らいぶらりぃ
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トゥールーズキャピトル国立管弦楽団

●日 時1999年2月24日(水)19時開演
●会 場シンフォニーホール
●出 演ミシェル・プラッソン指揮トゥールーズキャピトル国立管弦楽団
ソプラノ:レオンティーナ・ヴァドゥーヴァ
●曲 目ビゼー/歌劇「カルメン」より
     序曲/第3幕への前奏曲/
     ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょう」
グノー/歌劇「ファウスト」より
      マルグリートのバラード「トゥーレの王の歌」〜アリア「宝石の歌」
    歌劇「ロメオとジュリエット」より 「私は夢に生きたい」
ベルリオーズ/幻想交響曲Op.14
(アンコール)
マスネ/「マノン」より 「さようなら私の小さなテーブルよ」
ビゼー/「アルルの女」より アダージェット
ベルリオーズ/ハンガリー行進曲

 私としたことがどうしたことか、ようやくにして、今年初の大阪での演奏会です。 緊縮財政のため、なかなか出かけて来られない、というのがその理由ですが、今回の チケットは、既に昨年の発売の段階で手に入れていたものなのでした…

 さて、今回が初来日のトゥールーズキャピトル管弦楽団、今の指揮者のプラッソン さんとのコンビを組んで世界中にその名を知られるようになってから、早、30年と いうことで、私のこれまでの人生と同じだけの間を活躍してきているということは、 妙に親近感を覚えます。(^^; が、実際、その音色は、心地好く響いてきます。音そ のものがとても優しい幹事で、そして表現力に富んでいて、その微妙なニュアンスの 出し方には、いちいち感心してしまいます。

 例えば、「カルメン」の序曲。中間部に流れるテーマをヴァイオリンが歌います が、フレージングをしっかりと取っていて、その間できっちりと膨らませてはしぼめ て、それも各フレーズ間でのっぺらにならず、似たようなフレーズが来ると、決して 前のと同じにはせずに、微妙にもニュアンスを違えていく、それでいて、全体の統一 感は損なわれることなく、大きくひとつの曲としてまとまっている…ということを、 ここではっきりと感じ取ることができます。

 これはもちろん、後半の「幻想交響曲」でも同様です。第1楽章のテーマが、終楽 章までずっと何度も繰り返されますが、これとて、決して全く同じに演奏しているも のはありません。曲そのものがそのようになっているから、だけではなくて、同一楽 章内で譜面上は同じ形のものが繰り返される場合でも、登場する度にその表情は違う んですね。美しき乙女のテーマが次第に姿を変えていき、終楽章へ至る、そのドラマ というものを、これだけでも感じ取ることができます。そして、そのドラマを更に盛 り上げるのが、このオケのもうひとつの特徴である、クライマックスの築き方が、実 にドラマティックであるということです。pの部分は、とっても小さく、聴こえない くらいの小ささにして、それでいて、fになると、一気にがぁん!と鳴らせる、その メリハリの素敵なことと言ったら! じわじわっとクレッシェンドしてくるところな ど、その集中力に聴く側もひたと耳を集中させられ、それがほんまにじわりじわりと 盛り上がってくることで、更に気分を高揚させられて、そして、一気にはじけるよう にクライマックスをむかえる… このドラマティックさは、派手、と言うよりは、ご く自然な感じでの高揚であり、その滑らかでありながら、聴く側の心を捉えて離さな い表現力というものが、このオーケストラの持ち味なのかしらん、と思います。

 ところで、今日のソリストはヴァドゥーヴァさん。昨年12月に行われていたリサ イタルには、別件(フェスで「椿姫」を見ていた…)で行けずに、悔しい思いをした ので、一昨年12月のリサイタル以来、ということになります。相変わらず、と言う か、更にその上品で艶やかな声に磨きがかかったような感じがします。「カルメン」 にしても、そ、やっぱり、ヴァドゥーヴァさんはカルメンよりはミカエラの方が合う よなぁ、と思いながら聴いてました。情熱を前面に押し出して歌うというのではな く、とても上品な感じに曲をまとめ上げていて、それでしっかりと聴かせてくれる、 これがヴァドゥーヴァさんの魅力でしょう。「ファウスト」も「ロメジュリ」も素敵 です。特に「ロメジュリ」の「私は夢に生きたい」は、とても聴きごたえがありまし た。聴いていて、何か、ほわっとするようなものを感じるのです。その優しくも凛と した響きの声に、こちらも夢の中にいるかのような気分にさせられてしまうのでした … そして、ヴァドゥーヴァさんのアンコールは「マノン」。繰り返される「Adue」 という言葉に込められた情感が、はっきりと伝わってくる演奏でした。

 気がつけば、フランスものばかりのプログラム。フランスの演奏家達の手による演 奏で、十分に満喫できた演奏会でした。