らいぶらりぃ
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朝日名曲コンサート・スペシャル

近藤嘉宏〜ショパンとベートーヴェンの夕べ

●日 時1998年7月26日(日)18時開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演ピアノ:近藤嘉宏
●曲 目ショパン/ノクターン第8番変ニ長調Op.27-2
          第13番ハ短調Op.48-1
     エチュードホ長調Op.10-3「別れの曲」
          変ト長調Op.10-5「黒鍵」
          ハ短調Op.10-12「革命」
     ピアノ・ソナタ第2番変ロ長調Op.35「葬送」
ブラームス/間奏曲イ長調Op.118-2
      バラードト短調Op.118-3
      ラプソディー変ホ長調Op.119-4
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調Op.57「熱情」
(アンコール)
ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
ロミオとジュリエット

 4月に続きまして、すっかり、アイドル化してはる(?)かのような近藤さんのリ サイタルに行ってきました。と言って、私は別に彼の追っ掛けをしているわけではあ りません。(^^;) ただ、同年代としまして、やはり力のある方というものは、気にな りますな。(^^;)

 さて、4月の時もブラームスやベートーヴェン、ショパンといったところの曲を弾 いてはりましたが、今回も同様です。ショパンにブラームスを経て、ベートーヴェン となります。そして、彼のその深いタッチと豊かな響きは、やはり、あの時のままで す。これが彼の持ち味なのですよね、深ぁく、やさしい響きを作り出していく、とい うのが。

 ただ、4月の時は、新大阪の音楽の友ホールという、小さなホールで、間近にその 演奏を聴いていたためか、結構、力強く聴こえたのですが、今回は、大っきな舞台、 フェスティバルホールでのリサイタルです。力強い、と言うよりは、明朗で滑らかな 音が流れていく、という印象の方が強いです。そういう響きが生かされていたのが、 やはり、ショパンです。鍵盤の上を、さぁっと音が駆け抜けていく、そんな感じで、 「革命」などにしても、そういう、さらりとした爽快感のようなものが感じられまし た。

 けど、私が今回、一番気に入ったのは、ブラームスです。間奏曲なんか、ほんとに 素晴らしい演奏だったと言えましょう。そういう透明感のあるさらりとした響きの中 に、ブラームスのロマンテッィクな心情というものが、うまく表現してあったとよう に思います。

 逆に、ベートーヴェンが、ちょっと私の好みとは違うかしらん、という気がしま す。「熱情」は、先月に、小川典子さんの演奏で聴いていて、その彼女のパワフルな 演奏がすっかり、気に入ってしまっていたので、そういう耳からすると、近藤さんの ピアノは、この曲をするには、音が透明すぎるような感じに聴こえるのです。その透 明感が、逆に、第2楽章では、よく生かされていて、この上なく美しい音楽に仕立て ていたと思うのですが、第1楽章では、別に、音が軽いというわけではないのです が、私好みのベートーヴェンの、重くどっしりとした感じ、の音とは違うのです。第 3楽章は、さすがに、ずっしりとした感じの、堂々たる演奏であっただけに、最初の 楽章の印象が、どうも、あまりよくないです… ま、そういうふうに聴こえたという のも、また別の新鮮さというものを感じられた、ということでもあるのですが…

 けれど、これらの曲をさらりと弾いてのけて、しかも、フェスティバルホールいっ ぱいのお客さんを集めて(それも昼夜の2回公演の両方で!)、と、近藤さん、ただ 者ではありませんね。秋以降も大阪の方でもまたリサイタルをされるようですが、そ ちらも多分、盛り上がることでしょう。