らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年10月21日(水)19時開演 |
●会 場 | フェスティバルホール |
●出 演 | 小澤征爾指揮新日本フィルハーモニー交響楽団 |
メゾソプラノ:ナタリー・シュトゥッツマン | |
●曲 目 | マーラー/亡き子をしのぶ歌 |
R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」 |
またまた、朝日新聞社の創刊120周年記念のコンサートです。今回は、小澤さん 指揮の新日本フィル。ソリストは、ソプラノのマクネアーさん…の予定だったのが、 急遽変更となって、私のお気に入りの歌手である、ナタリー・シュトゥッツマンさ ん。会場の貼り紙でこのことを知らされ、思わず、わーい、と叫びそうになってし まったのでした… しかも、そのシュトゥッツマンさんの演目は、マーラーの「亡き 子をしのぶ歌」。またマーラーかよって、感じですが(^^;)、この何とも悲しみに満ち た曲を、あの、シュトゥッツマンさんの声で聴けるのです。とっても期待に胸が踊り ます。そして、演奏はまさに期待通りのもの。子供を失った親の悲しい気持ちを、シュ トゥッツマンさんの、あの深い響きの声が、切々と歌い上げていきます。どの曲にし てみても、その底辺に流れている、マーラーの我が子への想いというようなものを、 これでもかというくらいに悲しみをこめて、歌い上げているのが、素敵です。第1曲 から第5曲へと進むにつれて、その音楽も次第に暗くなっていくようで、親の悲しみ というものが増していくように思うのですが、演奏もまさに、そのとおり。シュ トゥッツマンさんの声も、段々とその響きの中に沈痛さがこもってくるようで、どう してそこまで痛ましげに、表現することができるの? というくらいに情感に満ちた ものです。オケの方も、ぎゅっと凝縮するかのようにまとまっていて、静かな雰囲気 の中に、悲しみがいっぱいこめられていたと思います。余りにも悲しい音楽、その響 きには、思わず、ほろりとしてしまうのでした… シュトゥッツマンさんにすっかり 魅せられてしまった演奏でした。
後半は、予定通りの「英雄の生涯」。この曲自体、久しぶりに聴くのですが、い やぁ、素晴らしい演奏でした。チェロにより導かれる、英雄のテーマ、チューバ等に より導かれる、英雄の敵のテーマ、その上に乗ってくる、木管の批判家達の騒がし さ、いずれも一つ一つの、音を大事にしながら、たっぷりと歌っているのが、はっき りと分かります。けど、最高に美しいのは、やはり、英雄の伴侶のテーマでしょう。 コンマスさんのヴァイオリン・ソロが、また、この美しい部分を、さらに美しく奏で ていくので、たまらないですね。やがて、闘争の部分を経て、英雄の勝利を賛える部 分、堂々とした力強さで、英雄のテーマが高らかに歌われます。また、そこに寄りそ う伴侶のテーマ、英雄の勝利の背景には、やはり、よき伴侶の支え=愛の力があれば こそ、なのね、等と考えてしまいます。(^^;) そして、最後は生涯を振り返りなが ら、堂々と幕を閉じるのでした。
何が素晴らしいと言って、やはり、小澤さんの指揮は、細部に至るまで緻密に音楽 を組み立てていますよね。それが、手兵の新日本フィルだから、余計にくっきりと表 現されてくるわけです。また、緻密でありながら、その音楽は全体としてのまとまり を失うことなく、あくまでも自然に流れるものなんですね。その、小澤さんの魅力と いうものを、今さらながら、改めて感じた演奏会でした。