らいぶらりぃ
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サンテレビ開局30周年記念

ロマンティックサマーコンサート

●日 時1998年8月23日(日)14時開演
●会 場新神戸オリエンタル劇場
●出 演ピアノ:近藤嘉宏
中国古箏:伍芳
テノール:畑儀文
●曲 目ショパン/ノクターン第8番変ニ長調Op.27-2(近藤)
ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女(近藤)
シューベルト/セレナーデ(畑&近藤)
       ます(畑&近藤)
笵上娥/雪山春暁(伍)
作曲者不明/覇王卸甲(伍)
山田耕筰(西邑由記子編)/赤とんぼファンタジー(畑&伍)
王昌元/戦台風(伍)
ショパン/エチュードホ長調Op.10-3「別れの曲」(近藤)
     エチュードハ短調Op.10-12「革命」(近藤)
ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」より 人知れぬ夜(畑&近藤)
プッチーニ/歌劇「トスカ」より 星は光りぬ(畑&近藤)
ベートーヴェン/ピアノソナタ第14番「月光」(近藤)
(アンコール)
ショパン/ワルツ第7番嬰ハ短調(近藤)
中田喜直(西邑由記子編)/夏の思い出(畑+近藤+伍)

 ピアノとテノールに加えて、古箏…? という不思議な(?)取り合せによる演奏 会です。

 ピアノの近藤さんは、今年になって既に2回、聴かせていただいてます。別に追っ かけをしているつもりはないのですが(^^;)、今日は3回目の見参。相変わらず、深い タッチから出されるやさしい響きが素敵ですね。例によって、今日もピアノは、 ニューヨーク・ベーゼンドルファーを持ち込んできたとのこと。自分の作る音に対す る思い入れが、ほんと、深い方なんですね。だからこそ、というか、演奏も決して手 抜きなどということはなく(選曲は前と似たようなものばかりですが…)、7月の フェスティバルホールでのリサイタルの時と同様、気迫のある演奏でした。(特に 「月光」は、前の時の「熱情」と同様、素晴らしかった…)

 そして、その近藤さんが、何と伴奏役に挑むのが、今回の目玉のひとつです。畑さ んはお馴染みの、シューベルト歌いとして実力のあるテノールですね。彼の歌を、近 藤さんのピアノがどう、支えるのか… ということに興味がわきます。…うん、なか なか素敵に伴奏の役もこなしてはるじゃないですか。たまに、声よりも前に出てくる ようなところもなきにしもあらずでしたが、畑さんの作るリートの世界を、うまく支 えていたと思います。それに、後半の「星は光りぬ」でのドラマティックな作りと 言ったら! もちろん、畑さんの声がたっぷりと盛り上げてくるのですが、それにぴ たりと息を合わせて、近藤さんのピアノも盛り上がってくるから、素敵です。今日が 初めての顔合わせ、ということだったらしいですが、ほんと、そうとは感じさせない ような、息の合った演奏だったと思います。

 さて、そのお2人に挟まれるような形で、中国古箏の伍芳さんの登場です。彼女の お名前とお顔は、存じ上げてはいたのですが、その演奏を生で聴くのは、今回が初め てです。中国古箏という楽器は、絃が25本あるんですね。多くの絃を、両方の手を 巧みに使い分けて演奏していくお姿が、いいですねぇ。右手で絃をはじいて、左手で 絃を押さえたりしていく、というのが、よくある普通の形のようですが、そうでな く、右手でも左手でも絃をはじいていくのです。「両方の手を使うことが老化防止に なるのです」なんて、仰ってましたけど、その技術は、ほんと最高級のものなので しょう。古箏の曲は3曲、演奏されましたけど、どれも、とても素敵な曲ですね。 「雪山春曉」は、まさに雪が解け、その雪解けの水がちろちろと流れ出し、やがて沢 になり、川となって流れていく、さぁっと光りがさしてくると、やがて草木が芽吹 き、花が咲き出し、鳥達は歌い、生の喜びを歌い上げる、といった光景がありありと 目の前に浮かんでくるような曲です。「覇王卸甲」は、劉邦と項羽の合戦の場面、例 の四面楚歌の場面を歌った曲です。激しいまでの合戦、そして項羽の敗北〜自刃とつ ながっていく悲劇を歌っていて、その表情が劇的に変化していくのが、印象的です。 「戦台風」は、名前のとおり、台風に人間が挑んでいく姿を表した曲です。これもま た激しく吹きすさぶ嵐の様子をよく表現しており、その迫力にはただ圧倒されるばか りです。これだけの曲を、古箏1本で演奏できるというのも、なかなか、素晴らしい ものですねぇ。ハープにも似た、その響きは実に表情豊かで、日本の琴などとも違っ た味わいのあるものです。一度、聴いたら決して忘れられないような音色に、すっか り魅せられてしまいました。(^^;

 そして、そういう古箏を伴奏にして、畑さんの歌う「赤とんぼ」、言葉をしっかり と、丁寧に扱いながら歌い上げていく畑さんの声を、日本の秋の空を舞う赤とんぼそ のものの姿のごとく、ひらひらとした感じで、支えていく古箏の音色が、素敵です ねぇ。こんなアレンジもできるんだぁ、と感心しながら聴いてました。そして、同様 のことは、一番最後のアンコールで演奏された、「夏の思い出」にも言えます。テ ノール+古箏+ピアノ、の3人が一緒に演奏するのです。ピアノと古箏の音って、一 緒に聴こえてきても、あまり違和感を感じないものなんですね。古箏の音色そのもの が、もともとハープの音色に似ているからなのかもしれませんが、お互いにその響き を補完しあうかのように、綺麗に聴こえてくるものです。これには、ほんと、感心し ました。新しい音楽とでも言うべきものを目のあたりにしたような気がします。

 …と私にとりましては、中国古箏という、新しい楽器の世界に触れることができ て、とても有意義な演奏会でした。伍芳さんのコンサートは、来月にも別所にてある ようですから、行けたら、行くことにしましょう。(^^;)