らいぶらりぃ
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朝日新聞創刊120周年記念

マーラー「千人の交響曲」

●日 時1999年7月25日(日)17時開演
●会 場フェスティバルホール
●出 演小林研一郎指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:管英三子/六車智香/秋吉邦子
アルト:竹本節子/片桐仁美
テノール:伊達英二
バリトン:青戸知
バス:田中勉
大阪新音フロイデ合唱団/武蔵野合唱団/大阪フィルハーモニー合唱団
大阪第一合唱団/大阪すみよし少年少女合唱団
●曲 目マーラー/交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」

 今までにもいろいろとマーラーの交響曲を生の演奏で聴いてきましたが、まだ耳に したことない交響曲が2つ、ありました。6番と8番です。その8番を、コバケンさ んの指揮で聴ける、ともなると、これは絶対に聴き逃すことはできません。妻と一緒 に、聴きに行ってきました。

 で、とにかくこれだけの大曲です。まず、合唱のパワーに圧倒されます。冒頭の 「Veni…」からして、よく声が前に飛んできています。多少、力任せの感もしないで はないのですが、コバケンさんの指揮も、客席の方を目指して声を飛ばせ!と言わん ばかりのもので、歌う方も自然と力が入るのでしょう。これだけの大人数で、これだ け思いっきり歌うことができるというのは、歌う側にしてみれば、むっちゃ気持ちの いいことやろうなぁ、と思いながら、聴いていました。ただ、そのパワーが、第2楽 章ともなると、ちょっとばててきたのか、ややパワーダウンしてしまったように聴こ えたのが、残念な気もします。それに歌詞もドイツ語になったせいなのか、それまで うまくまとまって聴こえていたのが、ちょっとばらけて聴こえたのも残念です。子音 の発音の仕方がやや雑なふうに聴こえたのが、そう思った原因かもしれません。団に よって発音の仕方が違うことにもよるのかもしれませんが、もっとそろえて歌うこと もできたのでは、と思います。

 そんな合唱の中で、印象的なのは、児童合唱だったりします。(^^; 第1楽章後半 で「Gloria…」と入ってくるところの、何と清楚な響き! 周りを大人達にびっしり と囲まれていても、それに負けないくらいのしっかりした声で、天上からの響きを再 現しているかのようです。それは第2楽章でも同様で、ひたすらソロが延々と続く中 で、このきれいな児童合唱を聴くと、何だかほっとするのでした。

 さて、ソロの方ですが、顔ぶれを見るとなかなかの実力者の皆さんがそろっていま す。で、実際、それぞれの役割をきっちりと果たしていたと思います。特に印象的な のが、栄光のマリア。フェスティバルホール2Fの、R側の張り出した所で、歌って いるのです。私達はそのちょうど真下の辺りで聴いていたのですが、その、ほわっと 会場中を包み込むような響きは、まさに天上からの導きの声というにふさわしいもの でした。また、青戸さんの法悦の神父も素敵でした。そこまでの、ぴぃんと緊張して いたものが、この柔らかく太い響きで、ほわっとほぐされるようで、気分はまさに法 悦なのでした…(ちと違うか…^^;)

 合唱やソロがそれだけのものですから、オーケストラの方もなかなか気合が入って いるようではありました。ただ、何かが私の期待していたものと違う…ように聴こえ るのです。確かにラッパ系の音がよく外れていた、ということもあり、がっくりとし たというのも事実ですが、それだけでなく、聴こえてきてほしいところで、音が今ひ とつ聴こえてこない…というもどかしさのようなものを覚えたのです。多分にホール の構造上、私達のいた所に音が届いてこないだけのことだったのかもしれないので、 あまりなことは言えないのですが、でも、全体にやや、生彩を欠いていたのでは、と 思うのです。冒頭部分にしたって、合唱があれだけ声を張り上げているのに、オケの 方は、何か引きずるような感じの音で(確かにコバケンさんのテンポ設定もややゆっ たり目だったかもしれませんが)、ぱっとしないような印象を最初から抱いてしまっ たのです… でも、バンダの金管はさすがに、素晴らしかったですね。こちらも2F のL側の張り出し部分で演奏していたのですが、天上のラッパの響きと言うにふさわ しいような響きを出していました。

 …ということで、全体にはやや不満もあったのですが、それでもその熱演は素晴ら しかったと思います。終結部で、アカペラの合唱での最弱音から、じわじわっとクレ シェンドしていき、やがてオルガン(電子オルガン)が鳴り響き、鐘の音が鳴り渡 り、バンダのラッパ隊も加わり、出演者総勢で、最強音を築き上げ、最高のクライ マックスを迎えるところでは、やはり、じんわりときました。マーラーの言うた「宇 宙の響き」とかいうものには、ちょっと物足りないのかもしれませんが、それでも素 晴らしい演奏であったと思います。欲を言えば、シンフォニーホールというデッド・ ゾーンのないホールで、ほんまもんのオルガンを鳴らしての演奏を聴いてみたかっ た、ということになるでしょうか。(^^;

 さ、あとはマーラーの6番を生で聴いてみたいものです。(^^;