らいぶらりぃ
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音楽で綴る万葉集「明日香風」コンサート

                                                                                               
●日 時1998年9月9日(水)19時開演
●会 場大阪倶楽部4Fホール
●出 演ソプラノ:歌枕直美
シンセサイザー:綱澤僚
パーカッション:神山啓子
●曲 目明日香風(志貴皇子/綱澤僚)
千曲の恋(東歌/綱澤僚)
朝川渡る(但馬皇子・穂積皇子/綱澤僚)
来む来む(坂上郎女/寺田亜弥子)
石見の海(柿本人麻呂/神山啓子)
思ひ草(よみ人知らず/神山啓子
明日香慕情(山部赤人/綱澤僚)
さ蕨萌ゆ(志貴皇子/須賀寿江)
つくよみ(湯原王/綱澤僚)
近江の海(柿本人朝呂/綱澤僚)
高円の秋萩(笠金村/綱澤僚)
つらつら椿(坂門人足、春日蔵首老/須賀寿江)
印南野の月(よみ人知らず/綱澤僚)
三輪山(額田王/綱澤僚)
船出の歌(額田王/綱澤僚)
(アンコール)
天の足夜を(よみ人知らず/綱澤僚)

 万葉集の和歌に曲をつけて歌う、ということで話題になっている歌枕さんのコン サートです。私も、どんなものなんだろう、と初めてその歌を聴きに行ってきまし た。

 曲のテキストはどれも、もちろん、万葉集から取られているのですが、それらの言 葉の伴奏には、シンセサイザーとパーカッションが使われています。だから、フル オーケストラをバックに歌ってはるかのような印象がするのです。で、この曲が、ま た、実にいい感じなのです。ストリングスの音がさぁ〜っと流れていくようなところ など、まさに万葉の風が吹き抜けていくかのような感じで、いにしえの都の情緒とい うものが、偲ばれるような気がします。久石譲さんや、姫神さん、或いは宗次郎さん などの曲を彷佛とさせるようなところもあるのですが、それが逆に、どこか懐かしい ような感じをはっきりと出しているのだとも思います。

 一番印象に残っているのは、「明日香風」や「千曲の恋」、「思ひ草」、「印南野 の月」などでしょうか。どの詩も、割と短いのですが、短い中に、たっぷりと歌い込 まれていて、言葉も割とはっきりと聞き取れますし、いいなぁ、と思うのです。さす がに、「明日香風」はテーマ曲のような感じで、よく歌い込まれていたと思います。 同じテーマを何回も繰り返していくので、すっかり、覚えてしましました。(^^;

 それに、最後の2曲、額田王の詩を歌った曲も素敵です。特に「船出の歌」なんか は、もう、合唱(の音をシンセで出している)まで入ってきて、ほんまのフルオケで 演奏してほしい、と思うくらいの大掛かりな曲です。たった2行の詩なのですが、そ れで、ここまで盛り上がる?と思うくらいなのですが、それでこそ、額田王や天武天 皇(大海人皇子)、天智天皇などをめぐる、万葉の大ロマンスを、豪華絢爛に描いて いるとも言えます。なかなか、すごい曲です。

 ところで、歌枕さんの歌なのですが、文句を言うつもりはないのですが、先週にサ イトウキネンなんていう、素晴らしい舞台を見て(聴いて)きたせいか、結構、私の 耳が肥えてしまっていて、所々、ん?というところもあったように思います。シンセ に対抗する上で、PAを通すこと自体は悪いとは思わないのですが、逆に、変にそれ にたよりすぎてないか、という感じがするのです。高音になるところなんか、どうし ても下からぐぅ〜っと探っていっていて、音がその音に達していないような部分も あったように思いますし、高音を伸ばしているうちに、段々とピッチが下がってくる ような部分もあったように思いますし、ちょっと…という感じは拭えませんでした。 こういう曲なんだ、と割り切ってしまうこともできるとは思うのですが、どうも、個 人的には、私の耳がそういうのを許さないのです…

 でも、こういう、日本古来の文学である万葉集に曲をつけて歌うということ自体 は、とても素敵なことだと思いますし、曲そのものも、とても素晴らしいものですか ら、ぜひ、これからも活躍していってほしい、と思います。