らいぶらりぃ
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ディズニー・オン・アイス〜フォーエバー・ラブ

●日 時1999年8月8日(日)10時30分開演
●会 場大阪城ホール
●演 目白雪姫/アラジン/美女と野獣/シンデレラ
ポカホンタス
●出 演ポカホンタス:ジョアンナ・ンー
ジョン・スミス:ローランド・バーグハート
ココアム:ジェイミー・ローバー
ナコマ:アン・ラモス
ペア・チーム:スタニラフ・ジョウコフ&スヴェトラナ・ドラガエヴァ
ラトクリフ総督:スキップ・ドナヒュー
トーマス:エディ・ジードラー
ウィギンズ:ダグ・バーンハート

 今までとはまた違う種目の公演(?)を見てきました。「ディズニー・オン・アイ ス」、ディズニーの世界をフィギュア・スケートやアイス・ダンスなどで見せてくれ る、いわば、氷上のミュージカル、です。6月頃にTVでこの特集番組をやってい て、それを妻と2人で見ていたのですが、”ずぅっとこれに行ってみたいと思ってい たの”という妻の一言で、番組が終るや否や、電話に手がまわっていて、チケットを GETしたのでした…(^^; そして、公演の日が近づいてくると、近くのレンタル・ ビデオ屋で、上演される演目のディズニーのアニメ映画を借りてきて、連夜、みっち りと予習をしていたのでした。そして、アラジンの「A Whole New World」やポカホン タスの「Color of the Wind」等の名曲の数々が頭の中をぐるぐると回り出すような状 態で、公演の日を迎えたのでした…

 今回のテーマは”フォーエバーラブ”、まさに私達のような新婚夫婦にもふさわし いものと言えましょう。(^^; 予習の段階でも、これらの名画に感動して2人で泣い ていたのですが、これを、生で、しかも氷の上で見るのってどういうふうになるのだ ろう、と期待に胸が踊ります。夏の暑い日曜日、いつもより早く起きて、朝からの公 演に出かけて行ったのでした。大阪城ホールに近づくと、辺りは、親子連れでいっぱ い。ただでさえ暑いのに、その人混みの熱気で余計に暑さを感じます。会場の外にも ディズニーグッズを販売しているお店が並び、すっかりお祭り雰囲気で盛り上がって います。ミッキーと写真を撮ろう、とかいうコーナーもあったりして、撮ってもらお うか、と見ると、1回1,200円と… 値段の高さにすごすごと引き下がってしまうので した…(;_;)

 さて、公演の方ですが、大阪城ホールのアリーナの部分にステージが組んでありま す。ステージと言うても、年末の「1万人の第九」の時のとは違って、もちろん、ス ケート・リンクです。そのリンクの1辺が、アリーナの端にくっつく格好になってい て、そこがいわば、舞台ソデ、出演者溜りですな。登場人物達は、ここから出てくる わけです。「お待たせしましたぁ、さぁ、いよいよ開演でぇす!」とかいう、威勢の いいアナウンスが終ると、ミッキーとミニーがさっそうと登場してきます。この2人 が、ショーの案内役というわけです。もちろん、声は、日本語吹き替えのをテープで 流していて、出演者はそれに合せて動作をしているのですね。それが、全く違和感を 覚えさせないくらい、よく(声と動作と)合っていたと思います。そして、今回の テーマについて簡単に説明をした後、いろいろな”愛”のシーンが展開されていくの です。

 まずは「白雪姫」。白雪姫が「いつか王子様が」を歌いながら、それに合せてリン ク上をすぅ〜っと滑っていきます。「ハイホー」で登場した小人達も脇にたたずん で、白雪姫の舞いに見入っています。バレエと違い、氷の上だけに動きがすごく滑ら かで軽やかで、その上、体全体をうまく使って、王子様への愛というものを表現して いるから、これは、何だかすごいぞ、と思います。今までにもTVでスケートの選手 権とかオリンピックは見たことはありますが、そこで競われる技術のことは私にはよ くは分からないにしても、同じく競われる芸術性というものこそが、プロのスケー ターに求められるものなのだ、と思い知らされます。王子様が登場してきての、ペア でのスケーティングは、ほんと、奇麗なものでした。

