らいぶらりぃ
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村治佳織ギターリサイタル(大阪公演)

●日 時1998年7月15日(水)19時開演
●会 場いずみホール
●出 演ギター:村治佳織
●曲 目スカルラッティ/2つのソナタ(K.380、K.11)
ロドリーゴ/小麦畑で
      古風なティエント
      祈りと踊り
テデスコ/ソナタ二長調Op.77「ボッケリーニ賛」
武満徹/すべては薄明のなかで
ヨーク/サンバースト
    ララバイ
ポンセ/南のソナチネ
(アンコール)
蜂スズメ
バリオス/森に夢みる

 村治佳織さん in 関西の第3弾は、大阪公演。関西での他の公演とは違うプログ ラム、のはずだったのですが、行ってみると、曲目変更になったとかで、…ほとん ど、一緒ですな。(^^;) 曲を十分にさらう時間がなかったのかしらん、などとかん ぐったりもしてしまいますが、私なんかにとりましては、佳織さんの演奏が聴けたら それで十分、なのであります。(^^;;)

 最初はスカルラッティのソナタ。ソナタと言っても、単楽章の曲なのですね。それ が2つ、続けて演奏されました。どちらの曲も細やかな音が並ぶ、奇麗な曲です。古 風な感じの漂うその曲の雰囲気は、まさにリュートで演奏してはるようで、その円ら かな音が、心地好く響いてきます。それに、今回はいずみホールだから、ホール自体 の音の響きも素晴らしいのですが、そこへ、佳織さんの確かな腕による、天上の音楽 とでも言うべき音楽が響き渡ると、もう、最高!の気分ですね。もっとも、音響がい い分、ギターの弦の「きゅ」という音もはっきりと聴こえてしまうのですが、それは 気にすることではありますまい。むしろ、その音があるからこそ、生身の人間が、生 で演奏をしているのだという、温もりのようなものが感じられると思うのです。そ、 今日の演奏会も、佳織さんの温もりたっぷり、の演奏会なのです…

 お次は、ロドリーゴの作品が並びます。「小麦畑で」は、これまでの2公演でのア ンコールでも演奏された曲。小麦の穂が風にさわさわと鳴っているかのような感じの する曲ですね。その辺りの描写も素敵ですが、それ以上に印象的なのは、中間部で出 て来るモノローグのような旋律。何かを独白するかのようなその旋律を、佳織さんの ギターがまた、はっきりと何かを語るかのように歌っていくのです。どこか寂し気 に、語る様は、まさに抱き締めてあげたい!というようなものです。(こらこら…)

 「古風なティエント」は、聴いて分かったのですが、神戸の時のアンコールでされ た曲ですね。これもまた、さらさらと清水が流れていくような雰囲気の曲ですね。そ して、「祈りと踊り」、既に前の2公演でも聴いている曲ですから、もう、お馴染み の曲です。何度聴いても、いいですねぇ。

 そして、今回はテデスコのソナタが前半の最後に来ます。前の2公演では、一番ラ ストにあったのですが、その曲をどうして、真ん中へ持ってきたのかしら… 演奏も 前に比べると、何か、焦ってはるような感じに聴こえたのですが、気のせいでしょう か…

 後半が始まると、おぉっ、佳織さん、衣装を初めて替えましたね。これまではずっ と(神戸・奈良も含めて)、赤い衣装で、南国的は雰囲気を出してはったのですが、 ここになって、紺色の衣装(これはワンピースというのかしら…)にお召し替えで す。清楚、という言葉がまさにぴったりと合うようなそのお姿がまた、印象的です ね。(^^;) この衣装が、武満の曲の雰囲気にもぴたりと合っていて、その純な美しさ というものがうまく表現されていたように思います。

 そして、ヨークの曲。「サンバースト」は奈良公演でのアンコールでもされてまし たね。これも綺麗な曲ですが、印象的なのは、その次の「ララバイ」です。名前のと おり、実にしっとりとした感じの曲で、これを佳織さんのギターがまた、実に切々と した感じで歌い上げていくのです。その心に浸み入るような深い音色には、ほろりと きました。

 最後は、ポンセのソナチネ。やはり、第3楽章の祭りの雰囲気の盛り上がりが素敵 ですね。その力強い演奏は、前の2公演とも変わりなく、素晴らしい演奏でした。

 アンコールは、「蜂スズメ」という、鳥が飛ぶ様を表した曲と、バリオスの「森に 夢みる」。この「森に夢みる」のトレモロによるメロディーが、ホールいっぱいに静 々と響き渡ると、もう、この上なく幸せな感じになってきます。今日も最後まで堪能 できた演奏会でした。