らいぶらりぃ | |||||
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●日 時 | 1998年11月9日(月)19時開演 |
●会 場 | 神戸新聞松方ホール |
●出 演 | ピアノ:舘野泉 |
ヴァイオリン:アウドゥール・ハフスタインスドゥフティル | |
チェロ:ブリンディース・ハトラ・ギルファドゥフティル | |
●曲 目 | シベリウス/夢想Op.58-1 |
静かな西風Op.74-2 | |
ロマンス変ニ長調Op.24-9 | |
クーラ/無言歌 | |
シベリウス/ソナチネOp.80 | |
マリンコニアOp.20 | |
クーラ/ピアノ・トリオOp.7 | |
(アンコール) | |
ピアソラ/アルゼンチンの夏 |
今年はフィンランドの生んだ作曲家、トイヴォ・クーラの没後80周年に当たる年 です。彼のことにつきましては、私のHP内の別の頁をご覧いただくこととしまして (^^;、彼のファンである私にとりましては、今回の演奏会は、またとない機会であり ます。しかも、ピアノは、フィンランドものの第一任者である舘野泉さん、これは外 せませんね。(^^;前半はそれぞれの奏者の方のソロが続きます。舘野さんのシベリウスは、生では初 めて聴いたのですが、フィンランドらしさというか、北欧の香りというか、そんな雰 囲気がよく出ていますね。それでいて、人間の温かみもあるから、とっても耳に馴染 みます。「ロマンス」なんか、ほんと、素敵でしたねぇ。
ヴァイオリンのハフスタインスドゥフティルさんのソロは、クーラの「無言歌」。 クーラらしい、美しい旋律とハーモニーに満ちた曲ですね。演奏には、やや固さのよ うなものも見られたような気もしますが、次のシベリウスでは、なかなかの熱演だっ たと思います。
続いて、チェロのギルファドゥフティルさんのソロは、同じくシベリウスの、「マ リンコニア」。こちらも熱演です。聴いていてふっと思ったのは、まるで長谷川陽子 さんが弾いているのと同じようなオーラを感じるなぁ、ということ。まさに、シベリ ウスに正面から向かい合う姿勢が、そこには見ることができ、それが、聴く者の心に ぐっと迫る演奏を生み出しているのです。素敵な演奏でした。
そして、休憩後に、お待ちかねのクーラの大曲がやってきます。このピアノ・トリ オは、演奏に約50分を要する、まさに大曲なんです。全体は4つの楽章に分かれて おり、1楽章は、どこか聴いたことのあるような懐かしい感じのする、美しいテーマ が流れていきます。ピアノとヴァイオリン、チェロの3つの楽器が互いに絡み合いな がら、時に大きく盛り上がり、時に繊細な表情を見せたりしていきます。クーラの 曲って、このダイナミクスの幅がとっても広いから、なかなか聴き応えがありますよ ね。この楽章はまさに、そういうクーラらしさがよく出ているのではないかと思いま す。2楽章は、どこか愛らしい感じのテーマから始まります。こんな可愛らしい曲も 作るんだぁ、と思っていると、やがて、中間部、チェロから何とも言えない程に哀愁 を帯びたテーマが出てきます。何かむせび泣くような感じのこのテーマは、ほんと、 味わい深いものです。次の3楽章は、さらにぐっと暗い感じから始まります。どんよ りと雲が垂れ込んだ空、ぴんと張り渡った冷たい空気、そんなフィンランドの情景を 思わすようです。やがて、そこから、まるで、明るみを求めるかのようにして、テー マが歌い出されてきます。暗きから明るきへ、次第に盛り上がってくる、そのテーマ を聴いていると、これは、フィンランド民族の独立心そのものを歌ったものなのでは ないか、という気にさえなってきます。なかなか迫力のある音楽です。そして、4楽 章、どこか不安そうな動機から始まります。その動機が何度か繰り返されると,やが て、テーマが、コラールのような感じで、ピアノに現われ、そしてチェロ、ヴァイオ リンと歌い次がれていって、次第に音楽は大きく盛り上がっていきます。この、どこ か親しみのわくテーマは、どこか歌謡的にも聴こえるのですが、それが、この曲の魅 力でもあるのでしょう。うねりを繰り返しながら、クライマックスを築いたかと思う と、案外とあっさりとした感じで、最後は終わるのでした… 実に素晴らしい曲です ね。クーラの曲が好き、と言っても、主には合唱曲ばかりなので、初めてこの曲を聴 いて、とっても感動するのと同時に、とっても勉強になりました。合唱以外にも実に 素敵な曲をクーラは書いているのですね。もっと勉強しようっと。(^^;
アンコールは、フィンランドものではなく、最近、舘野さんもタンゴもののアルバ ムを出されましたが、まさにそのタンゴ、ピアソラ!です。大好きなフィンランドも のの曲を聴きに行って、最近、ハマりつつある、ピアソラをはじめとするタンゴの世 界も味わえて、ちょっと幸せ(^^)、なのでした…