らいぶらりぃ
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スウェーデン放送合唱団

●日 時1998年9月30日(木)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演トヌ・カリユステ指揮スウェーデン放送合唱団
●曲 目バッハ/聖霊はわれらの弱きを助けたもうBWV.226
ブラームス/2つのモテットOp.74
バッハ/主に向かって新しい歌をうたえBWV.225
ヴィカンデル/早春の夕べ
ステンハンマー/3つの合唱曲
         9月/後宮の庭にて/私に天使が訪れたなら
オヤ/つむぎ歌
プーランク/カンタータ「人の顔」
(アンコール)
さくらさくら
スウェーデン民謡/輪になって踊る乙女たち

 世界にその名を知られているスウェーデン放送合唱団、今回のプログラムの中に は、個人的に思い入れのある曲が2つあります。即ち、ブラームスの「2つのモテッ ト」は、私達が大学の合唱団に入る、その前のに先輩方が演奏した曲であり、また、 プーランクの「人間の顔」は、私達が卒業してから5年目に、後輩達が演奏した曲な のです。歌いたい〜と思いながらも、自分は歌うことのなかった曲だけに、それらが プログラムの中に入っていると、何か、それだけで嬉しくなってきます。

 さて、そのブラームス、1曲目の「Warum?」という問いかけが、とても印象的に響 いてきます。もちろん、その後の暗いフーガも、淡々としながらも重みがあって、素 敵です。この合唱団、各声部の響きが見事に1つにまとまっていて、とてもクリアで シャープなんですね。1人1人の技量も高いのでしょうが、それらが見事にアンサン ブルとしてまとまっているのが、素晴らしいです。重々しく進行していく中で、何回 か繰り返される「Warum?」も、それぞれで表情がはっきりと変わっているのが、ま た、さすがですね。やがて、曲は明るい感じに転じていき、最後はバッハのような雰 囲気の漂うフーガで終結していきます。とても力強く、ハリのある響きに、じぃ〜ん としてしまいます。2曲目も同様に素晴らしい演奏ですが、聴きようによっては、 ちょっとがさがさした感じにも聴こえるかしらん…とも思います。それでも、この曲 に表れている、ブラームスらしい重厚さというか、渋さというか、実にうまく表現さ れていたと思います。

 一方のプーランク、プーランクと言えば、今月頭に聴いてきたサイトウキネンが思 い出されますが(^^;、この「人間の顔」も、あの「カルメル会の修道女の対話」と並 べてもおかしくない、プーランクの代表作と言えましょう。そこには、人間が本来 持っているはずの自由というものが、高らかに歌われており、それは、あらゆる苦悩 を乗り越えて、最後には精神的な勝利=自由を得るという、あのオペラとも相通じる ものなのではないでしょうか… そんなことを思いながら聴いていると、この曲の 持っているドラマティックな面というものを、改めて思い知らされます。もちろん、 演奏も素晴らしいのです。不協和音が鳴り響くところも、その不協和音がばっちりと きまっていて、おぉ!と感心してしまいます。ブラームス以上に力強く、ハリがあっ て、特にアルトの声がはっきりと聴こえてくるのは、ちょっと感動ものでした。一番 重要な曲である、終曲、もうちょっとたっぷりめに歌ってもいいようにも思います が、それでも、じわじわっとくる、盛り上がりには、ぞくっとします。素晴らしい演 奏でした。

 けれど、一番感動したのは、実は、プーランクの前に歌われた、スウェーデンやエ ストニアの曲だったりします。(^^; 特に、ヴィカンデルの「早春の夕べ」の何と美 しいこと! 北欧の冷たい空気に、次第に春の温かさが伝わってきて、やがて辺りが ぱぁっと春めいてくる、といった光景が目に浮かぶような曲です。その最初のぴぃ〜 んとした緊張感が、たまらなく素敵でした。また、ステンハンマーの曲もどれも素敵 ですね。特に2つ目の「後宮の庭にて」の幻想的な雰囲気が、とても気に入りまし た。一方、オヤはエストニアの作曲家、エストニアというと、トルミスくらいしか知 らなかった私にとりましては、初めて聴く曲です。「つむぎ歌」は、軽快で、楽しそ うな曲ですね。

 そうそう、アンコールの「さくらさくら」のアレンジが、北欧風な感じに聴こえた のですが、これがまた、とっても印象的でした。北欧の雪に閉ざされた世界、冷んや りとした空気の中、そういう水墨画的な風景に、ぱぁっと花を咲かせ、彩りを鮮やか につけていく、さくらの花、そういう情緒が、感じられるアレンジでした。やっぱ り、北欧(風)って、いいなぁ、と改めて思うのでした…