らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年6月29日(月)19時開演 |
●会 場 | ザ・カレッジ・オペラハウス |
●出 演 | ピアノ:小川典子 |
●曲 目 | バッハ/「平均律クラヴィア曲集第1巻」より 前奏曲とフーガ変ホ短調/嬰ニ短調BWV.853 |
ブラームス/6つのピアノ小品集Op.118より 間奏曲イ短調/間奏曲イ長調/間奏曲変ホ長調 | |
ベートーヴェン/ピアノソナタ第23番ヘ短調Op.57「熱情」 | |
武満徹/雨の樹 素描II | |
シューマン/クライスレリアーナ:8つの幻想曲Op.16 | |
(アンコール) | |
リスト/ラ・カンパネッラ | |
シューマン/「子供の情景」より トロイメライ |
昨年、ラフマニノフの2番・3番のコンチェルトのCDがヒットした、ノリピー
(というふうにタワーレコードで紹介していた…)こと、小川典子さんの登場です。
チラシ等のお写真でもそうですが、間近に拝見すると、ほんと、笑顔がとっても
チャーミングですね。(*^^*) しかし、その可愛らしさにだまされてはいけません。(^^;) その演奏はごっついパ ワフルで、力強く、一体、どこにそんなパワーがあるの?と言いたくなるほどです。 特に今回のプログラムでも、「熱情」に「クライスレリアーナ」という、体力をとっ ても要求される曲を並べてくる、というだけでも、信じらんなぁ〜い! と言いたく もなります。それを、何の苦もないように(と見えるだけなのでしょうが)、弾きこ なしていくのは、まさに神業と言ってもいいような気もします。 「熱情」の第1楽章のきりっとした緊張感、一つ一つの音を大事にしながら、力が 抜けることなく、ベートーヴェンのロマンティシズムを表現していきます。テンポを 微妙に揺らしてみたり、細かなところで”<>”(cresc.して、dim.する、というこ とです)をしてみたり、その音楽の組み立て方もいいですね。何故か、この曲を初め て、ゼルキンの演奏しているレコードで聴いた時の感動を思い出してしまいます… (意味不明) 3楽章も勢いに乗って、まさに熱い情熱がほとばしるような演奏で す。凄ぉい!の一言に尽きるのですが、惜しまれるのは、2楽章。そういう激しい性 格の2つの楽章の間の、穏やかな楽章を、もっともっと歌ってほしかったなぁ、と思 うんです。どこか、たんたんとした感じでさらりと弾いていってしまわれたのが、 ちょっと物足りなく思われます。 でも、この歌い方に関して言えば、その前のブラームスでも同じように感じます。 ブラームスの、この、どこか寂しげな感じのする曲を、もう少し、情感こめてたっぷ りと歌っていたら…と思うのです。多分、一つ一つの音がクリアに、明瞭な音で聴こ えてくるから、そういうふうに感じるのかもしれませんけれども、今の彼女には、こ の手の曲はちょっと似合わないのかしらん、と思ってしまいます。 けど、武満の曲はよかったですねぇ。あっという間の短い曲でしたが、実によく考 えられた演奏でした。木の葉から水滴が落ちる音や、葉が風にさざめく音等が聴こえ てきて、その中に武満らしい歌が流れてきます。情景が目に浮かんでくるような、素 敵な演奏でした。 そして、「クライスレリアーナ」。情熱的な部分と感傷的な部分との対比が際立っ ており、前者では、典子さんのパワーが炸裂(?)しています。そして、後者の方で すが、今度は、割とよく歌ってはるじゃないですか。シューマンらしい内向的な色あ いのする旋律、やはり多少、音が明るいような気はしましたが、よく歌っていたと思 います。そうした、感情の起伏を乗り越えていく、音楽の表現の仕方自体は、とって もいいなと感じます。あんまり無理なく自然に流れていくのが、素敵ですね。 で、これだけ弾いておいて、アンコールでは「ラ・カンパネッラ」までやってしま うという… ほんと、パワフルなお姉さんですねぇ。(^^;)
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