らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

大阪センチュリー交響楽団特別演奏会

●日 時1998年10月8日(木)19時開演
●会 場いずみホール
●出 演高関健指揮大阪センチュリー交響楽団
アコーディオン:御喜美江
●曲 目ストラヴィンスキー/組曲第1番&第2番
細川俊夫/うつろひ・なぎ
モリク/アコーディオン協奏曲ト短調
ハイドン/交響曲第45番嬰ヘ短調「告別」

 今回のセンチュリーの特別演奏会は、アコーディオンの御喜美江さんをお迎えして のもの。私も一応、アコーディオンを練習中の身としましても、ぜひとも聴いてみた いものなのでした。

 で、美江さんの出番は、モリクの、名前もずばり、アコーディオン協奏曲。切れ目 なしに続く3楽章編成の曲ですね。急−緩−急といった形で、特に2楽章の部分で の、ゆったりとした美しいテーマが、とってもきれいです。甘美的に歌い上げる美江 さんの姿にしばし、見とれているのでした…(^^; やがて、そこから引き続いて、3 楽章部分へ入ると、曲調は一転して、情熱的なものが込み上げてくるような風になり ます。そうそう、これこそ、アコーディオンの魅力なのよ、と言わんばかりに、美江 さんのアコーディオンも、情熱たっぷりに、どこかラテン系な感じもする(と私は 思ったんです…)テーマを歌っていきます。右手の細かなパッセージ、それに合せて 細かに和音を鳴らす左手のベース、日本を代表するアコーディオニストの妙技を間近 に拝見することができて、とっても幸せです。こんなふうに弾けたら、ほんと、いい ですねぇ…(百年早い、って言われそうですが。)

 けれど、もう1曲、美江さんの出番はあります。前半の細川さんの曲がそうです。 いかにも、いわゆる現代曲という雰囲気たっぷりの曲ですが、でも、なかなか面白い 曲でもあります。舞台の上には左右に分かれた、2群の弦楽オーケストラがおり、そ の前にアコーディオンが配置されます。そして、何と、客席後方の左右にもそれぞ れ、弦楽の小アンサンブルが配置されるのです。おぉっ、これは楽しそう、と思って いると、静かに曲が始まっていきます。すぅっと空気の中に溶け込んでいきそうなご く小さく細い音、ぴぃんと張り詰めたその緊張感から、アコーディオンもすぅっと 入ってきて、より緊張感を高めます。そうそう、このアコーディオンですが、実は原 曲では、笙が使われているのです。それを、今回は、アコーディオンでやってしまお うという、世界初の試みなのです。何故、アコーディオンなのか、というと、即ち、 アコーディオンの祖先が笙だから、なのです。中国で生まれた笙は、もちろん、日本 にも伝わってきて、雅楽の発展の一役を担うことになりますが、一方で、西洋へも伝 わっていったのです。そして、笙に使われているリード、この部分を利用して、作ら れたのが、アコーディオンなのです。もちろん、今の形になるまでは様々な機種が作 られては改良されていったのです。そういう歴史的背景があるから、笙とアコーディ オンとは親子のようなもので、その音色も、どこか似ているのです。ま、リード楽器 ということで、リード・オルガンやオーボエ等とも似ているとも感じられますが… (^^; だから、この曲のアコーディオンも、もともとは笙なんだ、と思って聴いてい ても、全く違和感を覚えません。むしろ、初めからアコーディオンのために作られた のは、と思えるほどです。不思議な和音を、わんわんと響かせながら、まさにその響 きが「うつろひ」、舞台と客席の弦楽との橋渡しのような役割をしているのです。神 秘的・幻想的なこの曲は、中国語で言う「気」がうつろっていく様を表現しようとし たものだそうですが、まさに、大気の中を魂がうつろっているような感じのする、不 思議で美しい曲でした。

 と、アコーディオンの魅力を堪能して、最後は何故か、ハイドン。(^^; 舞台転換 もなかなか大変ですねぇ。しかも、チェンバロは高関さんご自身が弾かれるという、 熱の入れよう。センチュリーの皆さんも、いつものとおり、クリアで安心して聴ける 音を出していて、そのかっちりとまとめられた音楽は、さすがです。最後は、「告 別」の名前のとおり、一人一人、退場していって、最後は、高関さんとコンマスの稲 庭さんに、セカンドのトップ奏者の方のみ。ちょっとしんみりとして、終るのでし た。