らいぶらりぃ
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ロマンティックヴァレンタインコンサート
ストルツマン&仲道郁代

●日 時1999年2月10日(水)19時開演
●会 場サントリーホール
●出 演クラリネット:リチャード・ストルツマン
ピアノ:仲道郁代
●曲 目ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
       クラリネットのための第1狂詩曲
シューマン/3つのロマンスより
レーガー/ロマンス
フィンジ/ロマンス
プーランク/クラリネット・ソナタ
ブラームス/クラリネット・ソナタ第2番
ガーシュイン|ベネット/「3つの小品」より エンブレイサブル・ユー
エルトン・ジョン/「ライオン・キング」より 愛を感じて
ロジャース/マイ ファニー・ヴァレンタイン
(アンコール)
ガーシュイン/3つの小品より 第1番
プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」より 私の大好きなお父さん
ハイマン/クラリナータ
アメイジング・グレイス

 え、何だってまた、東京の演奏会に、と言われるかもしれませんが、何と言うて、 「ヴァレンタイン・コンサート」ですからね、やはり、愛する人と一緒に聴きに行き ませんと。(^^;(ずっと前から、遠距離恋愛中の彼女との約束で、この演奏会には一緒 に行こうね、と言うていたのです…)

 で、演奏の方ですが、郁代さんのピアノがいつものとおり、とても素敵な音色を奏 でていたのは言うまでもないことながら、ストルツマンさんのクラリネットの音色の 何とも優しく甘く、美しいこと! 冒頭のドビュッシーの出だしからして、その、 ホールの空気をぴりぴりと震わせるのがはっきりと分かるような音色には、ぞくっと 感動してしまいます。pの表現の仕方が絶妙なんですね。聴こえるか聴こえないくら いの音量で、それでいながら、しっかりとこちらに伝わってくるほどの豊かな響きを 持っているのです。それが特に活かされていたと思うのは、3人の作曲家それぞれの 「ロマンス」でしょう。曲自体も美しいのですが、それをさらに甘美な音色で演奏さ れたら、もう、うっとりとして、聴いている2人は互いの顔を見合わせてしまうとい うものです。(^^;

 けれど、一番印章的なのは、プーランクです。このクラリネット・ソナタは初めて 聴いたのですが、プーランクらしさのよく出ている曲ですね。プーランクの曲という のは、何と言うか、人間性そのものの微妙なニュアンスというものを、時にシリアス に、時にコミカルに表わしていると思うのですが、この曲もまさにそう。演奏の前に ストルツマンさんも、この曲(特に第1楽章)の持っている微妙なニュアンスについ て、語っていらっしゃいましたが、じぃっと聴いていると、人間の持っている、悲し みや喜び等の様々な感情というものが、この短い中にぎゅっと凝縮されていること を、実感するのです。そして、それは、もちろん、ストルツマンさんのクラリネット の音色が、あたかも人間の息づかいそのものを伝えるかのように、切々として、リア ルなものであったからこそ、でもあります。素敵な演奏でした。

 後半には、ポピュラー系の曲がいくつか並んでいます。ここでは、エルトン・ジョ ンの曲が印章的です。先の「ロマンス」とはまた別な感じですが、こちらに語りかけ てくるような、その甘美な音色には、「ロマンス」以上の思い入れのようなものが感 じられて、とってもムードたっぷりの演奏でした。

 プログラムが一通り終った後でも、拍手に応えて4曲ものアンコールが演奏され、 とても満足のいく演奏会でした。彼女とお互いに「素敵な演奏だったね」などと言い ながら、夜の街へと消えて行くのでした…(^^;