らいぶらりぃ
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真夏に響くドナウの歌声
〜ハンガリー少年少女合唱団

●日 時1998年8月4日(火)19時開演
●会 場伊丹アイフォニックホール
●出 演ガブリエラ・テース&ラースロ・ネメス指揮ハンガリー少年少女合唱団
ピアノ:ノアニコー・ノヴァーク
●曲 目コダーイ/ナジサロンタの歌
     アヴェ・マリア
     ジュネーヴ詩編150番
     夕べの歌
     踊り歌
     はちみつ
     毛生え薬
     緑の森で
     ジプシーはチーズを食べる
リスト/コンソレーション第3番変二長調(ピアノ・ソロ)
デチェーニ/子守歌
カライ/踊り歌
(民族舞踏)ハンガリーの縁結び歌
バルトーク/6つのルーマニア舞踏(ピアノ・ソロ)
      「27の2声及び3声の少年叉は女声合唱曲」より
       春/わたしを置いていかないで/家畜のためのまじない歌/放浪/からかい歌
カライ/夕べに歌えば

 昨年のカンテムス合唱団に続き、今年も合唱王国ハンガリーから、合唱団がやって きました。その名もずばり、ハンガリー少年少女合唱団であります。コダーイ以来の 伝統を受け継ぎ、世界的にも定評のある合唱団で、そのハンガリーものが並ぶプログ ラムを見ただけでも、期待に胸が鳴ります。

 演奏会は、前半はコダーイの曲を、後半はバルトークの曲を中心に展開していきま す。で、最初はコダーイの作品群。コダーイの合唱曲も、まさに1年ぶり(カンテム ス以来ですな。)に聴くのですが、いつ聴いても、奇麗なハーモニーの曲ばかりです ね。大好きな「Esti dal」(夕べの歌)もとっても奇麗でした。何がいいって、アル トがごっつい響いてくるんです。そこいらの女声合唱団(とか、おかあさんコーラス とか…)なんか、目じゃない、ってくらいに、奇麗にまとまった低音が、ごぉっと響 いてくるんです。テノールの音域の音と思われるような低い音まで、ちゃんと鳴らし ているのだから、まさに凄いものです。そうやって土台がかっちりとしている上に 乗ってくるメゾとソプラノが、またとてもクリアな響きで、実に美しいんです。この 見事なハーモニーで聴くコダーイの作品は、まさにこれぞ、コダーイの音楽の神髄と も言うべきハーモニーの美しさを堪能させてくれます。それに、この合唱団の素晴ら しいのは、そのハーモニーに加えて、ダイナミクスの幅の広いことにもあるでしょ う。ppは本当に何も聴こえないくらいに小さく、ffは会場中にかぁんと鳴り響く くらいに大きくしているんです。そういうダイナミクスレンジでつけられる、曲の表 情というものが、また、とても生き生きとしたもので、素敵です。「踊り歌」や「ジ プシーはチーズを食べる」での盛り上がりは最高!でしたねぇ。

 そして、一番の見どころは、後半最初に繰り広げられた、民族舞踏です。縁結びの 歌、ということで、日本で言えば、歌垣のようなものでしょうか… 華やかな民族衣 装を着た、大勢の少女達が輪を作って踊っているところへ、数少ない少年団員3名が 入ってきて、やがて、カップルを作っていく、というような流れですね。余り派手な 所作等はありませんが、タップでリズムを刻みながら、場を盛り上げていき、最後に は、威勢のいい掛け声も出てきます。結ばれた縁を祝福しているのでしょうね。多少 の照れみたいなものもあるように見えましたが、それでも熱心に演じているのを見て いて、こちらも何か幸せな気分になるのでした…

 後半のバルトークは、いずれも民謡をもとにして作られた曲で、最初にその民謡を 歌い、その次にバルトークの作った曲を歌うというスタイルで演奏されていきます。 「家畜のためのまじない歌」が印象に残っています。もとの民謡のテーマもなかなか 心に残るようなものですし、それをバルトークが料理すると、一層、その魅力が増す ということがはっきりと分かるような曲ですね。また、「からかい歌」のリズミック な動きも素敵でした。

 盛り上がった上で、最後は、カライの「夕べの歌」。団員達は、整列していたのを 崩して、舞台上あちこちに腰を降ろしたり、膝立ちしたり、各々くつろいだ姿勢にな ります。照明も落とされて、指揮のガブリエラさんも客席の方に降りてきて指揮をす るという演出、その静かな曲を表現するには、まさにうってつけのものですね。まさ に大地に日が沈む様を表しているかのようです。が、曲は、やがて変わり、明るく、 次第に盛り上がってきます。ぱぁっと光がさすような感じに変わって、曲は終わるの でしが。カライの曲は初めて聴いたのですが、素敵な曲ですね。今年は他の演奏会 で、カライの曲を聴く予定なので、その勉強にもなりました。(^^;)

 ところで、途中に演奏されたピアノ・ソロ。ピアニストのアニコーさんって、プロ グラムを見たら、私と同じ生年月日なんですね。何か、妙に親近感をもって聴いてま した。(^^;) バルトークの演奏は、さすが、地元ということもあるのか、力強く、素 敵な演奏だったと思います。私もこれだけ弾けたらいいのですけどねぇ…(^^;;

 天使の声、なんて月並みなことは言いませんが(実際、それとはちょっと違うとも 思いますし)、その澄んだ声の響きに、しばし夏の暑さを忘れたひとときでした。