らいぶらりぃ
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オペラハウス管弦楽団第21回定期演奏会

●日 時1998年10月27日(火)19時開演
●会 場ザ・カレッジ・オペラハウス
●出 演イェルジ・サルヴァロウスキ指揮オペラハウス管弦楽団
ピアノ:タチアナ・シェバノヴァ
●曲 目ルトスワフスキ/管弦楽のための本
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
フランク/交響曲ニ短調

 かのダン・タイ・ソンが優勝した第10回ショパン・コンクールにおいて、第2位を 受賞したのが、シェバノヴァさん。以前にレコードを聴いたことがあって、その力強 くも華麗な演奏に感動したことを思い出します。そんな彼女の演奏を生で聴くことが できて、とても嬉しいのでした…

 シェバノヴァさんの演目は、チャイコフスキーのコンチェルト。その冒頭から、力 強い和音をくっきりと響かせています。それだけでも、おぉ!と思うのですが、彼女 の魅力はこれだけでは終りません。テーマを歌うところでは、力強いというよりも、 華麗という言葉の方がぴったりはまるような演奏なんです。タッチそのものが、とっ ても深くて、力強く響いてくるのですが、それを、大して苦もなさそうに弾いてはる お姿が、そういう印象を与えるのかもしれません。でも、そこから弾き出される音楽 というものは、大胆で、かつ繊細さに満ちたものです。テーマを繰り返して歌うとこ ろでも、必ず、そのニュアンスを微妙に変化させながら弾いてはるのも、また、さす が、ですし、そこには歌心というものがはっきりと感じ取られます。カデンツァで は、そんな彼女に魅力が十二分に発揮されていました。2楽章になると、その歌心の 面が前面にくっきりと出てきます。深いタッチから弾き出されるテーマは、しみじみ として、秋の哀愁を表わすかのような味わいがありました。そして、3楽章、再び、 パワー全開!という感じで、盛り上がっていきます。気になるのは、オケの方。オケ の音が、妙に聴こえてこないんですね。それに、管楽器の入りの音が甘かったり、テ ンポがちょっと遅れたり、んー? という感じがするのです。まるで、オケの前に、 シェバノヴァさんという大きな壁が立ちはだかっていて、オケが完全にピアノの圧倒 されている、そんな感じさえします。つまり、それほど、シェバノヴァさんの演奏 が、前へ前へと音楽を引っ張って行く、パワーと表現力に満ちたものであるというこ となのでしょう。3楽章の第2テーマも、多少ゆっくりめにすることなく、そのま ま、インテンポで進んでいきます。まさに、前へ、という姿勢ですね。そうやって、 力強く進んで行っての、コーダはまさに圧巻。これでもかというくらいの激しさで、 一気に終結へと雪崩込んで行くのでした。これほどの力強さと美しく華やかな表現力 に満ちた演奏は、今までに聴いたことがありません。素晴らしい演奏でした。

 さて、コンチェルトの前には、ルトスワフスキの曲。かなりの大編成の曲で、楽器 もいっぱい舞台の上に並んでいます。曲自体は、結構、「現代曲」らしい(?)曲で す。どこか不思議な感じを出しながらも、とても力強さに満ちた曲ですね。4つの章 から成るのですが、それぞれの間には、間奏部分があり、アド・リビトゥムに演奏さ れるようになっているのですね。クラリネット等の木管が何やら、気ままに吹いては るのが、面白かったりします。

 そして、メインは、フランクの交響曲。ここに至ると、コンチェルトで感じた、オ ケの物足りなさというものは、すっかり払拭されてしまっていて、もう、素晴らしい 演奏に仕上がっています。威勢のいい感じのする1楽章や、哀愁の漂うような2楽 章、前2楽章のテーマを繰り返していきながら、明朗な感じの3楽章、どの楽章も音 楽としても、その内容は濃いものとなっているのですが、それを、そのまま、濃い演 奏でたっぷりと聴かせてくれるのです。弦が歌い、木管がさえずり、金管が吠える、 そんな表現がぴったりとくるような、熱演でした。

 お客さんが少ないようでしたが、これだけの演奏だっただけに、ちょっと残念に思 います。雨天だったから、足が遠のいただけ、なのでしょうか…