 同じように「アラジン」、「美女と野獣」と続いていきます。「A Whole New World」の美しい曲に乗せて自由自在にリンク上を舞うアラジンとジャスミン、また、 優雅な踊りで魅了してくれるベルと野獣、アイス・ダンスのような、若しくはペアの フィギュアのような、リフティングやジャンプもあったりして、実に魅せられます。 欲を言えば、もう少し時間を長くして、「アラジン」のジーニーを登場させたり、呪 いが解けて野獣が王子様に変わるところなんかも再現したりしてくれたら、なんて思 いましたが、でも、短くコンパクトにこれらの世界を表現していたと思います。特 に、すらっとして清楚な感じのベルが、妙に印象的でした。

 そして、「シンデレラ」は、ミッキーとミニーが演じます。ミニーのシンデレラ が、ミッキーの王子様と踊っていくのですが、それぞれ、着ぐるみを着ている状態 で、よくあそこまで舞うことができるなぁ、と思います。ただでさえもフィギュア・ スケートって難しいと思うのですが、それを、自分の体の上に重いものをかぶってす るというのは、さらに難しいのでは、と思うのです。ミッキーとミニーだけでなく、 「白雪姫」の小人達や、「アラジン」の魔法のカーペット、「美女と野獣」の家来達 (燭台やら時計やらカップにポットまで!)など、あんな格好でよく滑れるものだ、 と感心してしまいます。

 そして、ここまでが、いわば前置きのようなものです。愛する者同士のラブ・ロマ ンスを描いたシーンばかりを並べてきたわけですが、それとはちょっと違う、より崇 高な(?)愛の形ということで、「ポカホンタス」が今回のメイン・テーマになって いるのです。そのお話を、と、ミッキーとミニーが、この物語の語り手として、柳の 木の婆さんを紹介すると、舞台ソデから大きな柳の木のセットが現れてきます。こん な大きなものを氷の上で動かすのも大変なのでは、と思うのですが、すぅっとスムー ズに動いてくるのが、ちょっと不思議なところでもあります。

 そして、柳の木の婆さんのお話が始まり、舞台はイギリスの港に変わります。「さ まようオランダ人」を思い出すような、大きな船のセットに、水夫達の合唱、スケー ルの大きなドラマティックさを感じさせます。そして、いざ、船に乗り込んで新世界 へ出発だ、というところで、実に素晴らしい見せものが。シーソーを使っての、サー カスのような曲芸をやってくれるのです。シーソーの片側に人が乗っていて、そこへ もう片方へ2人で、どん!とジャンプしてきて、ぴょぉん!と飛び出したかと思う と、傍らの高い台の上に着地する、というようなもの。スケート靴をはいたままで、 あんなことってできるものなのか?と思うのですが、実に見事です。圧巻は、氷の上 で2人がかりで、長い竿のようなものの上に小さなイスがついているのを支えてい て、そこへ、シーソーからジャンプして着座する、というもの。こんなアクロバット シーンを見ることができて、ストーリーの中へと気分はさらに盛り上がっていきま す。また、これとは別に、脇役ではありますが、ジョン・スミスと同じく船に乗り込 むトーマス役のジードラーさんが、この登場のシーンで、トリプルのジャンプ(アク セルだかルッツだかは分かりませんが…)を見せてくれたのも印象的です。ジョン・ スミスのバーグハートさんはあまり派手なジャンプはしませんでしたが、貫禄を感じ させる雰囲気をたっぷりと出しています。そして、いよいよ出航!です。

 場面が変わると、アメリカ大陸の原住民達の世界です。美しく映える木々の緑に、 小川の水の青。そこへポカホンタスが現れ、風が舞うかのようにしなやかに美しく舞 い始めます。ちょうど、氷がまさに小川の水のように見えて、まるで水の上を舞って いるかのような感じさえします。ジョアンナ・ンーさんの容姿端麗な体をいっぱいに 使っての、その伸びやかでまさに自由な演技は、ほんと、素晴らしいですね。審査員 ならば、10点満点をあげたくなるような。(^^) その美しさに、思わず、ほぉっと ため息が出てしまうのでした。

