Alfa Romeo 156
The Battle of Garage 12


 2002年 9月 14日
  走行距離 12,910Km
  作業内容 ダンパーの交換

 ダンパーを交換する。純正がへたったから交換する訳じゃない。購入当初より純正の足に少しだけ不満があったからである。もちろん不満といっても許せる範囲である。別に気にしなければすんでしまう程度なのである。ちょっと嫌だなぁ〜と思いつつ、あと1万キロは我慢するか等と考えていた矢先に偶々掘り出し物のダンパーを見つけた。メーカー名はビルシュタイン(BILSTEIN)である。
 そう!あの黄色と青色の奴だ。ここでビルシュタインの構造や特長を書き出すと長くなるので割愛するが、同156オーナーで装着されている方の声を聞くとかなり評判はよい。またビルシュタインはオーバーホールができるから嬉しい。消耗品であるダンパーにうん万円も掛ける事にはかなり抵抗が有ったが、1万円/本程度でほとんど新品になるのなら長い目で見ると得ではないだろうか。もちろんオーバーホールネタで「バトルガ」が作れるというのも今回購入する理由のひとつである。

 さて交換作業のレポートに入る。足回りの交換は結構内容が重いのでリア−交換、フロント交換をバトルガ12、13に分けてレポートすることにする。ちなみに今回はダンパーの交換のみ。スプリングはアイバッハをそのまま使う。またアッパーマウントやインシュレーターなどのラバー類(消耗品)も走行距離1万キロ程度なのでそのまま使うことにする。

 まずはリアーダンパーの交換作業。リアーストラットは164と同様のマクファーソン・ストラット形式である。アッパーシートの取り付け位置がどこにあるかで作業の難易度が変わるが、156の場合はトランクルームの内装の一部を捲れば作業ができるので難易度は比較的低い。左画像は右ストラットを斜め後ろから写した画像である。アッパーシートを外す作業は後にして、まず赤い矢印A〜Eの箇所をはずして行く。
 Aはスタビライザーコネクティングロッドとストラットを固定している箇所。B、Cはナックルとストラットブラケットとの固定箇所。Dはブレーキホースの固定。E、Fはセンサーコードの固定箇所である。
 まずE、Fのコードをストラットから外す。次にDのブレーキホースを外す。これはロックピンがあるのでラジオペンチで摘んで外す。ホース、コード類が外れたら次は「力」作業。各ナット類は錆び等で硬くなっている場合があるのであらかじめCRC5−56等の潤滑油を噴いておくと作業しやすい。

 まずスタビライザーコネクティングロッドをストラットから外す。左画像をご覧いただきたい。ナットは17ミリのセルフロックタイプ。締め付けトルクは高くないので力はいらないが、ロッドから突き出たシャフト(ボルト)はボールジョイントが使われているためナットを回すとシャフトが共回りする。共回り防止の為にシャフトの頭に六角の穴が開いているので、5ミリのヘキサゴンをその穴に差込み共回り防ぐ。そんなこと面倒だぜ!という方はインパクトレンチで「ガガガ・キュルル〜ン」と外す方法もある。ナットが外れるとコネクティングロッドはストラットから外れる。今回の作業はリジッドを使いリア−両輪を同時に持ち上げておこなったが、片輪だけを持ち上げて行う作業ではスタビライザーが効いてしまいコネクティングロッドとストラットに摩擦が生じ外しにくくなるかもしれない(憶測)。

 次にナックルからストラットを外す作業。左画像の通りナックルとストラットは上下2箇所でボルト留めされている。この2本のボルトを抜けばストラットは外れる。まず上部のボルトを外す。使われているナットは19ミリ。さすがに強いトルクが掛けられているので、取っ手の長いメガネレンチかソケットにブレーカーバーをつけて強いトルクをかけてやらなきゃ緩められない。ナットが外れればボルトを抜く作業。垂れ下がろうとするナックルに押され(引っかかり)なかなか抜けない場合はプラハンで叩くか左画像のようにバイスプライヤー等を使い捻り(廻し)ながら引き抜くとよい。その際に注意したいのがボルトの差し込む方向とワッシャーの種類と枚数を覚えておくことだ。当たり前だと笑われるが意外と戻す時になって「あれ、どっちから差し込んだっけ?」とか「このワッシャ−ここだっけ?」等と焦る場合がある。できたら外すと同時にメモを取っておこう。

