らいぶらりぃ
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ハンガリー国立交響楽団(神戸公演)

●日 時1998年12月3日(木)19時開演
●会 場神戸文化ホール・大ホール
●出 演小林研一郎指揮ハンガリー国立交響楽団
ピアノ:中村紘子
●曲 目グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ長調Op.23
ベルリオーズ/幻想交響曲Op.14
(アンコール)
ダニーボーイ
ブラームス/ハンガリー舞曲第5番

 先日は大阪で素晴らしすぎるほどの「復活」を聴かせてくれた、コバケンさん指揮 のハンガリー国立響、今日は、舞台を神戸にしての、Bプロ公演です。

 ソリストに迎えたのは、中村絋子さん。今年の夏、シンフォニーホールで行われた リサイタルに行けなかっただけに、今回の演奏は楽しみでもありました。曲は、… チャイコのコンチェルトだなんて、安直すぎやしません…?(^^;

 とは言いながらも、やはり、その演奏は素敵ですね。相変わらずの力強く、深い タッチの音色が、会場中に響き渡ります。fのところなど、オケの音をかき消すほど にも聴こえてきます。その大胆なまでの力強さには、ただ、圧倒されるばかりです。 けれど、じぃっと聴いていると、何かが違うような気にもなってきます。…ちょっと アラくありません?ということを感じるのです。絋子さんの演奏って、いつも聴くの は、力強さの中にも音の粒は細かくそろっているように思うのですが、今日の演奏 は、必ずしもそうとは言えないような気がします。粒揃いの音がきれいに、かぁん! と響いてこない… そのように感じられてならないのです。ひょっとして、楽器のせ いなのかしらん…とも思ったりするのですが、ま、その点がちょっと残念ではありま した。でも、演奏そのものは素晴らしいものであったと思います。オケの方も、絋子 さんのピアノに負けないくらいのきらびやかな音を出していて、まさに華やかな雰囲 気に包まれたひとときなのでした… (迫力満点の終楽章が終ると、思わず、カレー が食べたくなるのでした…というお決まりのオチをつけておきましょう…^^;)

 さて、メインの曲は、幻想交響曲。「復活」の時でもそうでしたが、とにかく、各 楽器の音色がとてもクリアで、ぱぁん!と鳴ってくるのが、いいですね。特に金管楽 器の音は、このホールの音響を問題ともしないくらいに、鳴り響いていました。そし て、その音のクリアさに加えて、コバケンさんの指揮がもたらす、歌心に満ちた、非 常に情熱的な表現の仕方には、感嘆の息がつきないですね。どの一瞬たりとも、決し てテンションを落とすことなく、或は息をつくことなく、常に前へ前へと歌いあげて いこうという、その姿勢は、完全に団員さん達にも行き渡っていて、まさにソウルフ ルな演奏を聴かせてくれました。そういうふうに、団員の1人1人がたっぷりと歌っ ているので、内声部の楽器の音なども、場面によっては、前面へ出して聴かせてくれ ていて、そのようなところは、結構、新鮮にも聴こえましたね。

 1楽章の伸びやかさ、2楽章の華麗さも素敵ですが、特に印象的なのは、3楽章 の”わびさび”の世界。アングレが哀愁を帯びた旋律を、わびしさたっぷりにしみじ みと歌い上げ、それに対して、会場の方からもう1本が応答する、その立体的な音空 間作りも、なかなかお洒落でした。4楽章の葬送行進曲、5楽章のグレゴリア聖歌の ずっしりとした響きも、素敵です。特にこの後半楽章なんかでは、金管が活躍します が、ここは、まさに聴かせどころ、会場中がその輝かしいばかりの響きに包まれるの でした。また、低弦のごぉっとした響きも、ずっしりとしていて、それは、まさに地 が鳴るようでもあります。絢爛豪華で壮麗な響きに会場中が酔いしれた演奏でした。

 アンコールは、「ダニーボーイ」。そう言えば、9月にシンフォニカーさんを指揮 した時(朝日名曲コンサート)にも、コバケンさん、この曲をアンコールに取り上げ てはりましたね。最近は、この曲がお好きなのでしょうか…(^^; 弦が泣けと言わん ばかりにたっぷりと歌い上げてきて、これほどまでに情感のこもった「ダニーボー イ」は、そう聴けないでしょう。アンコールに至るまで、まさに”ソウルフル”なの でした。