らいぶらりぃ
PrevNextto the Index

神戸フィルハーモニック第37回定期演奏会

●日 時1998年11月7日(土)18時30分開演
●会 場神戸文化ホール・大ホール
●出 演朝比奈千足指揮神戸フィルハーモニック
ヴァイオリン:高木和弘
●曲 目R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」Op.20
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調Op.26
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調Op.92
(アンコール)
ブラームス/ハンガリー舞曲第7番

 創立20周年を来年に控えての、神戸フィルの今回の定期は、ソロに高木和弘さん をお迎えしてのものです。高木さんのことは、失礼ながらあまり詳しくは存じ上げな かったのですが、今年のジュネーブ国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で第3位 (1位なし)を受賞されているのですね。これはいい演奏が聴けそう、と期待に胸が 踊ります。

 で、そのブルッフの協奏曲、かの諏訪内晶子さんがCDデビューした時の曲です な。この時のCDを買ってきて聴いて、とても感動した覚えもあるのですが、今回、 この曲を生で聴いてみて、この曲自身の持つ魅力というものを改めて実感することが できました。何か、こう、内に秘めた熱い情熱がほとばしるような、そういう感じの する曲ですよね。聴く者の心をぐっと捉えて、ぐいぐいとその魔力の中に導いていく かのような、そういう力を、音楽自体が持っていると思うのです。そして、そういう 魅力を、高木さんのヴァイオリンは、実に見事に表現していました。第1楽章の力強 くも情熱あふれるテーマ、第2楽章の甘美なテーマ、第3楽章の、これまた力強く前 へ向っていくかのようなテーマ、いずれも、全て、見事に歌い上げています。その歌 い上げ方も、決して力で押すようなものでなく、何と言うか、とても品のある歌い方 で、その演奏には温かみが感じられるのです。1つ1つの音をとても大事に扱ってい るのですね。そのことが、とても品良く聴こえてきます。第3楽章にしても、あれだ けの激しい性格の音楽ながら、もちろん、そういう激しさもしっかりと表現してはる のですが、それを、勢いだけで歌うことなく、音を大切にして歌っているのです。そ こには、高木さんご自身のお人柄というようなものが、よく表われているような気も します。真面目で丁寧で、それでいて情熱家というような面を、垣間見たように思い ます。また素晴らしいヴァイオリニストにめぐり会えた、そのように確信した演奏で した。

 一方、オーケストラの方のメインは、ベト7です。ずぅっと以前にも、演奏したこ とのある曲なのだそうですが、今回の演奏も、それなりに力の入った演奏であったと 思います。団員も前に比べると、ちょっとは増えたようで、それなりにヴォリューム のある演奏を聴かせてくれました。ただ、気になるのは、「舞踏の聖化」とも言われ るこの曲の、リズムの取り方というか、感じ方が、ちょっと重くはないか、というこ となのです。1楽章のヴィヴァーチェのテーマにしても、小鳥のさえずりと言うにし ては、やや引きずるような感じもしますし、4楽章のアレグロにしても、迫力はそれ なりにあるにしても、何か、重たいのです。フレージングの取り方が短いというか、 1フレーズが終わると、そこで一息入れてしまうようで、音楽が前へと流れていかな いのですね。明示大学のラグビー部じゃありませんが、音楽の基本って、「前へ」流 れていくことでしょう。それが、拍毎に息をつくようでは、前へ進んでいかないのも 当然です。もっと、「歌心」というものを持つようにすれば、自然と音楽は流れてい くものと思うのですが、その辺りのことが課題になるのではないかしらん… 

 何にしても、来年は20周年。地元のオーケストラとして、もっともっと頑張って ほしいものです。