 上部のボルトが抜けたら下部のボルトを抜く作業に移る。下部のボルトにはサスペンションメンバーからのびた2本のパラレルリンクが繋がっている。またリア−側のパラレルリンクとストラットとの結合部分にはスペーサーが入っている。上部同様19ミリのナットを外す。かなり強いトルクで締められている事は上部と同じである。下部についても上部同様ボルトを抜く際に差し込む方向やワッシャ−の位置、種類をメモしておこう。ボルトが引き抜かれるとストラットはナックルからはずれアッパーマウント一点でぶら下がった状態になる。後はアッパーシートをボディーから外してやればストラットは外れる。

 作業をトランクルームの中に移す。まずトランクルームの左右奥のフエルト地の内装を捲る。捲ると左画像の様なスチールの円盤に黒いラバーが付いた皿が現れる。驚いた事にアッパーシートを固定させるナット類が見当たらない。なんと156のリア−アッパーシートは、シート自体から出たボルトを使ってボディーに固定する方式ではなくストラットのセンターシャフトを使ってボディーに固定する方式なのである。最近の国産車もこの方式が結構あるらしい。合理的といえば合理的だし、たぶん組立工数の事を考えるとこの方式の方がメリットは高いのだろう。しかしながらなんとなく頼りない気がするのは自分だけだろうか。

 左画像が156リアーストラットの構成である。赤いラインのところにボディーがくる。固定方式は簡単。ボディーの下側からストラットを突き刺し、反対側(ボディーの上部)から抜けないようにアッパーサポートで固定する。アッパーシートとアッパーサポートでボディーを挟む感じで固定させるのである。もちろんセンターシャフトを使って締め付ける。よってアッパーシートから突き出たボルトは見当たらない。
 ストラット自体は何の変哲も無くアンダーシートとアッパーシートでスプリングを挟むように構成されている。もちろん挟むといってもスプリングの圧はまったく無い。したがってダンパー交換の際はスプリングコンプレッサーを使う必要も無い。



 さて構造がわかったところで作業開始。何も考えずにナットを緩めようとすると予想通りセンターシャフトが共回りを起こしてしまう。もちろんクリアランスが少ないのでインパクトレンチは使えない。さて困った事になったと腕組みしたが、よく見るとここにもスタビライザーコネクティングロッドのシャフト同様先端に六角の穴が空いている。ここに6ミリのヘキサゴンを差込み共回りを防げば良いのである。ここでまたまた壁にぶち当たる。左上画像をご覧いただきたい。アッパーシートの形状は中心が窪んでいて、窪みにナットが潜った形で締め付けられている。強いトルクで締め付けられているのでソケットかメガネレンチが必要だ。もちろんソケットは共回り防止のヘキサゴンが挿せなくなるので使えない。となるとメガネかモンキーということになる訳だが、窪んだところに掛けるためストレートのモンキーやメガネは使えない。オフセットされたメガネレンチが必要なのである。さらにオフセットも窪みが鋭角な為最低でも75度以上を必要とする。自分が所有している45度のメガネレンチは残念ながら使えなかった。近所のホームセンターを数件あたったが75度以上は見当たらない。本当に困った。考えた末、左画像のラチェットを使うことにした。リバーシブルで22ミリと24ミリが使え中心が貫通しているのある。貫通している為6ミリヘキサゴンをシャフトの頭に差し込めるわけだ。これは便利だ。もちろんラチェットなので作業効率もよい。一時はどうなるかと思ったがこれで何とかセンターナットは外せた。余談だがその後Betaのオフセット75度のメガネを購入したのはいうまでも無い。こうして道具はどんどん増えていく・・・(笑)。

