らいぶらりぃ
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かぶとやま交響楽団創立10周年記念第20回定期演奏会

●日 時1998年11月28日(土)18時30分開演
●会 場いずみホール
●出 演其浦宏幸/中村晃之指揮かぶとやま交響楽団
ソプラノ:大橋ジュン
アルト:玉置敬子
テノール:畑儀文
バリトン:澁谷英明
森の宮ライゼンコール
●曲 目メシアン/キリストの昇天
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調Op.129「合唱」

 今年は創立10周年を迎えている、かぶとやま交響楽団の、これまた切りのいい数 の20回目の定期です。今回は、何と、いずみホールへ出てきての豪勢な公演です。 しかも、曲は「第九」。シーズンの幕明けにふさわしい、素晴らしい演奏だったと思 います。

 それは、1楽章からして、はっきりと感じられます。テンポはちょっとばかり速め なように思いましたが、そこから伝わってくる、熱い思い! 1人1人が、この記念 すべき演奏会で完全燃焼しようというような意気込みが感じられるのです。多少の緊 張感からか、たまに、ん?という音も確かに聴こえてはきたのですが、それ以上に、 音楽とは訴えることです。1楽章だけでも、苦渋の中から一条の光が見えてくるかど うか、というようなドラマを、はっきりと聴かせてくれました。2楽章のスケルツォ はさらにテンポが速くなり、その勢いにただ、感心するばかり… 3楽章は、その安 らかさへの祈りの想いがよく込められていたかと思います。もうちょっとだけ奇麗な 音色で演奏しても…と思ったのですが。(^^;

 そして、圧巻の4楽章、やはり、テンポは多少速めのまま、突入していきますね。 それに、所々、rit.するような箇所もいくつかあると思うのですが、そういう箇所で も、あまりためることなく、インテンポ気味に、前へ前へと進んでいくんですね。こ れが、さらに演奏を、引き締めているような気もします。合唱が加わってからは、も う、勢いに任せてしまうようなもんですが、それでも、合唱に微妙なニュアンスを出 していたり、その音楽作りは、なかなか細かいですね。この合唱団も、なかなか素敵 で、大人数でもないのですが、まとまった声を聴かせてくれます。一方のソリストは 若手が中心でしたが、なかなか健闘していたかと思います。バリトンは、もう少し下 への響きが欲しいようにも思いましたが… 例の有名な大合唱(第2変奏の最後の部 分)が終って以後は、もう、完全に合唱とオケとが一体となって、突き進んでいきま す。それは、まさに歓喜へ向かって歩んでいくかのような、説得力をもって、聴く者 にぐいぐいと迫ってくるのです。ただ圧倒されるばかりのうちに、感動的なフィナー レを迎えるのでした…

 アマチュアだけど、と言うより、アマチュアだからこそ、これだけの感動的な演奏 ができるのでしょう。こんなに”熱い”第九は、なかなか聴けないかと思います。そ の意味で、関西の第九シーズンの幕明けは、かぶとやま交響楽団の演奏によって、華 やかに切って落とされたと言えましょう。加えて、かぶ響の来年以後の更なる活躍を 期待してやみません。