らいぶらりぃ
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村治佳織ギターリサイタル(奈良公演)

●日 時1998年7月12日(日)14時開演
●会 場秋篠音楽堂
●出 演ギター:村治佳織
●曲 目バリオス/大聖堂
     森に夢みる
ロドリーゴ/3つのスペイン風小品より ファンダンゴ
      祈りと踊り
ポンセ/南のソナチネ
武満徹/すべては薄明のなかで
アルベニス/コルドバ
      セヴィーリャ
テデスコ/ソナタ二長調Op.77「ボッケリーニ賛」
(アンコール)
ロドリーゴ/小麦畑
禁じられた遊び
ヨーク/サンバースト

 村治佳織さん in 関西の第2弾、奈良公演です。プログラムは全回の神戸と一緒で す。神戸の時は、初めて佳織さんの演奏を生で聴くということで、また、その可愛ら しいお姿を間近に拝見して、思わず興奮してしまい(^^;)、あまり冷静に聴けなかった わけですが(^^;;)、今日は少しは落ち着いて聴くことができました。ので、曲ごと に、前よりはちょっとは詳しく書いてみようと思います。

 最初は、バリオスの「大聖堂」。3つの楽章からなる曲です。そのうち、1楽章と 2楽章がたまらなく美しいですね。1楽章は、どこか悲哀のようなものを感じさせる ような曲で、宗教的な感じが漂います。そして、2楽章はそれを受けてか、一心に祈 りを捧げるような雰囲気の曲。まさに聖堂で、神に向かい、許しを乞い、ひたすらに 慈悲を求めて祈り続ける敬謙な信者の姿というものが、そこにはあります。そして、 3楽章は一転して、明るく、幸福感に満ちた曲。祈りが通じた、というところでしょ うか。こういう曲の雰囲気というものを、佳織さんのギターは、実に丁寧に歌い上げ ていきます。初めの2つの楽章の切々とした感じなど、ほんと、たまりませんねぇ。

 2曲目は、同じくバリオスの「森に夢みる」。トレモロで奏されるメロディーの、 何と美しいことか。佳織さんのギターは、序奏の部分の間の取り方なども巧みで、聴 く者の心の奥底まで浸み入ってくるかのようです。

 次はロドリーゴの曲が2つ。まずは、「ファンダンゴ」、「スペイン風小品」と言 うだけのことはあって、まさにスペイン舞踏の華やかさを髣髴とさせる曲ですね。小 気味よく鳴り渡るギターには、思わず踊りたくなるような気さえします… そして、 「祈りと踊り」、全回でも、私の気に入った曲なのですが、何度聴いてもいいです ね。静と動の対比が、くっきりと出ているのが、素敵です。

 そして、ボンセのソナチネ。各楽章には副題がついていて、第1楽章は「田園」。 明るく、のどかな感じの曲ですが、”ぽろろん”といった感じで成るギターが、ま た、その雰囲気を上手に表わしています。第2楽章は「歌」、牧歌ですね。とても美 しいメロディーが流れてきます。こういう、歌わせるものになると、ほんと、佳織さ んのギターは俄然、その魅力を発揮しますね。しっとりとした感じで歌い上げていく のが、素敵です。第3楽章は「祭」、スペインの祭だそうで、どこか、ファリャの曲 を思い出させるような、勢いのある曲です。”じゃんじゃか”という感じ(?)で鳴 り響くギターが、そういう祭の雰囲気を作り出しています。前の楽章とは全く違う性 格の楽章ですが、この歌い分けも見事にされてはるのが、また、さすが、です。

 後半は、武満の曲から。この「すべては薄命…」は、前の時にも書いたように、非 常に神秘的な感じのする曲です。4つの楽章からなる曲ですが、いずれも、不思議で 幻影的な空気を作り出しています。ごく弱いppで響く音色は、あくまでも細く、 ぴぃんと会場の中にただならぬ緊張感を漂わせます。(ところが、こういう場面であ るにも関らず、何やらごそごそと音を立てている不届き者がいたことは、ちょっと許 せないですね…)けど、そういう中にも、いかにも武満らしい「歌」があるわけで、 その旋律をきちんと歌っていたことも印象的です。

 その次はアルベニスの曲が2つ。「コルドバ」も、いかにもスペイン舞曲、という 性格の曲ですね。けど、そのリズミカルな動きの上で歌われる歌の、何とも伸びやか なこと! 「セヴィーリャ」も、やはりスペインだなぁ、ということがはっきりと分 かる曲で、舞台の上はすっかり、スペイン・モード一色、です。(^^;) 佳織さんは今 日も赤い衣装を着てはるのですが、それが、こういう南国気分をさらに盛り上げてい ます。

 最後は、テデスコのソナタ。第1楽章はとても堂々とした感じの曲ですね。この力 強さの表現も素敵ですが、やはり、第2楽章での甘ぁいメロディーの歌わせ方が、た まらなく素敵です。第3楽章のメヌエットは、とても優雅な感じの曲。このソナタ全 体に「ボッケリーニ賛」という副題がついているように、なるほど、あのボッケリー ニのメヌエットにも何か通じるようなものがあるかなとも、思いました。そして第4 楽章の雄々しさ! 楽章ごとに曲の性格も全く違うわけですが、それらをきちんと歌 い分けて、その音楽の中にあるものへ迫ろうともいう佳織さんの姿勢が、はっきりと 分かるのが、素晴らしいですね。

 全体的にみて、何か、この前の神戸の時よりも伸びやかに弾いてはるような印象を 受けたのですが、それは、やはりここのホールの音響がそれなりにいいから、なので しょうか…(神戸の時はあまりいいとは言えなかった…) 次回は大阪、そして京都 へと続きますが、今度は音響面でもとっても素晴らしいホールになります。楽しみで すね。(^o^)