らいぶらりぃ
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大阪フィルハーモニー交響楽団第323回定期演奏会

●日 時1998年11月27日(金)19時開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演クシシトフ・ペンデレツキ指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:緑川まり/松田昌恵
アルト:竹本節子
テノール:畑儀文
バリトン:井原秀人
語り:高折續
大阪フィルハーモニー合唱団/オペラハウス合唱団
●曲 目ペンデレツキ/七つのエルサレムの門(日本初演)

 今回の大フィルの定期は、何と、あのペンデレツキさんを迎えて、彼の作曲した大 曲の日本初演をしてしまおうというもの。何やら、すごそうですねぇ…

 会場に入り、ふと舞台を見ると、そのごっつい編成に唖然としてしまいます。3管 どころじゃなくて、4管編成の「超」大編成のオーケストラに、これとは別に、上手 側の花道に金管のバンダが、下手側の花道には木管のバンダが配置され、さらにピア ノにチェレスタ、ティンパニは2セット(下手寄り奥と上手側手前)に、ドラにスネ ア、シンバルにシロフォン、マリンバ等々…といった、あらゆる打楽器(これらが、 舞台上いっぱいに広がって配置されてます)が入ります。極めつけは、チューバ フォーンという巨大な打楽器。パイプオルガンのパイプを何本か束ねて、横に倒し て、その根元の部分に太鼓の皮を張ったような形の楽器です。その姿はまるで大砲か 何かのよう… こんなんが2つ、上手側と下手側とに置かれているのです。これだけ でも、聴く者を圧倒してくるかのようです。そして、更に更に、合唱は、何と、3群 の混声合唱、となります。まるで三善晃の「ぼく」とか「あなた」のよう…(^^; こ れは、一体、どんな曲なんや?とその興味はますます大きくなっていきます。

 1楽章、強烈な和音とともに、堂々として荘厳な感じの曲が始まります。合唱もい きなりパワー全開で、もう、歌いまくり状態のような…(^^; テキストは詩編47の 「Magnus Dominus」で、全能の大いなる神を崇める様が歌われていきます。しばらく fの部分が続いた後、ソリスト達による「Cantate Domino」(これは詩編96)が始 まります。今回のソリストは見てのとおり、ベテランどころがずらりとそろってい て、とても安心して聴けますな。特に、緑川さんのソプラノがかぁん!と響いてくる のは、いつ聴いてもいいですねぇ。やがて、最初の部分が、より一層拡大されたよう な形で、再現されます。左右のバンダからの音が、響きをより立体的にしています。 また、鐘の音も鳴り響いて、まさに「Magnus Dominus」=大いなる神を賛えるにふさ わしい、荘厳で絢爛豪華な音楽です。

 2楽章、低弦から開始されますが、これが何とも不気味な感じで、葬送行進曲のよ うな雰囲気が漂います。そこへ、ソプラノ・ソロが、詩編136の一節を歌い出しま す。このソロは奇麗な歌なのに、伴奏のオケは、不気味なままなんですね… でも、 割とシンプルにまとめられた楽章ですね。

 3楽章はお馴染みの「De Profundis」(深き淵より)が歌われます。それも、合唱 のみ、ア・カペラです。合唱団の実力が問われるところでもありますね。で、大フィ ル合唱団、やはり1楽章で張り切りすぎたような感じは否めませんねぇ。ちょっと支 えの足りないような声が聴こえてきたり、いまいちクリアでないので、残念な気もし たのですが… でも、曲自体は、実に奇麗で美しいものです。3群に分けてある意味 あいというものも、この楽章になってはっきりと分かります。言葉を3群の中に散り ばめていくようにしてあるのです。それによって、音空間が拡がり、言葉のもつ意味 あいも、より深められていくのでしょう。

 4楽章、何か、混沌とした感じがします。2楽章が再現されたり、その他、ここま でに出てきたような旋律が出ては消えていきます。この楽章も割とあっけなく終って しまうのでした…

 5楽章、ここからが楽しいところになります。この楽章の最初は、打楽器群が大活 躍します。打楽器総出で、強烈なパンチを聴かせ、更に心地良いリズムを刻んでいき ます。そして、待ってました、のチューバフォーンが登場します。その音色は、どこ か、タムタムに似ていますねぇ。パイプだから、ちゃんと音程を持っているわけで、 これがどこか面白味のあるメロディを奏でながら、リズムをぽんぽんと刻んでいくの が、なかなか耳に心地よいです。他にもティンパニも2組とも、大活躍、スネアやシ ンバルも鳴りまくっていて、とても賑やかです。そうした、一連の部分が終ると、中 間部は美しいハーモニーが支配します。この楽章は詩編の147番が使われています ね。合唱は、やはり難しそうですが、どうしてもクリアさが出てきませんねぇ… そ して、再度、賑やかな部分が再現されます。打楽器のパワー全開!の上に、合唱が、 「Alleluja」と歌っていきます。こんな賑やな上でアレルヤなんか歌うかぁ?とも 思ったのですが、これはこれで、なかなか味わいがありますね。(^^;

 6楽章の主役は、朗読です。ここだけ日本語で語られたのですが、内容は、エゼキ エル書の一節です。死者の骨が皮や肉、精神を得て生き返っていくということを言う ているのですが、そのバックに流れる音楽は、不気味さを漂わせながら、その様子を 描写しているかのようでした。

 7楽章は、6楽章から休みなく続けられて始まります。強烈なfが導かれて、しば くは混沌とした感じで進んでいきますが、やがて、その混沌が一つにまとまってい き、そして、1楽章冒頭の「Magnus Dominus」が再現されます。実に堂々とした演奏 で、1楽章と同様、「Magnus Dominus」と言うにふさわしい荘厳さを、取り戻してい くのでした… 多少、冗長な部分もあるかとは思ったのですが、それでも、実に感動 的なクライマックスでした。

 そこには、まさに、ペンデレツキさんの一つの到達点というものがあるのでしょう ね。黄金が神々しく光り輝くような、そんな輝きを持った曲だと思います。日本初演 は、ほぼ、成功した、と言うてよいでしょう。素晴らしい曲で、素晴らしい演奏でした。