らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年7月5日(日)14時開演 |
●会 場 | 京都コンサートホール |
●出 演 | ローラント・バーダー指揮マーストリヒト交響楽団 |
ピアノ:アレクサンドル・ストルコフ | |
●曲 目 | ベートーヴェン/序曲「レオノーレ」第3番Op.72b |
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23 | |
ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」 | |
(アンコール) | |
バッハ/G線上のアリア |
マーストリヒトと言えば、マーストリヒト条約の名前が有名ですね。オランダのこ
の町に、こんな、オランダ最古のオーケストラがあるとは知りませんでした。てっき
り、EU統合のオーケストラか何かかしらん、と思ってしまったのですが。(^^;) さて、現存する最古のオランダのオーケストラというだけのことはあって、その響 きは、まるで、じっくりと長い年月、発酵させた上等なワインの味とでもいうよう な、味わいの深いものでした。弦にしても管にしても、どの楽器も、音がとてもクリ アで、混じり気がないんですね。それでいて、さらに歌い上手なんです。音をとって も大事に扱っているのが、はっきりと分かります。 それが十分に発揮されていたのは、チャイコフスキーだったような気がします。 チャイコフスキーらしい美しい旋律が随所に出てくるのですが、それらを、実にたっ ぷりと歌っているんですね。第2楽章のObのソロなんか、ほんと、情感のこもった 美しい演奏でした。…と、もちろん、ピアノ協奏曲ですから、ピアノの方も忘れちゃ いけませんね。(^^;) ストルコフさんのピアノは、とっても力強い! 深ぁいタッチ から繰り出される響きが、会場中をすっぽりと覆い、聴く者をその世界へと誘いま す。それも、fのところの迫力もさることながら、2楽章のテーマ等は実によく歌い 上げているんですね。この表現力の素晴らしさ、そしてそこへ、先に書いたオーケス トラの響き、です。この上なく美しいチャイコフスキーがそこに描き出されたのでし た。 「英雄」ももちろん、素晴らしい演奏でした。小じんまりとしながら、メリハリの ある演奏で、テンポよく曲が流れていきます。第2楽章の葬送行進曲でも、やはり Obの美しさが目を引きますね。チャイコフスキーとは別の人が交替で、1stをし てはったのですが、1人1人の技術も確かなものであることを思い知らされます。第 3楽章での、Hrの活躍も見事ですね。第4楽章も、さすが、です。何がいいって、 コンマスさんのVnの音色が実にふくよかで、表情たっぷりなんですね。それが、 オーケストラ全体をうまく表情づけていているわけなんです。そして、オケ全体をま とめあげているバーダーさんの指揮も素敵ですね。細かな部分までよく考えられてい て、ぱしっと的確な指示を与えていく、素晴らしい指揮者だと感じました。「英雄」 の曲が持っている、タイトル通りの素晴らしさというものを、ぎゅっと凝縮してまと め上げた演奏だったと思います。 演奏が終って、団員さんに向かってもお礼を言い、1人1人を労いながら、お客さ ん1人1人に対しても、深々と頭を下げはる、バーダーさんのお人柄は、やさしい紳 士というようで、どこか茶目ッ気もあるようで、魅力的ですね。演奏会の雰囲気が、 何かしらん、上品で、優しさに満ちていたのは、そのせいなのかもしれませんね。ほ んと、素敵な演奏会でした。
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