らいぶらりぃ
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大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団特別演奏会

〜邦人合唱曲シリーズVol.4〜

●日 時1998年9月20日(日)18時30分開演
●会 場京都府立府民ホール「アルティ」
●出 演当間修一指揮大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団
ピアノ:沖田明子/木下亜子
●曲 目三善晃(谷川俊太郎詩)/クレーの絵本第1集
林光(茨木のり子他詩)/長くて短い六つの歌
木下牧子(大岡信詩)/方舟
鈴木憲夫(宮澤賢治詩)/雨ニモマケズ
(アンコール)
三善晃/地球へのバラード より ピクニック
嘉納昌吉/花

 久しぶりのシュッツ合唱団、今回は年に1回の邦人曲ばかりのプログラムです。聴 いたことのあるような曲ばかりが並んでいて、どこか懐かしいような感じで聴いてい ました。

 「クレーの絵本」は、三善さんの(合唱曲の)代表作の一つですね。なかなか言葉 もはっきりとしゃべっていて(この谷川さんの詩がまた、いいんですよね)、その演 奏には好感が持てます。ただ、聴いていて、これってこういう曲だったけ…?という 気もするのです。何かが足りないような感じがするのですが… ひょっとして、強弱 の区別があんまり出ていない? という気もするのですが、気のせいかしらん…

 「長くて短い…」は、女声合唱ですね。女声だけの奇麗なハーモニーがまた、素敵 です。ただ、どうにも私の耳に、何かしっくりとこない部分がある… これはつま り、前に松本でのサイトウキネンで、あの美しい女声ばかりのオペラを見てきた、そ のことによって私の耳が肥えすぎてしまっているから、なのでしょう。もっと透明感 みたいなものがあっても…という気もするのですが、それが果たしてこの曲に合うか どうかは、ちょっと疑問ではあります…(←何か無責任だなぁ…) でも、歌ってい る皆さんの表情も素敵でしたし、言葉もはっきりしていましたし、なかなかの演奏 だったと思います。

 「方舟」は、私達も昔、歌ったことがある曲。それだけにチェックも厳しくなって しまうのですが…(^^; 細かな所はおいといて、実に素晴らしい演奏だったと思いま す。この曲は他の団体の演奏等でも何度も聴いていますが、それらの中でも最高!の 演奏ではなかったかという気がします。私達が歌っていた時の指揮者の指示なんかを 思い出しながら聴いていたのですが、それらが、見事にぴたっと合致していて、その 通りに演奏してはるのですね。当時の指揮者さんは、こういうふうに歌ってほしかっ てんねんなぁ、等と反省モードに浸りながらも(--;)、その迫力のある演奏に聴き入り ます。そ、特に終曲なんか、テンポもたっぷりととっていて、実に堂々としたもので す。さすが、パワーがありますね。ただ、気になったのは、ピアノ。合唱の方が実に ドラマティックなまでに演奏しているのに、何故かピアノは、単に音を出しているだ け、という印象が拭えません。ピアノだけになって音楽をつないでいくような部分が いくつもあると思うのですが、そういう部分でも、合唱の作り出している音楽を、前 へ前へと進めていくような感じでなく、何気なく弾いているだけ、というように聴こ えてしまってなりません。合唱が素晴らしかっただけに、その点が残念です。

 「雨ニモマケズ」、そ、今回はこれが聴きたかったのです。鈴木憲夫作品って、や はり日本語の響きを大事にしながらも、独特の美しさというものを持っていますよ ね。その美しさが、演奏でもよく表現されていたと思います。気になるのは、pの部 分。そうそう、いつも思うのですが、シュッツ合唱団さんって、パワーはあるのです が、pとかppの部分の表現というものがちょっと苦手なのかしらん… 最前からの 不満感みたいなものは、ここにあるのですね。皆さん、fやffの部分では、全員一 致団結して(?)、わぁーっと響いてくるのですが、pになると、その響きがちょっ とバラけて聴こえてしまうんですね。せっかく素晴らしい声を持ってはるのに… そ の点がとても残念に思われます。でも、そのことを度外視してしまえば、この宮澤賢 治の詩による曲、元の詩の言葉を実に大事にして歌っていて、「東ニ___アレバ… (中略)ソウイウモノニワタシハナリタイ」(で合ってましたっけ? ちょっとうろ 覚えです…)と歌い上げる部分は、見事なまでに説得力があって、じぃ〜んときまし た。いや、素敵な演奏でした。

 …と、これだけの演奏をしておいて、アンコールは何と、まさか!の「地球へのバ ラード」から終曲! あれだけ歌っておいて、こんなん、歌うかぁ?と言いたくもな るんですが… やっぱり、皆さん、パワーがあるんですねぇ。(@@;) そして、最後は 「花」。しっとりとした曲を、大人数のパワーでたっぷりと歌い上げていて、「泣き なさぁ〜い」ってサビの部分では思わず、ほんまに泣きそうになってしまいました。 (^^;

 たまには、こういう懐かしい感じの、邦人合唱曲ばかりの演奏会というのもいいも んですね。(^^)