らいぶらりぃ | |||||
Prev | Next | to the Index |
●日 時 | 1998年10月25日(日)14時30分開演 |
●会 場 | いずみホール |
●出 演 | 本山秀殻指揮京都バッハ合唱団/大阪チェンバーオーケストラ |
ソプラノ:松下悦子 | |
アルト:上辻静子 | |
テノール:畑儀文 | |
バス:三原剛 | |
●曲 目 | バッハ/ロ短調ミサBWV232 |
ロ短調ミサというと、今年の2月にも、神戸バッハ・カンタータ・アンサンブルの 演奏で聴いたのを思い出します。あの時は、かなりの熱演に感動したのですが、さ て、今日は創立10周年を迎えたという京都バッハ合唱団の演奏です。で、さすが、10周年と言うだけあって、やはり、皆さん、かなり、気合が入って いますね。その想いというものは、冒頭の「Kyrie」からして、はっきりと伝わってき ます。声も各パート、実によく出てきていますし、フーガも堅実にまとめられてます し、技術的な面では、むしろ、神戸バッハ以上のものがあると感じられます。が、何 かが足りないような印象が拭えないのです。で、はたと思い当たるのが、オーケスト ラ、なんですね。もちろん、大阪チェンバーオーケストラの皆さんは、関西一円でプ ロ奏者として活躍してはるような方達ですから、技術面において不足があるはずはな いのです。が、オケだけを取り出して聴いてみると、どうも、譜面通りに弾いている だけ、という感じがするのです。ここでは、もうちょっとこの楽器の音が聴こえてき てもいいのにぃ…と思うような箇所がいくつかありました。
以下、いくつか印象に残っている部分について、書いてみます。
ソロ陣は、なかなかの実力者がそろっていますね。特に女声が印象的で、ソプラノ の松下さんの声がすぅっと素直な感じに響いてくるのは、おぉ、と思いましたし、ア ルトの上辻さんの「Agnus Dei」も、しっとりとした深い響きで、聴き応えがありまし た。テノールの畑さんは、もうお馴染みの方ですので、安心して聴くことができまし た。(^^; 三原さんのバスと言えば、「Quoniam tusolus」ですが、朗々としてたっぷ りと歌っているのが素敵でした。そうそう、この部分では、オケの方でも、ホルンが 結構、難しいことをやっているわけですが、それも奇麗にまとめてましたね。ただ、 この部分のチェロがもう少し、歌っていてもいいような気はしました。
ミサ曲の中で最高に盛り上がるのは、やはり、「Gloria」ですが、その最後の 「Cum Sancto Spiritu」のフーガ、まるで早口言葉をしゃべっているようで、ちょっ とあせり気味のような感じもしました。ま、こういう部分になると、ある種の興奮状 態になりますから、多少、走ってしまうのも無理はないかと思います。それでも、こ のフーガもかっちりとまとまっていて、大いなるクライマックスを築いて、前半の部 が終るのでした。そうそう、「Gloria」と言えば、忘れてはならないのが、トラン ペット。(^^; バロックのラッパらしい、軽やかで華麗な音色を出しているのが、印 象的です。
後半では、結構、疲れも出てくるかとは思うのですが、そういうことをまったく感 じさせず、一定のテンションを保ってはるのが、さすが、ですね。「Sanctus」や 「Hosanna」の大合唱も、相変わらず、力強く、きれいにまとまっていました。この合 唱団の人達って、元気な方が多いんですねぇ…(^^; もちろん、ミサの中心である 「Credo」もしっかりとまとまっています。特に中心となる、「Et incarnatus est」 に「Crucifixus」、「Et resurrexit」の3つの合唱が、とても素敵です。イエスの降 誕、受難、復活というドラマを、見事に歌い上げていました。
アルト・ソロの「Agnus Dei」を受けての、「Dona nobis pacem」、最後ということ もあってか、かなり力が入っていましたね。それでも、不自然に聴こえないのが、さ すがです。平安を求める気持ちがいっぱいになって、曲は、しっとりと終わるのでし た。
…と、演奏そのものは、素晴らしいものだったのですが、前に書いたとおり、特に オケ側に物足りなさのようなものを感じてしまいます。やはり、私にとっては、2月 の神戸バッハ・カンタータ・アンサンブルの方が、好ましく聴こえます。そ、神戸 バッハの皆さんは、オケと合唱とが一体となって、いつも、一緒に練習・活動してい ますから、その分、一体感というものがあるのですね。だから、オケの方も合唱をよ く聴きながら、しっかりとその支えを作っていくんです。それが、今回の演奏は、言 うなれば、合唱とは全く無関係の団体を引っ張ってきただけ、なんですね。だから、 その意味では、合唱と一体となって、というものは、確かに足りないでしょうね。だ から、どこか、不安定そうな感じで、何かが足りない… 神戸バッハの演奏を聴いて しまった後だけに、そのように感じるのでした…