 ストーリーの展開は、ほぼ、映画の場面を忠実に再現していて、やがて、これら2 つの異質な世界が出会う場面へと進んでいきます。文明社会のイギリスからやって来 たジョン・スミス、自然と共に生きてきた原住民の王の娘のポカホンタス、この2人 が出会うシーンがこの物語の1つのクライマックスです。アライグマのミーコが映画 と同じように、この2人の出会いの仲立ちをして、ついにめぐりあうべくしてめぐり あう2人、そして2人のペアでのスケーティングが始まります。風の精のスケーター 達も出てきて、2人のめぐりあいを祝福するかのように、舞台は華やかかつ幻想的な 雰囲気に包まれます。「Color of the Wind」が高らかに鳴り渡る中を、色とりどりの 衣装を着た風の精らが舞い、ポカホンタスとジョンの2人が優雅に舞う、その様は、 まさに感動的です。何だかじぃ〜んときてしまって、妻の手を握り締めながら、思わ ず涙ぐんでしまうのでした…

 後半は、この2人の願いにも関らず、移住民と原住民とが戦闘へと向けて突っ走っ ていく様を描いていきます。「戦闘だ!」と、2つの住民達が叫び立つシーンなど、 舞台をうまく2つに分けており、1つの舞台上に全く違う2つのものがいてもおかし くないような演出を施しているのですね。こういう演出の巧みさもまた、全体を通じ ての見物だと思います。また、「戦闘だ!」と叫ぶ人達のコーラスをバックに、ラト クリフ総督は己の欲望を歌い、パウアタン酋長はココアムという仲間を撃たれた憎し みを歌い、そして、ポカホンタスが争いを止めなくちゃ、という祈りを歌いあげてい くという、この辺りの音楽的な展開も、素敵ですね。映画を見た時も思ったのです が、さすが、ミュージカル映画というだけあって、この「ポカホンタス」は、音楽的 にも十分な内容性を持っていると思うのです。それをこうやって、会場で生で音声を 聴く(もちろん、PAを通してなのですが…)というのもなかなか感動的です。これ が生演奏だとさらに感動的なのかもしれませんが…(^^;

 そして囚われのジョンが、日の出とともに処刑されようとする時、意を決したポカ ホンタスが飛び出てきて、双方の軍勢の前で涙ぐみながら戦をやめるよう、訴えかけ ます。憎しみ、いがみあいながら戦いを始めてしまうより、理解しあい、愛しあうこ とにより平和を築き上げることの素晴らしさ、これこそが、この物語の一番、言いた いことでり、ディズニーが、このミュージカルを通じて訴えたいことなのではないで しょうか。感動的なクライマックスを迎えた後、ジョンはイギリスへ帰っていき、ポ カホンタスはこの地にとどまり、2人は別れる結末となります。お互いに離れること によって、永遠の愛を貫きとおす、ということでしょう。ここに、単なるラブ・ロマ ンスとは違う、むしろ人間愛的なスケールの大きさというものを感じることができま す。これが”フォーエバー・ラブ”というテーマなのですね。じぃ〜んと胸にくるも のを感じながら、最後はいつまでも拍手をしているのでした…

 公演後、アンケートに答えて、会場でしか配ってないとかいう、ステッカーをいた だいてきました。それによると、来年は「リトル・マーメイド」だそうで、また来た い、と思うのでした… すっかり、この「ディズニー・オン・アイス」に魅了されて しまった感じがします。そして、これは単なるショーとかいう類いのものではなく、 ひとつの芸術として広く認知されるべきなのでは、とも思います。それが、ディズ ニーの世界の幅の広さでもあると思うのです。感動を胸いっぱいに詰め込んで、まだ 暑い中を、妻と2人で家路に着くのでした…