 左画像はアッパーサポートが外れたところ。黒いラバーがアッパーシートの上部である。アッパーサポートが外れるとストラット自体はボディーから抜け落ちるだろうと想像していたが、ご覧のように突き刺さった状態である。黄色矢印Aの鍔の部分がボディーに引っかかり抜けないのである。大きく張り出した鍔では無いので少し引けば外れそうであるが、このままの状態でストラットを分解する。アッパーサポート同様センターシャフトに22ミリのナットが使われている。緩める作業は先程と同様22ミリのラチェットと6ミリのヘキサゴンを使って行う。もちろんこんな作業はスプリングに圧がかかっていないから出来るのであり、通常はスプリングコンプレッサーでスプリングを縮めた状態でないとアッパーシートは外せない。びっくり玉手箱現象になってしまう(笑)。

 アッパーシートのナットが外れるとアッパーシートをボディーに残したままダンパーはスプリングと一緒に外れる。左画像がその状態である。ボディーにアッパーシートとインシュレーターが残ったままになっていることがお分かりになるだろうか。インシュレータ−は引っ張れば外れるので切れが無いか確認しよう。スプリングは泥を落とし洗ってやる。時間に余裕があったらポリカーボネート系の塗料でカラーリングしてやれば面白いかも・・・(脱線)。
 これで純正のダンパーを外す作業は終了。次にビルシュタインのダンパーをセッティングする。

 新旧のダンパーを比較したところ。ビルシュタインはガス式短筒構造(別名倒立タイプ)のため明らかに太さが違う(詳細はココ)。純正がピストンロッドの先端をボディーに取り付ける方式に対しビルシュタインはダンパー外筒の底部をボディーに取り付けているからである。もちろん純正にはロッド先端にバンプラバーを装着するがビルシュタインの場合は必要ない。筒の中に有るからである。
 路面からの突き上げや横Gをまともにダンパーに受けるストラットタイプのショックにはこの太い筒は何とも頼もしい。折角のチャンスなので両ダンパーの延び縮の強さを比較した。もちろんちゃんと測定したわけではなく両手でダンパーを抑えたり引っ張ったりしただけであるが・・・(笑)。ビルシュタインは伸び縮ともほとんど同じ力が必要であるのに対し、純正の縮方向は驚くほど軽い。つまりペコペコなのである。逆に伸び方向には多少の力が必要だがビルシュタインほどではない。伸び縮に差を付ける味付けはアルファ独特の味付けなのだろうか。それともへたり?(笑) 

 組み付け作業。ダンパーにスプリングをセットしセンターシャフトをアッパーサポートに差し込んでやる。その際スプリングの向きに注意する。スプリングの切れている部分がダンパーロアー(お皿)やアッパーインシュレーターの形状と合う様に調整する。多分アッパーシートはナットを緩める際に幾分回転しているので要注意。スプリングの位置が決まればアッパーシートから突き出たセンターシャフトに22mmのナットを嵌めて締めこむ。もちろん共回りを防ぐために5mmのヘキサゴンを使うのはいうまでもない。完全に閉め込んだらアッパーサポートを取り付けストラット上部を完全に固定する。
 上部が固定されたらナックルとストラットを結合する。ナックルは自らの体重で垂れ下がっているので持ち上げなければならない。両手で持ち上げ(結構力がいります)ながらストラットブラケットとの位置あわせはなかなか大変なので、左画像の様にジャッキを使う。これも隠れ技ね!。ある程度持ち上げて位置があったら2ヶ所の穴にボルトを差込み締め付ける。その際はボルトの向き、ワッシャ−の位置を間違えないよう気をつけよう。

 ナックル部分の取り付けが完了したらスタビライザーコネクティングロッドの取り付け作業。取り外し同様シャフトが共回りするので5ミリのヘキサゴンをあてがい締め付ける。 
 最後にブレーキホースやセンサーコード類をストラットに付けてやれば作業は完成である。
 左画像が完成図。黄色と青色が眩しい〜!。
 朝の10時に作業を開始し、終了したのが夕方の4時である。途中工具を探す為ホームセンターを梯子した時間が2時間(昼食時間を含む)程かかっているが延々4時間も費やした事になる。実は当初の計画では1日でリア−、フロント両方を交換する予定であった。相当な計画未達である。敗因は道具の購入に見られる準備不足だろうか。次回は必ず2時間で終了させる!。といっても当分交換作業は発生しそうにないが・・・。
 フロントの交換は1週間後の21日(土)に行うこととする。バトルガ13でレポートする。