らいぶらりぃ
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ケルン放送交響楽団

●日 時1998年10月10日(祝・土)19時開演
●会 場京都コンサートホール
●出 演セミヨン・ビシュコフ指揮ケルン放送交響楽団
ヴァイオリン/樫本大進
●曲 目ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ブラームス/交響曲第4番ホ短調
(アンコール)
ブラームス/ハンガリー舞曲第1番

 樫本さんの演奏を生で聴くのは、昨年4月のロシア国立交響楽団以来です。昨年の 時は、スヴェトラーノフさんの指揮との見事な共演で、その若々しく素晴らしい演奏 を聴かせてくれたのですが、さて、その後、どれだけ成長されたかしらん、というの が、今回のポイントであります。

 題目は、超メジャーなメン・コン。期待通り、というか、期待以上に、素晴らしい 演奏でした。それは、最初の出だしからしてはっきりと分かります。彼なりの若々し い感性で、あのメロディーをたっぷりと歌い上げていこうという姿勢が、そこに見い 出せるのです。音も、前の時よりも更に伸びやかに聴こえてきますし、何より、芯が しっかりしているだけに、その音色は、すぅっと自然に響いてくるんです。特に聴き 応えがあったのは、カデンツァの部分。確かに若々しさもあるのですが、その中に、 メンデルスゾーンのこの曲に正面から向かい合って、自分の音楽として、この曲をど のように弾きたい、というものがはっきりと伝わってくるように思うのです。若くて 上手い、というだけでなく、更にそこから大きくなった彼の姿を見るような気がしま す。それに、2楽章の歌い方もとっても丁寧ですし、また、3楽章も勢いだけになる ことなく、どこか愛らしさみたいなものも含めて表現しているようで、音楽性におい えての成長というものをはっきりと感じることができます。その音楽の内面に入り込 んでいく演奏というものを、確実に進歩させてきているようで、まさにお名前の通 り、大いなる進歩をされたなぁ、と感心します。これからのご活躍も楽しみです。

 …と、大進さんのことはこれくらいにして、肝心のケルン放送響ですが、さすが、 ドイツの名門というだけのことはありますね。素敵な演奏を聴かせてくれます。特に ブラームスときたら、もう、最高!のものでした。ビシュコフさんの指揮は、ブラー ムス自身がおそらく晩年に至るまで胸の中に抱いていたであろう、若き日の情熱とい うものを、そのままに表出するかのようで、とてもロマンティックな演奏であったと 思います。もちろん、その古典的様式の美しさも大事にしてはいると思いますが、私 の耳には、やはり情熱的な演奏だと聴こえました。1楽章や2楽章では、テーマを哀 愁たっぷりに歌い上げ、3楽章で一気に、勝利の賛歌を歌うかのような盛り上がりを 見せ、終楽章では、熱いものがじわじわっとくるような演奏… オーケストラのその 重厚なサウンドも素敵なのですが、それ以上に、ビシュコフさんの作り出す、その音 楽そのものの歌い回し方に、惚れ惚れとします。決して派手にしすぎることなく、そ れでいて、歌うべきところをたっぷりと歌い上げ、全体が、とっても滑らかで自然な 流れに聴こえてくるように思うのです。コテコテのドイツ音楽でっせ、という感じで はなく、コクを出しながら、さらりとした感じをも味わわせてくれる、とでも言うよ うな感じなんですね。素敵な指揮者やなぁ、と感心しました。