らいぶらりぃ
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ウィーンの森少年合唱団

●日 時1998年7月25日(土)16時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ルートヴィヒ・ルッサー指揮ウィーンの森少年合唱団
●曲 目<第1部>神を讃えて
ヘンデル/ユダヤ万歳、幸多き国ユダヤ
シュターデン/それは素晴らしい
メンデルスゾーン/しもべらよ 主をほめまつれ
<第2部>世界の音楽
シューベルト/さすらい
モーツァルト/小さな紡ぎ娘
       お休み、おまえはほんとのおばかさん
シューベルト/菩提樹
ヨハン・シュトラウスII/ポルカ・シュネル「狩り」
ヨゼフ・シュトラウス/ワルツ「天体の音楽」
ヨハン・シュトラウスII/ポルカ「雷明と電光」
<第3部>オペレッタ「ヘンデルとグレーテル」
フンパーディング/「ヘンデルとグレーテル」

 4月にウィーン少年合唱団を聴きに行きましたが、今回は、そのライバルとも言う べき(?)ウィーンの森少年合唱団であります。ウィーン少年合唱団がオペレッタの 「カリフの鵞鳥」を演じていたのに対し、こちらもやはり、オペラ「ヘンゼルとグ レーテル」、何か、意識してはるのでしょうか…(^^;)

 比較してみて、どうこう言うつもりはないのですが、ウィーンの森少年合唱団も、 今回、初めて聴いたのですが、なかなかの力のある合唱団だと思います。ウィーン少 年合唱団のような、まさに「洗練された」響きというのとは、ちょっと違うように感 じましたが、それでも、1人1人が、実に伸びやかに、自然体で歌っているのが、素 敵です。

 第1部では、多少の固さも見られたものの、第2部に入ると、すっかり、本領を発 揮していましたね。小品を次から次へと、自分達の歌を聴いて聴いて、っていう感じ で披露していく、サービス精神みたいなものも感じられます。1曲ずつ、団員が交替 で、「ツギハ、○○デス。」と日本語で紹介していくというのも、ほんと、大変よく できました、と花丸をあげたくなるような(?)演出です。特に印象的だったのは、 ソロの曲だったのですが、「小さな紡ぎ娘」。無理のない、自然なきれいな発声で、 会場中にそのやさしい響きが広がったのでした。彼は、将来有望、でしょうね…

 (なお、昨日(7/24)に訃報が知らされた、バリトン歌手のヘルマン・プライ さん。彼の歌を昨年の年末に聴いたのですが、その時の曲が「冬の旅」。その中に 入っている「菩提樹」が、今日のプログラムにも入っているのですが、これを聴く と、つい、その時のプライさんの声を思い出してしまうのでした… ご冥福をお祈り いたします。)

 と、話を戻しまして、いよいよ、お待ちかねの「ヘンゼルとグレーテル」です。こ のオペラ自体も、昨年のクリスマスに、神戸オペラ協会の公演で見たのですが、それ と比べちゃいけませんね。(^^;) でも、子供達が一生懸命にそれぞれの役を演じてい くのが、見ていて、けなげで可愛らしいですね。台詞の中にところどころ、日本語を 交えながら、私達へのウケも取りにいくのが、また泣かせますね。ドイツ語の台詞の 中に日本語が入ってくることによる、演技の多少の不自然さは、この際、仕方ないで しょう。台詞と所作・演技を覚えるだけでも大変なのに、その上に日本語まで覚えて いるのだから、そのこと自体を評価したいですね。でも、一番、自然体で役を演じて いたのは、おかあさん役の子でしょうか。「タダイマ〜」と、家に帰ってくる、最初 の台詞からして、肝っ玉かあさん、といった感じで、例えて言うなら、吉本新喜劇の 桑原さんでしょうかねぇ。(^^;)おとうさんとのやりとりも、どこかおかしくて、楽 しめました。また、3幕で登場の魔女役の子も、健闘してましたね。「い〜っ、 ひっ、ひっ」という笑い方が何ともイイ感じを出してます。(^^;) 全3幕のオペラを 55分程で上演するという、短縮版のためか、眠りの精の現れるところとか、魔女と のやりとりのところとか、もう少し見たいなと思う部分もあったのですが、それで も、この作品の持つファンタジックな世界というものは、十分、表現できていたので はないかと思います。特に2幕の最後の、天使達がヘンゼルとグレーテルを囲むシー ンは、その幻想的な感じというものもよく出ていたのではないでしょうか。素敵な舞 台だったと思います。

 こういう子供達の素直で、熱心な声を聴くと、こちらもまた子供の頃の素直な気持 ちに戻って、その演奏を楽しむことができるから、いいですよね。しかも、今回の彼 等は、ウィーン少年合唱団と違って、寄宿舎生活をしてないので、その分だけ、自由 な気風のようなものが、その演奏からも感じられます。そういう伸びやかさが、ま た、私達を楽しませてくれるのでしょうね。