたのは、金管の音がシャープだからなんだということに気付きます。Tp の入りは、何か唐突なようにも聴こえますが、ぐいぐいと曲を前へと引っぱっていく その勢いは、凄いです。音に多少、アラがあったようにも聴こえたのですが、曲の作 り方は、さすが、素晴らしかったと思います。

 後半は、マラ5です。やはり、ラッパ系のシャープな音が目立ちます。ファン ファーレからして、さっとした緊張感が会場中に漂います。そして、沈痛な響きを持 つ行進曲が続きます。ルイジさんの指揮は、先に聴いたラトルさんほど、歌わせると いうのではないのかもしれませんが、それでも、さすが、オペラで下積みをされてき ただけあって、歌わせるべきところはたっぷりと歌わせています。うねうねとした行 進の後は、さらに混沌とした(?)2楽章。各楽器が必死にからみ合い、人の心の中 の葛藤を描くように、起伏を繰り返していきます。マーラーの曲って、こういう部分 がその本質とも思うのですが、聴きながら、自分と対話することもできるから、いい ですよね。そして、混沌の中から、勝利を勝ち取ったかのような曲調が盛り上がって きますが、ここの描き方が、いいなぁ、と思います。弦楽器が力強く響いてくると、 気分は勝利者、って感じになります。が、それも束の間、すぐに打ち砕けてしまうの でした… 3楽章に出てくるワルツ、さすが、ウィーン本場のオケですね。いいテン ポで刻んでいきます。4楽章はあくまでも、天上の音楽のごとく、美しく、そして、 5楽章、至福に満ちた音楽が展開していきます。やはり、どこか、アラが聴こえてく るのですが、それでも作り出そうとする音楽は、はっきりとこちらにも伝わってきま す。前に聴いたヤンソンスさん指揮のピッツバーグ響の印象が強いだけに、ちょっと 物足りなさのようなものも感じてしまいましたが、それでも、しっかりした曲作りで 素敵な演奏だったと思います。

 それにしましても、今日の演奏会のお客さんの入りの少なかったこと。2F席後部 は、自由席状態(^^;)という、オーケストラの演奏会にしては少なすぎるような気がし ました。何ででしょうねぇ…